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前編
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真添誠(まぞえ まこと)の性的指向は一般のものとは違っていた。そもそも目覚めからして一般的ではなかった。
誠は肉体や精神への加虐に性的興奮を見出だす人間――マゾヒストだ。恐らく天性的なものではなく、多感な高校生活が起因している。
誠は高校入学後、一年生の終わりまでクラスメイトの男子達から虐めを受けていた。
きっかけは何だったのか。社会人二年目の誠の記憶は一部を除いておぼろ気だ。当時の誠はあまり明るい性格とは言えなかったので、気に障る部分があったのかもしれない。
初めは軽く小突かれたり足を引っ掛けられたりしていたのが、いつの間にかプロレスごっこに変わった。誠はサンドバッグになり、服で隠れる箇所はアザだらけになっていた。
虐めの首謀者というか先導役は担任含め学校中の教師から信頼の厚い生徒で、虐めについて相談したとしても担任に信じてもらえるとは思えなかった。
これといって優秀な点を持たない誠の青黒い腹を見せるより、品行方正と信じる自慢の生徒の否定の言葉の方が教師の信頼を勝ち取るのは目に見えていた。
解決の糸口を見出だせない問題を両親に相談することも出来ず、されるがままに無気力に流され、表面上は何の問題のない学級として纏められていた。
その日は首謀者だけだった。高校生男子の平均身長の誠より頭一つ分大きな青年に腕を引かれれば抗うのは難しい。
放課後の空き教室に連れ込まれ、ワイシャツの首元を締めていたネクタイをほどかれる。何をするんだろうと眺めているとそれは両手首の拘束に使われた。
ワイシャツのボタンを外される。露になった陽に焼けない肌はそこかしこが痛々しく黒ずんでいる。それを見て彼は目を細めた。
服を剥いでいく手がベルトにのびても誠は特に反応しなかった。性的知識がなかったわけではないが、同性でヒエラルキー最下層の自分を相手に、頂点に輝く彼がそうするなんて微塵も思っていなかった。
目論見は外れ、二人だけの室内はねばついた水音と僅かに漏れる喘ぎで支配されていた。
初めからそうするつもりだったのか、小さなチューブタイプの潤滑剤で尻穴をほぐされた誠の口からは切れ切れの喘ぎ声が溢れていた。
初めからそうだったわけではない。痛みと不快感しかなかった筈なのに、彼の綺麗な指が胎の奥を突いて探るうちに、不快は悦楽に変わっていった。
指を拒み出ていけとばかりに締め付けていた筈の穴はもっと太いものを求めてきゅうきゅうと吸い付いていく。
急速な肉体の変化に戸惑う誠を置き去りにして、彼もベルトを外して前を寛げていく。
誠と違って大きく赤黒い隆起した陰茎だった。まさか、と頭に過ったのは――期待だった。確かに期待だった。既に誠の変化は始まっていた。
息の荒い彼がズボンの尻ポケットから取り出したそれが答えだった。保健の授業以来に見るそれ。本来なら誠も使う側であり、決して使われることはなかった筈の避妊具。ゴム。コンドーム。
「あ」
薄い乳白色に包まれたものが穴をくすぐる。表面に付着したゼリーが冷たい。
「あ」
穴に圧がかかる。入れられるのだと頭が悟る。
「あ。あ。あああああああぁぁあああああ」
指よりも太くて長いものに蹂躙される。感じたのは激痛だけではなかった。
そこから先は泥沼にはまるように墜ちていくだけだ。初めは彼一人だった凌辱は回を重ねるごとに参加者が増えていく――単純な暴行と同じように。
彼らは高校生という年代特有の中途半端な自由と束縛からくるストレスの発散を求めていたのかもしれない。歪んだ集団意識は反抗の欠片も見せない誠になら何をしてもいいのだと思い込んでいた節もある。何より絶対的な存在に見えた彼の始めたことなのだから間違いはないのだと、許されるのだと、そう――歪みきった認知をしていたのかもしれない。
される側からしたらたまったものではないが。
殴る蹴る等の暴行は極端に減ったかわりに、誠は道具になっていた。クラスの男子が共有する性処理玩具。生きたオナホ。動くラブドール。漫画のような設定とシチュエーションは誠の現実で、それは一年生の終わりまで続いた。
