【完結】我が侭公爵は自分を知る事にした。

思い、想い(2)

紫苑が母と名前も知らない母の家臣たちと言い争う声を他人事のように聞く。昔は何も感じなかったのに愁玲に囁かれてた言葉を耳にしたって何も感じない。むしろ、その節々に違和感を感じた。

一体、この中で本当に愁玲の事を思ってる奴はどれだけいる？

数ヶ月前は何も感じなかった母の言葉を素直に受け入れられないのは何故だ？


『くぐつ』

ヴァルガに言われた言葉が頭をよぎる。あの時は意味が分からなかったが、今は知ってる。

他人の思いのままに使われる者。操り人形。


愁玲にもちゃんと考える頭がある。考えて行動する事が許される。

そう教えてくれたのはヴァルガだった。


思えば愁玲の事をきちんと考えてくれたのはヴァルガだけだった。分からない事はきちんと教えてくれて、愁玲がしたいと望んだ事は全てさせてくれた。

でも、ヴァルガのそれは気まぐれだ。