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思い、想い(1)

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「愁玲…?」

掛けられた声にゆっくりと目を開ける。嫌いで、嫌いで仕方ない数秒前に助けを求めた兄がそこにいた。

「紫苑?」
「愁玲!」

名前を呼べば目の前までかけ寄ってくる。書類に目を通す途中だったみたいだ。後ろでは何枚もの紙が宙を舞ってるが今はどうでもいいらしい。

「あぁ、本物だ…!どうした、何か嫌なことでもあったのか!?」
「な、んでアンタがココに?」
「此処は俺の執務室。俺が移動したんじゃない。愁玲が移動してきたんだ」
「は?」
「俺が小さい頃、愁玲にかけた魔法が発動した」
「はぁ!?どんな魔法掛けたんだよ!どうせ俺の事を消すような魔法なんだろッ!?」
「違う!俺はただ、愁玲が俺に助けを求めた時に俺の元へ移動してくる魔法を掛けただけだ!」
「はあ?」

意味がわからなかった。紫苑の言ってる言葉が理解できなかった。

「嫌ってる俺に助けを求めるなんて、何があったんだ?」

そう言って伸ばした紫苑の指先は愁玲の涙の跡を拭った。

「意味、分かんない」
「ずっと話をしたいと思ってた。でも近づくと逃げてしまうから」
「逃げてない!」
「うん、でも俺は愁玲の事を嫌ってた事なんて一度もないよ」
「嘘だ!」

「嘘じゃない、ずっと愁玲の事が心配だったんだ」

その時、ドアが開く音がした。音に誘われるようにそっちを向く。愁玲を庇うように紫苑が前に立つ。後ろから覗き込めば母と母の周りにいつもいる家臣たちが其処にいた。
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