彼らの目が覚めたとか飽きられたとか、犯行が明るみになっただとか、そんなことはない。誠の父親が転勤することになり、家族共々住居を変えただけだ。
そうして誠は異常な習慣から抜け出し、転校先では友達も出来て普通の高校生らしい暮らしを送った。
だが集団暴行の記憶は誠の精神にも肉体にも大きな影響を与え、残した。大人になった今もなお。
平穏な暮らしの訪れとは、つまり刺激から遠ざかった日々だった。
引っ越し当初は新しい生活に慣れることに精一杯で気疲れも多く、瞬く間に時間が過ぎていく。過去を思い出す暇がなく、慣れる頃には新しい友人と屈託なく笑っていた。
気付き始めたのは新しい生活ルーチンが出来上がり始めた頃の夜。もともと性に関して淡白だった誠だが、生理現象として溜まるものは溜まる。忙しさで誤魔化していた欲求を解消しようとして――出来なかった。
教科書通りの義務的な自慰で達することが出来なかった。擦りあげる刺激は確かに感じるけれど、昇り上げる程には至らなかった。
電気の消された部屋の中、布団の中に隠れるようにして行っていた誠はパニックに陥りそうな自分を冷静に宥め、深く息を吐く。勃ち上がっているのに昇華されることはない自身を撫で、目を閉じる。瞬時に思い浮かんだのは狂乱の日々だ。
いじめが性的なものに変わってから誠は毎日のように昇りつめていた。
誰かしらが用意したローションやジェルで孔をほぐされ、ゴム越しに種を付けられる。口と両手も空くことなく使われる。口で吸い付けば喉奥まで突かれてそのまま精を吐かれる。飲み込むよう命じられれば逆らえない。喉を鳴らして飲み干し、苦さに辟易し――ていた筈なのに、いつしか誠は再び吸い付くようになった。おかわりをねだるように。
両手でしごけば身体中、至る所にかけられる。行為前に制服を剥がされるのが常だった誠は本当に全身白濁まみれになる日もあった。生暖かくて臭くて気持ちが悪い筈なのに、誠は喜んでそれらを浴びていた。特に顔にかけられるのが大好きだった。何故って。
「……いっぱい飲めるから……」
彼の忠告から後孔に入り込むものはゴムに包まれていた。保健の授業でもセーフセックスの重要性は教科書に記されている。
胎の奥を突かれて快感を得ても、あの熱くて美味しいものはゴムの中へ消えていく。一度くらいどんな感覚なのか味わってみたかった。
「………………ははっ……」
視界を閉ざし自分の心と向き合った誠は自分が何を求めているのか悟った。
天性のものか後天性のものか、そこは重要ではなかった。
目覚めた以上、それはもう――覆しようがないのだから。目をそらして拒絶するより、受け入れて楽しんだ方がいい。
制限の多い高校生の間はネットで知識を得て自分で慰めた。高校を卒業したら、と先のことを考えて羨望し、ままならない現在に憂いる――それすら、誠にとっては興奮剤だった。
高校を卒業し、隣県の大学進学を機に実家から出てたがの外れた誠は思い描いた全てを実行した。学業だけは何よりも優先し、生活費の為にアルバイトに励み、残った時間は男を探す。自分を抱いてくれる男。快楽に従順な男。面倒のない男。
溜め込んだ欲求のままに男を漁り悦楽に溺れた誠は――とっても落ち着いた。適度に遊ぶことを覚えるとそれを張りにして過ごし、大学を卒業して就職した誠は社会人生活二年目にして一つの転機を迎えていた。
「……はぁ」
手にしたスマートフォンを見て、誠は深いため息をついた。画面はメールアプリの受信ボックスを表示しており、そこには同一人物からの大量のメールが届いている。誠の指はそれらを内容も見ずにゴミ箱へ入れる。
差出人は上司、正確にはつい先日辞めた会社の元上司だ。新卒で入った誠を待っていたのは度の越えたパワハラだった。
テレビやネットで見たような新人いびりをまさか自分がされるとは思っていなかった。肉体的には打たれ強い誠だが精神的にはまだ脆い部分があったようで、二年もっただけ頑張った方だと自分で思う。
高校時代のいじめは肉体への暴力ばかりで、誠の人格を否定する罵倒を受けたり自分で自分を貶めるような発言を強制されることはなかった。
暴行を擁護するつもりはないが、精神的暴力の方が誠には辛かった。未成熟な高校生達といい年をした社会人という違いが許容の差を生んでいるのかもしれない。前者からの出来事を誠の中では既に過去のものとして処理しているのもあるのだろうか。
