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始まりの終わり(6)

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様々な思惑をもってヴァルガに近づきたいと思ってた者たちの落胆の声が少しずつ膨れ上がる。それと同じだけ、この場で血を見なかった事への安堵の声も。

状況を一番理解できていないのは愁玲だった。目を白黒させていれば、ヴァルガが側まで寄ってくる。頭一つ分大きなヴァルガに愁玲の視線は自然と上を向いた。

真っ赤な瞳と目が合う。その目からはもう、怒りは感じなかった。

伸ばされた手が愁玲の左手を掴む。

「いっ、!」

そのまま持ち上げられた指先はヴァルガの口元へと伸び、薬指の付け根に牙を立てられた。

ピリッと刺す痛みが走ったかと思えば、獣人からは破れんばかりの歓声がわき起こる。おめでとうございます!そう、そこかしこから叫ばれた。

いや、何もめでたくない…!

喉の奥まで出かかった言葉は結局、音になる事はなかった。反射的に抜こうとした手はヴァルガに囚われたままビクともしない。

そのままヴァルガの腕に体を持ち上げられたかと思えば、跳躍一つで元いた壇上まで戻ってしまう。

「降ろせ!」
「サデュア、部屋の準備を」

暴れる愁玲をなんなく抱え、尻尾は楽しげに左右に揺れている。サデュアと呼ばれた獣人は主に対して一礼をして直ぐに姿を消してしまった。後は好きにしろと指示を出すヴァルガもそのまま捌けていく。


この日から愁玲のミリューク王国での暮らしが始まった。

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