9 / 23
<9・俺様キャラは二次元で充分>
しおりを挟む
ああ、なんて絵に描いたような俺様キャラなんだろう。あまりの出来上がりっぷりに、千愛は怒りを通り越してあきれてしまった。
少女マンガの世界や女性向けの恋愛シュミレーションゲームなら。多分こいつも攻略対象の一人で間違いないのだろうな、と思う。そして、印象最悪なところから、徐々に“普段は俺様なのに、時々優しい素振りを見せるギャップにキュンとしちゃうの”とでもなっていくのではなかろうか。
元々あまり俺様系のキャラというのが好きではない千愛だが、そういう心理が想像できないというほどではない。そして、男の方も“この俺に媚びてこないなんて、お前面白い女だな、気に入った”とかなって、最終的には“お前、俺様のものになれよ”とか口説き始めてフラグが成立していくのだ。強引に、男らしく迫られるのがきゅんきゅんしてしまう女子にはこういうシチュエーションはなかなかたまらないのだろう。これがブサイクなジジイならともかく、蓮見惣介が顔だけ見ればイケメンであるのも間違いないのだから。まあ、今の段階では千愛が口説かれているのではなく、ライバルから手を引けと迫られているわけだったが。
――ああ、なんとなーくわかった。私が俺様系のキャラにあんまときめかないわけ。
男らしい、と一般的に言われる属性は嫌いじゃない。ただ、横暴で横柄、暴力的であることと――男らしさと呼ばれるのをイコールと捉えるのはさすがにどうかと思うだけだ。自意識過剰ゆえ、強引に行って“やった”方が女が喜ぶと思い込んでいるのがもう自分にとっては受け付けない。架空のキャラならそれもアリかもしれないが、現実で俺様キャラなんていたら100パー浮いて終わるはずだ。ていうか、今まさに千愛はドン引いている真っ最中である。
そもそも。普段の俺様な横暴キャラと、時々見せる優しさのギャップがたまらない!なんていうのもわからない。
――んなもん、普段から優しい奴の方がいいに決まってるだろーが!
なんだその、不良少年がちょっと更生していいことをしたら、大したことでもないのにやたら絶賛されるみたいな現象は。
本人の成長の証として褒めるならともかく、日頃から真面目に生きている人間より偉いというのは論外である。
いつも人に思いやり深く接して、真面目にコツコツいいことをやっている人間の方が千倍偉いに決まっている!そう――成都の方が、ずっと。
「何黙ってやがんだ、びびってんのか、ああん?」
男が顔をぐいっと近づけてくる。少々きつい、香水の匂い。
「俺様だってな、こんなことしたくねえんだよ、女相手に。でもお前がちょっと調子乗ってるから、こういうきつめの脅しもしないといけないわけ。これはパワハラでもなんでもないよな、俺はお前の上司でもなんでもないんだか、らっ!?」
そのくだらない台詞を、最後まで聴いてやる理屈はなかった。次の瞬間、千愛は男の額に思いきり頭突きをかましていた。向こうがしゃがんで顔を近づけてきていたので、ちょっと背伸びして前進するだけでガツンと行けたのである。
狭い通路だ。しかも、周囲に人影はなし。よろめいた男をそのまま、反対側の壁に追い詰める千愛。そして。
「調子こいてんのはどっちですか?」
「!?」
壁によりかかった男の左側の壁に。思いきり、足をどんっとついてやった。壁ドンならぬ、足ドンである。それも、男女逆バージョン。色気もへったくれもないが、気にしてなるものか。
「黙って聴いてりゃ、ぐだぐだぐだぐだ、くっだんないことぬかしやがって。……誰が、誰のものだって?橘君うんぬん以前の問題です。恋人をね、自分のモノ扱いするような奴なんか、男とか女とか関係なく終わってるんですわ」
彼がゲイだった、というのが本当なら。驚かなかったと言えば嘘にはなる。少しだけ、少しだけショックあったのも事実。でも。
今、千愛の心を満たしているのは、そんなものを遥かに超える大きな怒りだった。
はっきりとわかったからだ。何故、成都がずっとやってきた総務部から異動することを選んだのか。あんなにも自分の価値を貶めるほど追いつめられたのか。