通知を切っている為、何の音も立てずに新たなメールが受信される。どうやって誠の個人メールアドレスを手に入れたのかわからないが、元上司からの罵倒メールは一日に何度か送られてくる。
何かあった時の証拠として受信していたが、そろそろアドレスの変更を考えるべきか。
「はぁ、寝よ寝よ。明日から仕事だし……」
退職を決めてから始めた転職活動の結果、明後日から派遣社員として働くことが決まっている。いつまでも足を止めてはいられない。
迎えた翌朝、派遣会社の担当者と共に出社し、派遣先の社員から業務や社内について説明を受けた誠はとある人物を見つけた。
数年経っても当時の面影を残す端正な顔立ち。忘れられるわけのない男。
視線に気付いたらしい彼がこちらを見て目が合う――も、何度か目を瞬いた彼は、ぺこりと頭を下げた。誠も反射的に会釈を返す。
「さっきも話しましたけど真添さんの部署は各部署のサポート業務全般になります。彼は営業の沢渡くんです」
少し離れた場所にいた彼だが、自分の話をしていると察したのか近付いてくる。にこやかな笑みを浮かべるとただの好青年だ。
「沢渡くん、こちら新しくサポート室に入る真添さん。色々教えてあげてね」
「はい。こちらこそよろしくお願いしますね、真添さん」
常だった眉間の皺も人を馬鹿にした笑みもない。爽やかな青年らしい顔を浮かべていても、彼は彼――高校生の誠を虐めていた沢渡俊一(さわたり しゅんいち)だった。
沢渡と誠に接点はなかった。
初めて彼を見たのは高校の入学式。壇上に立ち新入生代表として挨拶する彼はその日、全校生徒に認知された。
見目麗しい彼は人の注目を集め、似たような生徒とつるむ。これといって目立つもののない誠は同じクラスだが存在を認識されているか怪しいと思っていた。
それは間違いのようで正しかったのかもしれない。彼からしたら本当に、誠なんて人種からして違ったのかもしれない。
「真添さん、聞こえてます?」
「――はいっ?」
遠い記憶を呼び起こしていた誠に声がかかる。現実に戻った誠が顔を上げると怪訝そうな顔をした沢渡が傍らに立っていた。
新しい会社で働き始めて三日が経ったものの沢渡との間に特に問題もなく、他の社員と変わらない様子で接してくれる。
誠のことなんて忘れたか、覚えていても大人の対応をしているのか――どっちでも良かった。
「すみません、何でしたっけ」
「書類のコピーを頼みたいんですけど、手は空いてます?」
「はい、大丈夫です」
片手に持っていた書類の束を渡される。表紙に貼られた付箋に指示が書いてあるのでそれを見ていると、沢渡が再び口を開く。
「あの……少しお話がしたいので、今日の帰りにお時間もらえませんか」
「……はあ、話ですか。今じゃダメなんですか?」
社風が緩めの会社なので少しくらいの私語は目をつむられている。現に今も離れた席で男性社員達が何か話し合っており、時折笑い声が聞こえてくる。
惚けたことを言う誠に沢渡は頭を振った。
「プライベートなことなので」
「……わかりました。少しだけなら」
誠の答えに満足したのか沢渡は好青年らしい爽やかな笑顔で礼を言い、自分の席へ帰っていく。
「……脅迫でもされるのかな」
沢渡にとって誠は汚点でしかない。
終業後帰り支度をしていると沢渡が誠の席まで迎えに来た。先導する彼についていくと会社から少し離れた喫茶店に入る。チェーン店とは違う落ち着きのある雰囲気は居心地良さそうだ。
愛想の良いウェイトレスに注文を伝えると、沢渡は当たり障りのない問いかけをしてくる。仕事には慣れたか、会社の雰囲気はどうか。答えているとこの喫茶店オススメだというカフェラテがそれぞれの前に置かれ、ごゆっくり、と可愛らしい声がかかる。
ウェイトレスが離れてから、ようやく沢渡は本題を切り出した。
「僕のこと、覚えてるだろ」
直球に、どう打ち返すか迷った。
肯定か否定か。どちらにしろ誠のスタンスは変わらないので素直に頷く。それを認めた沢渡の目の開きが僅かに増える。
何を言われるか身構える誠に、沢渡は――深く、頭を下げた。
「申し訳なかった」
「やめてくれ、そんなのいいから」
