【完結】内緒事のある友人との離れ方

本編

五月の憂い(2)

”残業？”

三日前で止まってたトーク画面に今日が加わる。本当に残業中ならスマホを見てる暇もないよなとそのまま机の上に置いて先に食べてしまおうとリビングへ戻る。テレビをつけて部屋に自分以外の声を鳴らせて頭の中で明日の授業の段取りを考えた。

今日確認したら算数が隣のクラスよりも少し遅れてた。内容見直して追いつかないと。そうだ、昼休みに一緒にドッジボールする約束しちまったから、いつも昼にしてる事を早く行って朝しないと。明日は何時に着けば間に合う？

寝ても覚めても学校、授業、生徒たち。自分のことは二の次で、スマホさえまともに触れない日々が続いていた。でも、毎日が楽しい。充実してる、その言葉が今の俺には相応しい。


「ん？」

その時、玄関からガチャッと音がした。鍵は閉まってる。それからまたガチャガチャと音を立てながら鍵が解錠された。

「おかえりー」

なんだ、帰ってくるなら待てばよかった。箸の手を止めて、バタバタと足音を立てながら中に入ってきた神崎を見つめる。

「おかえり」
「……ただいま」

肩で息をして呆然としたような目でコッチを見てくる。何かを訴えかけてくる目に、ん？と首を傾げれば神崎が一歩俺に近づいた。