全部こいつが、己の価値観を押しつけて洗脳したからだ。否、支配といった方が正しいだろうか。俺のものは俺のもの、お前のものも俺のもの。なんて古臭いジャイアニズムを発揮してくれているうのか。そして、はっきり本人が言ったわけでも証拠があるわけでもなく、付き合っている“かもしれない”と思っただけの相手にこうして脅しかけるとなれば。そりゃ、本人も周囲に迷惑をかけてしまうと萎縮するに決まっている。ああ、華乃が“お前と成都はお似合いだけどやめとけ”なんて言い出すのも仕方ないことだろう。みんな、こいつに怯えて成都に近づけなくなっていたのだ。
そう、このままほっとけば、恋人どころか友達も失ってしまうかもしれないのではないか?なんせこいつは、男も女もライバルだと思ってるのだから。――ああ、なるほど、それってつまり。
「……ああ、理解した。嘘ですよね、橘君がゲイだっての」
「何だって?」
「もし、橘君が女にまったく興味ない人なら、こうして私を脅す必要なんかないわけですから。それをこうして、社内で人に見られるかもしれないリスク侵してでもしゃしゃり出てきたのって、つまり私の存在が自分の脅威になるかもしれないって思ったからでしょ。私と彼が、実際にはどんな関係なのかもちゃんと調べがついてないくせに。あんたと付き合ってたってのは嘘じゃなさそうだし……実際のあの子はゲイじゃなくてバイなんでしょ。だったらそれが何?って感想しかないけどね、私は」
冗談じゃない。
自分のことはどうでもいいが、そうやって彼の人間関係に口だしてコントロールして、自分好みの人間にしようとして。
それのどこが恋人だ。そんなもののどこが愛なのか。
「あんた、自分の想い通りになるお人形が欲しいだけなんじゃないの。恋人じゃなくて」
「なっ……言わせておけば……!」
「やんの?やる気なの?表出るかこの野郎。言っておくけど私、これでも格闘技やってて結構強いんだけど勝負するかよ、ええ?」
反論しようとした男を睨みつけて封殺する。
「あの子は私の大学時代の可愛い可愛い後輩なわけ。すごく優しいし気の使えるいい子だって知ってるわけ。そんな子がさ、あんたみたいなクソ男に引っかかってコントロールされてるって知ったら、元先輩としても一人の人間としてもちょっと見てられないわけ、わかる?」
涙が滲みそうになっていた。なんでこんな男に、成都が。
「二度と橘君の前に顔見せんじゃねえクソが。次に余計なことしやがったら、マジでぶっとばすからな」
情けない顔なんぞ、こいつに見られたくもない。千愛はそれだけ言い捨てると、そのままくるりと背を向けて階段を速足に降りた。蓮見惣介は、追いかけて来なかった。
ああ、二度とあんな奴の顔を見たくないのは自分も一緒だ。同時に酷い自己嫌悪に陥る。
格闘技をやってたことを、人を脅す材料になって使いたくなかったのに。そんなことをした自分と、そうさせたあの男に、とにかく無性に腹が立ってしまった。
***
成都には、あの男が脅しに来たことなど話すつもりはなかったのだが。残念ながら翌日――仕事終わりに二人で飲みに行ったところで、思いきり頭を下げられる羽目になったのだった。その日、彼は朝から外に出ていて、終業の少し前に会社に戻ってきたため、それまで千愛と顔を合わせなかったのである。
「本当にごめんなさい、先輩……」
居酒屋くなはち、の今日はテーブル席である。いっぱいオツマミを食べたい時や、最初から二人で来る時は正直こちらの席の方が都合が良かった。なんといっても、料理がたくさん乗るのがありがたい。
「実は、総務にも何人か知り合いというか、今でも連絡取り合ってる友人がいて。それで、その……惣介さんが、ものすごく荒れて梅澤先輩の悪口言いまくってたって情報が……だから……」
今日は飲む量を控えよう、は暗黙の了解である。まだ二人の手元には、一杯ずつののビールしかない。
「だからその、本当にすみませんでした。それから、惣介さんのことを隠してたことも、俺自身のことも……」
「それは気にしなくていいってば。私が勝手に思い込んでたこともあるし、橘君が私を騙したことなんか一つもないでしょうに」