店の奥まった席に案内されたとはいえ他の客もいる中で、沢渡のような男に頭を下げさせるのはいたたまれない。慌てて声をかける誠を沢渡が上目で見る。
「すまない。でも僕は本当に……君に酷いことばかりして……」
「ああうん、でもいいんだ。もう終わったことだし。俺、もう気にしてないから」
いじめを受けていた当時は本当に毎日悩みもしたが、過去のことだと割りきった今は沢渡への恨みはない。自分でも不思議なほどに。
どうにかその気持ちを伝えようと言葉にしてみるものの、沢渡には通じない。
「そんなわけにはいかない。君に償いたいんだ」
そう言って頑として譲らない目の前の男に、誠も段々苛立ちが募っていく。
(どうせ『俺の為』じゃないくせに。自分の中の罪悪感をごまかしたいだけだろ)
誠への謝意も本心だろうが、結局は誠に出会ったせいで思い出した若い頃の過ちの贖罪をして、自分の心の平穏を取り戻したいだけなのだ――そう、誠は思っている。
「僕に出来ることなら何でもするよ」
自分を見つめる真っ直ぐな眼差しに、誠の口が勝手に動く。
「なら俺の肉バイブになれよ」
常識的に考えて断られると思った。後にそう誠は語る。
突然そんなことを言われれば質の悪い冗談だと流すものだろう。誠のされたことを考えればこのくらいの冗談は許される筈だ。
受け流すか、怒るか、呆れ果てるか、笑われるか。誠の想定した答えは外れ、驚きから目を見開いた沢渡は口を引き締め、頷いた。
「何してるんだろ」
頭からシャワーの冷水を浴びながら呆然と吐き出された言葉は誠の全てを物語っている。
沢渡から過去の話を切り出され謝罪を受け贖罪を強要されてから勢いのまま、二人は繁華街の裏通りに点在するラブホテルに入った。
部屋の扉が閉まった途端に冷静さを取り戻した誠は浴室へ逃げ、文字通り冷水で頭を冷やしながらどうしようかと考える。
高校生の頃の沢渡は教師の前では常に笑顔の優等生だったが、誠の前では無表情だった。虐めのターゲットにされる前は普通に接して貰えた気もするが覚えていない。
顔色も変えず眉ひとつ動かさずに誠をいたぶった彼は別人のように改心し、誠の無茶振りに応えて償おうとしている。それくらい過去を反省しているのなら、本当にその気持ちだけで良かった。
当然のことながら彼をバイブにするつもりなんてない。彼の贖罪を振り切るために言っただけだ。だからそう正直に伝え、許しの言葉を延々と返し続ければ彼もわかってくれるのではないか。そうに違いない――とおめでたい頭で考えた誠はすぐさま行動に移した。
浴室を出て簡単に身繕いをし部屋へ向かい、冗談だと笑った。筈なのに。
「おっ♡ あっ♡ あっ♡ あぁん……きもちぃ、ちんぽきもちっ♡」
涎を垂らしてしまいそうな程緩みきったアへ顔を晒して男の体に跨がり、すっかり男慣れした孔に男を咥えて喜び腰を揺すっている。あけすけで下品な嬌声は大学時代から始まった癖だ。ただ声を上げるより頭の悪い解放感と興奮がある。
「うっ……くぅ……」
乗っかられて陰茎を使われている沢渡も多少は快感を得ているのか、明らかに痛みではない呻きを漏らしている。端正な顔を歪ませ、一心に誠を見上げる視線に気分が良くなる。
あの沢渡が自分なんかで気持ち良くなっている。高校時代は道具として沢渡の好きに使われていたのに、今は誠が彼の雄を好き勝手に使っている。認知のバグは虚ろな優越感と興奮を生んだ。
「あぁ……♡ さわたりぃ……イキたい? ぶっといちんぽから精子びゅーびゅー出したい? 俺の中にぶちまけたい?」
腰を止めて尋ねると沢渡は何度も頷いた。本来なら誠なんかに許しを請うような男ではないのに、罪悪感から無様な奴隷のように誠に従っている。
そう、罪悪感から。可哀想な男だった。
被害者はとっくに許しているのだから贖罪など求めずそれで心を軽くしてしまえばいいのに、何処で芽生えたか知らないが責任感や良心が許さないのだろう。
律動を再開すると大きな両手に腰を掴まれる。誠の動きに合わせて突き上げられ、快感に啼く。男の奉仕に悦んだ孔が締め付けて褒めてやれば熱いものが中に拡がっていく。射精したのだ。
同じように誠の陰茎も精を吐き出している。逞しい体の上に倒れ込み、分厚い胸板に頬をつく。
徐々に冷静を取り戻し始めた誠は『やってしまった』と悔い始めるが、時間は戻せない。
