旅鉄からの手紙

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山陰本線

山陰本線での忘れ物

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出雲市から西へ200キロくらい離れたところに山口県の秋吉台がある。秋吉台と言えば草原の中で石灰岩が点在するカルスト台地や、その地下にある秋芳洞は有名である。石灰岩は水に溶けやすく雨水や主に雨水からなる地下水により、気が遠くなるような年月をかけて我々を楽しませてくれる洞窟が作られたのであろう。山の斜面に広がる棚田のような百枚皿など天然の芸術作品も楽しめる。

私は秋吉台は2回とも美人と旅をした。そのうちの最初の1回は学生時代に広島から岩国(錦帯橋)などを旅していた時である。その時秋吉台のユースホステルで知り合った同じ学生で旅をしていた人達と、その時地球に大接近していたヘールボップ彗星を未明に見た。皆明るい人達ばかりでそのうちの一人が美人であった。天下の秋吉台でしかも明るい旅人達と楽しく滅多に見られないヘールボップ彗星を見た。今思えば本当に楽しい貴重な旅の思い出となった。

しかしその後が良くなかった。私の当時の旅は秋吉台の後は山口線と山陰本線をに乗って、のんびり中国山地や日本海を眺めながららゆっくりと東へ戻る予定にしていたが、彼女達は当時の私と行く方向が逆で、しかも私が昨日まで旅をして来た岩国や広島に向かう予定であった。

1.予定通り自分の計画した通り一人旅を続ける

2.一度自分が旅して来たルートを戻ってでも彼女達と楽しそうな旅を続ける

1か2のケースどちらかしか選べない場合、あなたならどうしますか?当時の私は迷いつつも「1」の最初の予定通り一人旅は続けたが

「やっぱり一度旅して来た道でも彼女達と一緒に旅を続けた方が良かったかな。」

という迷いから生じた後悔がずっと消えず、折角の山口線から山陰本線への旅も台無しにしてしまった。山口線はSLやまぐち号が機関車を重連(2両連結)されるくらいの山越えなど起伏の変化を味わえて、そして山陰本線は日本海を汽車に揺られながら長い時間眺められる。あの時折角山口線から山陰本線の旅をしたのにそれらの楽しみは未だに味わえていないままだ。

こうして山陰本線で私にとって大切な忘れ物をしたままである。
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