しょんぼりする成都の肩をぽんぽんと叩いて、千愛は言う。
「確かに、前の恋人が男だとは思ってなかったけど。別に今のご時世じゃ珍しくないというか……いや、昔からそういう人はいたんだろうけど、今はもう少し隠さない人も増えたっていう意味でね。安心してよ、それで差別意識とか全然ない。むしろ、異性愛者は告白しなくていいのに、同性愛者だけ告白しろっていうのもおかしな話だしねー」
というか、実は千愛、腐った乙女の一角だったりする。同人誌を買いこんだり家がポスターだらけになっているなんてことはないのだが、まあ、暇な時間は二次創作のサイトで某アニメのBL小説やマンガを読みまくったりするし、一次創作系のサイトの創作BLも大好きだったりする。つまりまあ、元々男性同士の恋愛には比較的寛容なつもりなのだ。創作の世界なら、むしろ蓮見惣介×橘成都のCPはビジュアル的にも美味しいと思ったかもしれない。勿論二次元と現実はまったく意味が違うものなので、だからこそいろいろ戸惑いもあったわけだが。
「正確には同性愛者じゃなくて、両性愛者だと認識してるんだけど、あってる?」
「あってます。俺も……惣介さんも、バイセクシャルです。会社で出会ってお互いにそれが分かって、まあなし崩しにというかなんというか」
「そういうのって分かるもんなの?大抵自分がLGBT系の人って、相手はストレートだと思いこんじゃうって聞いたけど」
「ああ、向こうが。“お前実はバイだったりする?”って言ってきて」
「……どういう勘してんだアイツ」
というか、それを堂々と尋ねてくるあたり、彼もいい性格をしているような気がする。千愛が何を思っているのかわかったのだろう、凄いですよね、と成都は苦笑いをしてきた。
「あの人は言ったんです。“お前バイだったりする?そうだろ?俺もそうなんだぜ”って。……俺は驚きました。自分のそういうのって、隠すのが当たり前だと思ってたから。隠すこともなく堂々と笑ってカミングアウトできるのが、なんというかちょっとカッコよく見えちゃって。ましてや彼は……俺が持っていないものをたくさん持ってましたからね」
そうして成都は。どういう経緯で惣介と付き合っていたのか、についてを話し始めたのである。
少女マンガの世界や女性向けの恋愛シュミレーションゲームなら。多分こいつも攻略対象の一人で間違いないのだろうな、と思う。そして、印象最悪なところから、徐々に“普段は俺様なのに、時々優しい素振りを見せるギャップにキュンとしちゃうの”とでもなっていくのではなかろうか。
元々あまり俺様系のキャラというのが好きではない千愛だが、そういう心理が想像できないというほどではない。そして、男の方も“この俺に媚びてこないなんて、お前面白い女だな、気に入った”とかなって、最終的には“お前、俺様のものになれよ”とか口説き始めてフラグが成立していくのだ。強引に、男らしく迫られるのがきゅんきゅんしてしまう女子にはこういうシチュエーションはなかなかたまらないのだろう。これがブサイクなジジイならともかく、蓮見惣介が顔だけ見ればイケメンであるのも間違いないのだから。まあ、今の段階では千愛が口説かれているのではなく、ライバルから手を引けと迫られているわけだったが。
――ああ、なんとなーくわかった。私が俺様系のキャラにあんまときめかないわけ。
男らしい、と一般的に言われる属性は嫌いじゃない。ただ、横暴で横柄、暴力的であることと――男らしさと呼ばれるのをイコールと捉えるのはさすがにどうかと思うだけだ。自意識過剰ゆえ、強引に行って“やった”方が女が喜ぶと思い込んでいるのがもう自分にとっては受け付けない。架空のキャラならそれもアリかもしれないが、現実で俺様キャラなんていたら100パー浮いて終わるはずだ。ていうか、今まさに千愛はドン引いている真っ最中である。
そもそも。普段の俺様な横暴キャラと、時々見せる優しさのギャップがたまらない!なんていうのもわからない。
――んなもん、普段から優しい奴の方がいいに決まってるだろーが!