誠の体をきつく抱き締める肉布団が過去の過ちを正せないように。もし戻せるならきっと、彼はあんなことしなかっただろうに。
誠は肉体や精神への加虐に性的興奮を見出だす人間――マゾヒストだ。恐らく天性的なものではなく、多感な高校生活が起因している。
誠は高校入学後、一年生の終わりまでクラスメイトの男子達から虐めを受けていた。
きっかけは何だったのか。社会人二年目の誠の記憶は一部を除いておぼろ気だ。当時の誠はあまり明るい性格とは言えなかったので、気に障る部分があったのかもしれない。
初めは軽く小突かれたり足を引っ掛けられたりしていたのが、いつの間にかプロレスごっこに変わった。誠はサンドバッグになり、服で隠れる箇所はアザだらけになっていた。
虐めの首謀者というか先導役は担任含め学校中の教師から信頼の厚い生徒で、虐めについて相談したとしても担任に信じてもらえるとは思えなかった。
これといって優秀な点を持たない誠の青黒い腹を見せるより、品行方正と信じる自慢の生徒の否定の言葉の方が教師の信頼を勝ち取るのは目に見えていた。
解決の糸口を見出だせない問題を両親に相談することも出来ず、されるがままに無気力に流され、表面上は何の問題のない学級として纏められていた。
その日は首謀者だけだった。高校生男子の平均身長の誠より頭一つ分大きな青年に腕を引かれれば抗うのは難しい。
放課後の空き教室に連れ込まれ、ワイシャツの首元を締めていたネクタイをほどかれる。何をするんだろうと眺めているとそれは両手首の拘束に使われた。
ワイシャツのボタンを外される。露になった陽に焼けない肌はそこかしこが痛々しく黒ずんでいる。それを見て彼は目を細めた。
服を剥いでいく手がベルトにのびても誠は特に反応しなかった。性的知識がなかったわけではないが、同性でヒエラルキー最下層の自分を相手に、頂点に輝く彼がそうするなんて微塵も思っていなかった。
目論見は外れ、二人だけの室内はねばついた水音と僅かに漏れる喘ぎで支配されていた。
初めからそうするつもりだったのか、小さなチューブタイプの潤滑剤で尻穴をほぐされた誠の口からは切れ切れの喘ぎ声が溢れていた。
初めからそうだったわけではない。痛みと不快感しかなかった筈なのに、彼の綺麗な指が胎の奥を突いて探るうちに、不快は悦楽に変わっていった。
指を拒み出ていけとばかりに締め付けていた筈の穴はもっと太いものを求めてきゅうきゅうと吸い付いていく。
急速な肉体の変化に戸惑う誠を置き去りにして、彼もベルトを外して前を寛げていく。
誠と違って大きく赤黒い隆起した陰茎だった。まさか、と頭に過ったのは――期待だった。確かに期待だった。既に誠の変化は始まっていた。
息の荒い彼がズボンの尻ポケットから取り出したそれが答えだった。保健の授業以来に見るそれ。本来なら誠も使う側であり、決して使われることはなかった筈の避妊具。ゴム。コンドーム。
「あ」
薄い乳白色に包まれたものが穴をくすぐる。表面に付着したゼリーが冷たい。
「あ」
穴に圧がかかる。入れられるのだと頭が悟る。
「あ。あ。あああああああぁぁあああああ」
指よりも太くて長いものに蹂躙される。感じたのは激痛だけではなかった。
そこから先は泥沼にはまるように墜ちていくだけだ。初めは彼一人だった凌辱は回を重ねるごとに参加者が増えていく――単純な暴行と同じように。
彼らは高校生という年代特有の中途半端な自由と束縛からくるストレスの発散を求めていたのかもしれない。歪んだ集団意識は反抗の欠片も見せない誠になら何をしてもいいのだと思い込んでいた節もある。何より絶対的な存在に見えた彼の始めたことなのだから間違いはないのだと、許されるのだと、そう――歪みきった認知をしていたのかもしれない。
される側からしたらたまったものではないが。
殴る蹴る等の暴行は極端に減ったかわりに、誠は道具になっていた。クラスの男子が共有する性処理玩具。生きたオナホ。動くラブドール。漫画のような設定とシチュエーションは誠の現実で、それは一年生の終わりまで続いた。
彼らの目が覚めたとか飽きられたとか、犯行が明るみになっただとか、そんなことはない。誠の父親が転勤することになり、家族共々住居を変えただけだ。
そうして誠は異常な習慣から抜け出し、転校先では友達も出来て普通の高校生らしい暮らしを送った。
