【完結】敵対騎士の懐かせ方

琉海

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平凡なゆりかご(1)

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瞬時、感じた殺気に目を開けてその場から飛びすさる。

今まで横になっていたベッドに視線を移せば、鋭利な刃物が突き立てられていた。チッと舌打ちが聞こえてくる。声の持ち主は殺気の籠った視線でディオを睨みつけていた。

これで暗殺が何度失敗に終わったか、もう両手の指だけじゃ数えられない。そしてディオはいつものように嘲笑うのだ。

「惜しかったな?」
「クソッ」

あの日、部下全員に裏切られ重傷を負い気絶したディオはカイルの手当てのかいあって一命を取り留めた。目を覚ました時に見た心配そうに揺れる銀色を一生忘れる事はないだろう。

それから二週間が過ぎようとしていた。

裏切者たちは全員捕まえられたが、その行動は独断の犯行として首謀者の特定はされぬまま幕を引いた。

それもまたディオにとっては想定内だった。いつもと変わらない日常が帰ってくる。相も変わらずカイルはディオの命を狙い、ディオはそんなカイルを返り討ちにする。人払いをされた屋敷には王族の人間とは思えないほどの静寂が広がっていた。

「で、何か用でもあんのか?」
「……夕食の準備、出来た」

二人しかいない屋敷ではカイルが召使いのような真似事もさせられている。慌てふためく姿を見たいという期待もあったが案外なんでもそつなく熟す銀色の姿を見るのは、それはそれで気分が良かった。

時には何の用事もなく襲い掛かってくる事もあるが、最近は日々を過ごす一コマとして暗殺が溶け込む事も多かった。それが何とも言えない心地にさせられる。今日もまた平凡でゆりかごのような時間が流れていた。

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