なんだその、不良少年がちょっと更生していいことをしたら、大したことでもないのにやたら絶賛されるみたいな現象は。
本人の成長の証として褒めるならともかく、日頃から真面目に生きている人間より偉いというのは論外である。
いつも人に思いやり深く接して、真面目にコツコツいいことをやっている人間の方が千倍偉いに決まっている!そう――成都の方が、ずっと。
「何黙ってやがんだ、びびってんのか、ああん?」
男が顔をぐいっと近づけてくる。少々きつい、香水の匂い。
「俺様だってな、こんなことしたくねえんだよ、女相手に。でもお前がちょっと調子乗ってるから、こういうきつめの脅しもしないといけないわけ。これはパワハラでもなんでもないよな、俺はお前の上司でもなんでもないんだか、らっ!?」
そのくだらない台詞を、最後まで聴いてやる理屈はなかった。次の瞬間、千愛は男の額に思いきり頭突きをかましていた。向こうがしゃがんで顔を近づけてきていたので、ちょっと背伸びして前進するだけでガツンと行けたのである。
狭い通路だ。しかも、周囲に人影はなし。よろめいた男をそのまま、反対側の壁に追い詰める千愛。そして。
「調子こいてんのはどっちですか?」
「!?」
壁によりかかった男の左側の壁に。思いきり、足をどんっとついてやった。壁ドンならぬ、足ドンである。それも、男女逆バージョン。色気もへったくれもないが、気にしてなるものか。
「黙って聴いてりゃ、ぐだぐだぐだぐだ、くっだんないことぬかしやがって。……誰が、誰のものだって?橘君うんぬん以前の問題です。恋人をね、自分のモノ扱いするような奴なんか、男とか女とか関係なく終わってるんですわ」
彼がゲイだった、というのが本当なら。驚かなかったと言えば嘘にはなる。少しだけ、少しだけショックあったのも事実。でも。
今、千愛の心を満たしているのは、そんなものを遥かに超える大きな怒りだった。
はっきりとわかったからだ。何故、成都がずっとやってきた総務部から異動することを選んだのか。あんなにも自分の価値を貶めるほど追いつめられたのか。
全部こいつが、己の価値観を押しつけて洗脳したからだ。否、支配といった方が正しいだろうか。俺のものは俺のもの、お前のものも俺のもの。なんて古臭いジャイアニズムを発揮してくれているうのか。そして、はっきり本人が言ったわけでも証拠があるわけでもなく、付き合っている“かもしれない”と思っただけの相手にこうして脅しかけるとなれば。そりゃ、本人も周囲に迷惑をかけてしまうと萎縮するに決まっている。ああ、華乃が“お前と成都はお似合いだけどやめとけ”なんて言い出すのも仕方ないことだろう。みんな、こいつに怯えて成都に近づけなくなっていたのだ。
そう、このままほっとけば、恋人どころか友達も失ってしまうかもしれないのではないか?なんせこいつは、男も女もライバルだと思ってるのだから。――ああ、なるほど、それってつまり。
「……ああ、理解した。嘘ですよね、橘君がゲイだっての」
「何だって?」
「もし、橘君が女にまったく興味ない人なら、こうして私を脅す必要なんかないわけですから。それをこうして、社内で人に見られるかもしれないリスク侵してでもしゃしゃり出てきたのって、つまり私の存在が自分の脅威になるかもしれないって思ったからでしょ。私と彼が、実際にはどんな関係なのかもちゃんと調べがついてないくせに。あんたと付き合ってたってのは嘘じゃなさそうだし……実際のあの子はゲイじゃなくてバイなんでしょ。だったらそれが何?って感想しかないけどね、私は」
冗談じゃない。
自分のことはどうでもいいが、そうやって彼の人間関係に口だしてコントロールして、自分好みの人間にしようとして。
それのどこが恋人だ。そんなもののどこが愛なのか。