だが集団暴行の記憶は誠の精神にも肉体にも大きな影響を与え、残した。大人になった今もなお。
平穏な暮らしの訪れとは、つまり刺激から遠ざかった日々だった。
引っ越し当初は新しい生活に慣れることに精一杯で気疲れも多く、瞬く間に時間が過ぎていく。過去を思い出す暇がなく、慣れる頃には新しい友人と屈託なく笑っていた。
気付き始めたのは新しい生活ルーチンが出来上がり始めた頃の夜。もともと性に関して淡白だった誠だが、生理現象として溜まるものは溜まる。忙しさで誤魔化していた欲求を解消しようとして――出来なかった。
教科書通りの義務的な自慰で達することが出来なかった。擦りあげる刺激は確かに感じるけれど、昇り上げる程には至らなかった。
電気の消された部屋の中、布団の中に隠れるようにして行っていた誠はパニックに陥りそうな自分を冷静に宥め、深く息を吐く。勃ち上がっているのに昇華されることはない自身を撫で、目を閉じる。瞬時に思い浮かんだのは狂乱の日々だ。
いじめが性的なものに変わってから誠は毎日のように昇りつめていた。
誰かしらが用意したローションやジェルで孔をほぐされ、ゴム越しに種を付けられる。口と両手も空くことなく使われる。口で吸い付けば喉奥まで突かれてそのまま精を吐かれる。飲み込むよう命じられれば逆らえない。喉を鳴らして飲み干し、苦さに辟易し――ていた筈なのに、いつしか誠は再び吸い付くようになった。おかわりをねだるように。
両手でしごけば身体中、至る所にかけられる。行為前に制服を剥がされるのが常だった誠は本当に全身白濁まみれになる日もあった。生暖かくて臭くて気持ちが悪い筈なのに、誠は喜んでそれらを浴びていた。特に顔にかけられるのが大好きだった。何故って。
「……いっぱい飲めるから……」
彼の忠告から後孔に入り込むものはゴムに包まれていた。保健の授業でもセーフセックスの重要性は教科書に記されている。
胎の奥を突かれて快感を得ても、あの熱くて美味しいものはゴムの中へ消えていく。一度くらいどんな感覚なのか味わってみたかった。
「………………ははっ……」
視界を閉ざし自分の心と向き合った誠は自分が何を求めているのか悟った。
天性のものか後天性のものか、そこは重要ではなかった。
目覚めた以上、それはもう――覆しようがないのだから。目をそらして拒絶するより、受け入れて楽しんだ方がいい。
制限の多い高校生の間はネットで知識を得て自分で慰めた。高校を卒業したら、と先のことを考えて羨望し、ままならない現在に憂いる――それすら、誠にとっては興奮剤だった。
高校を卒業し、隣県の大学進学を機に実家から出てたがの外れた誠は思い描いた全てを実行した。学業だけは何よりも優先し、生活費の為にアルバイトに励み、残った時間は男を探す。自分を抱いてくれる男。快楽に従順な男。面倒のない男。
溜め込んだ欲求のままに男を漁り悦楽に溺れた誠は――とっても落ち着いた。適度に遊ぶことを覚えるとそれを張りにして過ごし、大学を卒業して就職した誠は社会人生活二年目にして一つの転機を迎えていた。
「……はぁ」
手にしたスマートフォンを見て、誠は深いため息をついた。画面はメールアプリの受信ボックスを表示しており、そこには同一人物からの大量のメールが届いている。誠の指はそれらを内容も見ずにゴミ箱へ入れる。
差出人は上司、正確にはつい先日辞めた会社の元上司だ。新卒で入った誠を待っていたのは度の越えたパワハラだった。
テレビやネットで見たような新人いびりをまさか自分がされるとは思っていなかった。肉体的には打たれ強い誠だが精神的にはまだ脆い部分があったようで、二年もっただけ頑張った方だと自分で思う。
高校時代のいじめは肉体への暴力ばかりで、誠の人格を否定する罵倒を受けたり自分で自分を貶めるような発言を強制されることはなかった。
暴行を擁護するつもりはないが、精神的暴力の方が誠には辛かった。未成熟な高校生達といい年をした社会人という違いが許容の差を生んでいるのかもしれない。前者からの出来事を誠の中では既に過去のものとして処理しているのもあるのだろうか。
通知を切っている為、何の音も立てずに新たなメールが受信される。どうやって誠の個人メールアドレスを手に入れたのかわからないが、元上司からの罵倒メールは一日に何度か送られてくる。
