【完結】我が侭公爵は自分を知る事にした。

知りたくなかった現実(12)

真っ赤な宝石。ヴァルガの瞳に似てる気がする赤。

今だけは側に置いておきたかった。

驚いたように目を開くヴァルガに居心地が悪くなって、そのまま寝返りをうって逆方向を見てまた目を閉じる。

「寝る。ご飯は食べるから、昼起こしてくれ」
「……わかった」

愁玲の髪を二回撫でたヴァルガはそのまま部屋を後にした。

喉に何か詰まってる感覚がする。また昨日みたいに胸が痛くなってきた。

ゆっくりと息を吸って、吐き出す。


大丈夫、大丈夫。

「だいじょうぶ」

一人だけの部屋で小さく呟く。


誰も愁玲を害する事はできない。
今までも全てをそうやって受け流してきた。これからだって変わらない。

嫌な事は忘れる。嫌な事は考えない。


またネックレスを手のひらで握りこむ。


大丈夫。

無機物なら愁玲を裏切る事は絶対にない。