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山形新幹線
奥羽山脈(板谷峠)越え
しおりを挟む十二単衣をまとった貴婦人のように優雅に聳える吾妻連峰を見ながら福島駅から新幹線の高架から在来線(奥羽本線)の線路に降りる。新幹線に乗りながらも、山や丘を切り裂くような線路でトンネルや防音壁などのコンクリートの壁も多い新幹線のレールではなく、山岳地帯でも時々トンネルをくぐりながらも切り裂くのではなく地形に沿って敷かれているレールの上で旅が出来るのが山形新幹線である。
福島市街地を抜けると山形方面に向かって右側にカーブを切ると、福島名物であるリンゴや桃などの果樹園や福島の街並みが望める高台に登り、しばらくすると今度は左にカーブを切ると列車は山あいに入り奥羽山脈(板谷峠)越えがいよいよ始まる。
列車は吾妻連峰から始まり奥羽山脈を越え、飯豊山、蔵王、朝日岳、船形山、月山、鳥海山と次から次へと百名山や二百名山の麓を走って行く。日本百名山を選ばれた深田久弥さんも
「山形県は庄内平野で日本海に面しているだけで、あとの陸地は、鳥海、船形、蔵王、吾妻、飯豊、朝日等の山で囲まれている。」
という文を残している。
山形新幹線は1992年にJR奥羽本線の線路に乗り入れる形で山形駅まで開業した。日本で最初に新幹線車両が在来線に乗り入れる方式で運転された新幹線である。1999年には新庄まで延長された。愛称である「つばさ」は公募の結果開業前に奥羽本線を走っていた特急の愛称をそのまま引き継ぐ形となった。名前の元々の由来はいくつか説はあるがそのうちの一つが、つばさを羽ばたかせるように力強く奥羽山脈を越えるという意味から取ったという。
JR線の峠越えの路線としては北陸新幹線が開業する前日本一の勾配であった信越本線横川~軽井沢間(66‰)に次ぐ33‰(1000mあたり33mの高低差が出る坂道の斜度)で難所として知られている。
新幹線が開業する前、新幹線は通過する赤岩駅、板谷駅、峠駅、大沢駅の4駅は連続してスイッチバックの駅であった程である。新幹線開業後もその跡が残っており2007年には経済産業省により近代化産業遺産に認定された。
吾妻連峰の麓であることを感じる余裕がないくらい、山林などにより山深い険しい地形と豪雪地帯という険しい条件での難工事であったに違いない。
奥羽本線開通当初はスイッチバックの通過線すら存在せず、急行列車も含めて全て各駅に停車を強いられた。今でも峠駅で峠の力餅の立ち売りが行われているのを見てそういう歴史の面影も感じる。
今のように新幹線などがよく通る数キロ以上にもなる長いトンネルを掘削する技術が生まれる前の時代では、スイッチバックなど急勾配の線路に列車を走らせて峠を越えるのに様々な工夫が施された。
列車はいくつかのトンネルをくぐり杉林や松川(下流で太平洋に注ぐ阿武隈川水系)の上流を見ながら山あいを縫って行く。板谷駅手前で山形県に入るが奥羽山脈(板谷峠)越え最長の板谷トンネルはその直後にくぐる。分水嶺でそのトンネルを出てから車窓に顔出す川は日本海に注ぐ最上川水系となる。峠駅、大沢駅と過ぎしばらくすると車窓に水田も目にするようなり米沢盆地へ入って行き列車は米沢駅に到着する。
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