何かあった時の証拠として受信していたが、そろそろアドレスの変更を考えるべきか。
「はぁ、寝よ寝よ。明日から仕事だし……」
退職を決めてから始めた転職活動の結果、明後日から派遣社員として働くことが決まっている。いつまでも足を止めてはいられない。
迎えた翌朝、派遣会社の担当者と共に出社し、派遣先の社員から業務や社内について説明を受けた誠はとある人物を見つけた。
数年経っても当時の面影を残す端正な顔立ち。忘れられるわけのない男。
視線に気付いたらしい彼がこちらを見て目が合う――も、何度か目を瞬いた彼は、ぺこりと頭を下げた。誠も反射的に会釈を返す。
「さっきも話しましたけど真添さんの部署は各部署のサポート業務全般になります。彼は営業の沢渡くんです」
少し離れた場所にいた彼だが、自分の話をしていると察したのか近付いてくる。にこやかな笑みを浮かべるとただの好青年だ。
「沢渡くん、こちら新しくサポート室に入る真添さん。色々教えてあげてね」
「はい。こちらこそよろしくお願いしますね、真添さん」
常だった眉間の皺も人を馬鹿にした笑みもない。爽やかな青年らしい顔を浮かべていても、彼は彼――高校生の誠を虐めていた沢渡俊一(さわたり しゅんいち)だった。
沢渡と誠に接点はなかった。
初めて彼を見たのは高校の入学式。壇上に立ち新入生代表として挨拶する彼はその日、全校生徒に認知された。
見目麗しい彼は人の注目を集め、似たような生徒とつるむ。これといって目立つもののない誠は同じクラスだが存在を認識されているか怪しいと思っていた。
それは間違いのようで正しかったのかもしれない。彼からしたら本当に、誠なんて人種からして違ったのかもしれない。
「真添さん、聞こえてます?」
「――はいっ?」
遠い記憶を呼び起こしていた誠に声がかかる。現実に戻った誠が顔を上げると怪訝そうな顔をした沢渡が傍らに立っていた。
新しい会社で働き始めて三日が経ったものの沢渡との間に特に問題もなく、他の社員と変わらない様子で接してくれる。
誠のことなんて忘れたか、覚えていても大人の対応をしているのか――どっちでも良かった。
「すみません、何でしたっけ」
「書類のコピーを頼みたいんですけど、手は空いてます?」
「はい、大丈夫です」
片手に持っていた書類の束を渡される。表紙に貼られた付箋に指示が書いてあるのでそれを見ていると、沢渡が再び口を開く。
「あの……少しお話がしたいので、今日の帰りにお時間もらえませんか」
「……はあ、話ですか。今じゃダメなんですか?」
社風が緩めの会社なので少しくらいの私語は目をつむられている。現に今も離れた席で男性社員達が何か話し合っており、時折笑い声が聞こえてくる。
惚けたことを言う誠に沢渡は頭を振った。
「プライベートなことなので」
「……わかりました。少しだけなら」
誠の答えに満足したのか沢渡は好青年らしい爽やかな笑顔で礼を言い、自分の席へ帰っていく。
「……脅迫でもされるのかな」
沢渡にとって誠は汚点でしかない。
終業後帰り支度をしていると沢渡が誠の席まで迎えに来た。先導する彼についていくと会社から少し離れた喫茶店に入る。チェーン店とは違う落ち着きのある雰囲気は居心地良さそうだ。
愛想の良いウェイトレスに注文を伝えると、沢渡は当たり障りのない問いかけをしてくる。仕事には慣れたか、会社の雰囲気はどうか。答えているとこの喫茶店オススメだというカフェラテがそれぞれの前に置かれ、ごゆっくり、と可愛らしい声がかかる。
ウェイトレスが離れてから、ようやく沢渡は本題を切り出した。
「僕のこと、覚えてるだろ」
直球に、どう打ち返すか迷った。
肯定か否定か。どちらにしろ誠のスタンスは変わらないので素直に頷く。それを認めた沢渡の目の開きが僅かに増える。
何を言われるか身構える誠に、沢渡は――深く、頭を下げた。
「申し訳なかった」
「やめてくれ、そんなのいいから」
店の奥まった席に案内されたとはいえ他の客もいる中で、沢渡のような男に頭を下げさせるのはいたたまれない。慌てて声をかける誠を沢渡が上目で見る。
「すまない。でも僕は本当に……君に酷いことばかりして……」
「ああうん、でもいいんだ。もう終わったことだし。俺、もう気にしてないから」
いじめを受けていた当時は本当に毎日悩みもしたが、過去のことだと割りきった今は沢渡への恨みはない。自分でも不思議なほどに。
どうにかその気持ちを伝えようと言葉にしてみるものの、沢渡には通じない。
「そんなわけにはいかない。君に償いたいんだ」
そう言って頑として譲らない目の前の男に、誠も段々苛立ちが募っていく。
(どうせ『俺の為』じゃないくせに。自分の中の罪悪感をごまかしたいだけだろ)
誠への謝意も本心だろうが、結局は誠に出会ったせいで思い出した若い頃の過ちの贖罪をして、自分の心の平穏を取り戻したいだけなのだ――そう、誠は思っている。
「僕に出来ることなら何でもするよ」
自分を見つめる真っ直ぐな眼差しに、誠の口が勝手に動く。
「なら俺の肉バイブになれよ」
常識的に考えて断られると思った。後にそう誠は語る。
突然そんなことを言われれば質の悪い冗談だと流すものだろう。誠のされたことを考えればこのくらいの冗談は許される筈だ。
受け流すか、怒るか、呆れ果てるか、笑われるか。誠の想定した答えは外れ、驚きから目を見開いた沢渡は口を引き締め、頷いた。
「何してるんだろ」
頭からシャワーの冷水を浴びながら呆然と吐き出された言葉は誠の全てを物語っている。
沢渡から過去の話を切り出され謝罪を受け贖罪を強要されてから勢いのまま、二人は繁華街の裏通りに点在するラブホテルに入った。
部屋の扉が閉まった途端に冷静さを取り戻した誠は浴室へ逃げ、文字通り冷水で頭を冷やしながらどうしようかと考える。
高校生の頃の沢渡は教師の前では常に笑顔の優等生だったが、誠の前では無表情だった。虐めのターゲットにされる前は普通に接して貰えた気もするが覚えていない。
顔色も変えず眉ひとつ動かさずに誠をいたぶった彼は別人のように改心し、誠の無茶振りに応えて償おうとしている。それくらい過去を反省しているのなら、本当にその気持ちだけで良かった。
当然のことながら彼をバイブにするつもりなんてない。彼の贖罪を振り切るために言っただけだ。だからそう正直に伝え、許しの言葉を延々と返し続ければ彼もわかってくれるのではないか。そうに違いない――とおめでたい頭で考えた誠はすぐさま行動に移した。
浴室を出て簡単に身繕いをし部屋へ向かい、冗談だと笑った。筈なのに。
「おっ♡ あっ♡ あっ♡ あぁん……きもちぃ、ちんぽきもちっ♡」
涎を垂らしてしまいそうな程緩みきったアへ顔を晒して男の体に跨がり、すっかり男慣れした孔に男を咥えて喜び腰を揺すっている。あけすけで下品な嬌声は大学時代から始まった癖だ。ただ声を上げるより頭の悪い解放感と興奮がある。
「うっ……くぅ……」
乗っかられて陰茎を使われている沢渡も多少は快感を得ているのか、明らかに痛みではない呻きを漏らしている。端正な顔を歪ませ、一心に誠を見上げる視線に気分が良くなる。
あの沢渡が自分なんかで気持ち良くなっている。高校時代は道具として沢渡の好きに使われていたのに、今は誠が彼の雄を好き勝手に使っている。認知のバグは虚ろな優越感と興奮を生んだ。
「あぁ……♡ さわたりぃ……イキたい? ぶっといちんぽから精子びゅーびゅー出したい? 俺の中にぶちまけたい?」
腰を止めて尋ねると沢渡は何度も頷いた。本来なら誠なんかに許しを請うような男ではないのに、罪悪感から無様な奴隷のように誠に従っている。
そう、罪悪感から。可哀想な男だった。
被害者はとっくに許しているのだから贖罪など求めずそれで心を軽くしてしまえばいいのに、何処で芽生えたか知らないが責任感や良心が許さないのだろう。
律動を再開すると大きな両手に腰を掴まれる。誠の動きに合わせて突き上げられ、快感に啼く。男の奉仕に悦んだ孔が締め付けて褒めてやれば熱いものが中に拡がっていく。射精したのだ。
同じように誠の陰茎も精を吐き出している。逞しい体の上に倒れ込み、分厚い胸板に頬をつく。
徐々に冷静を取り戻し始めた誠は『やってしまった』と悔い始めるが、時間は戻せない。
誠の体をきつく抱き締める肉布団が過去の過ちを正せないように。もし戻せるならきっと、彼はあんなことしなかっただろうに。
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