「あんた、自分の想い通りになるお人形が欲しいだけなんじゃないの。恋人じゃなくて」
「なっ……言わせておけば……!」
「やんの?やる気なの?表出るかこの野郎。言っておくけど私、これでも格闘技やってて結構強いんだけど勝負するかよ、ええ?」
反論しようとした男を睨みつけて封殺する。
「あの子は私の大学時代の可愛い可愛い後輩なわけ。すごく優しいし気の使えるいい子だって知ってるわけ。そんな子がさ、あんたみたいなクソ男に引っかかってコントロールされてるって知ったら、元先輩としても一人の人間としてもちょっと見てられないわけ、わかる?」
涙が滲みそうになっていた。なんでこんな男に、成都が。
「二度と橘君の前に顔見せんじゃねえクソが。次に余計なことしやがったら、マジでぶっとばすからな」
情けない顔なんぞ、こいつに見られたくもない。千愛はそれだけ言い捨てると、そのままくるりと背を向けて階段を速足に降りた。蓮見惣介は、追いかけて来なかった。
ああ、二度とあんな奴の顔を見たくないのは自分も一緒だ。同時に酷い自己嫌悪に陥る。
格闘技をやってたことを、人を脅す材料になって使いたくなかったのに。そんなことをした自分と、そうさせたあの男に、とにかく無性に腹が立ってしまった。
***
成都には、あの男が脅しに来たことなど話すつもりはなかったのだが。残念ながら翌日――仕事終わりに二人で飲みに行ったところで、思いきり頭を下げられる羽目になったのだった。その日、彼は朝から外に出ていて、終業の少し前に会社に戻ってきたため、それまで千愛と顔を合わせなかったのである。
「本当にごめんなさい、先輩……」
居酒屋くなはち、の今日はテーブル席である。いっぱいオツマミを食べたい時や、最初から二人で来る時は正直こちらの席の方が都合が良かった。なんといっても、料理がたくさん乗るのがありがたい。
「実は、総務にも何人か知り合いというか、今でも連絡取り合ってる友人がいて。それで、その……惣介さんが、ものすごく荒れて梅澤先輩の悪口言いまくってたって情報が……だから……」
今日は飲む量を控えよう、は暗黙の了解である。まだ二人の手元には、一杯ずつののビールしかない。
「だからその、本当にすみませんでした。それから、惣介さんのことを隠してたことも、俺自身のことも……」
「それは気にしなくていいってば。私が勝手に思い込んでたこともあるし、橘君が私を騙したことなんか一つもないでしょうに」
しょんぼりする成都の肩をぽんぽんと叩いて、千愛は言う。
「確かに、前の恋人が男だとは思ってなかったけど。別に今のご時世じゃ珍しくないというか……いや、昔からそういう人はいたんだろうけど、今はもう少し隠さない人も増えたっていう意味でね。安心してよ、それで差別意識とか全然ない。むしろ、異性愛者は告白しなくていいのに、同性愛者だけ告白しろっていうのもおかしな話だしねー」
というか、実は千愛、腐った乙女の一角だったりする。同人誌を買いこんだり家がポスターだらけになっているなんてことはないのだが、まあ、暇な時間は二次創作のサイトで某アニメのBL小説やマンガを読みまくったりするし、一次創作系のサイトの創作BLも大好きだったりする。つまりまあ、元々男性同士の恋愛には比較的寛容なつもりなのだ。創作の世界なら、むしろ蓮見惣介×橘成都のCPはビジュアル的にも美味しいと思ったかもしれない。勿論二次元と現実はまったく意味が違うものなので、だからこそいろいろ戸惑いもあったわけだが。
「正確には同性愛者じゃなくて、両性愛者だと認識してるんだけど、あってる?」
「あってます。俺も……惣介さんも、バイセクシャルです。会社で出会ってお互いにそれが分かって、まあなし崩しにというかなんというか」
「そういうのって分かるもんなの?大抵自分がLGBT系の人って、相手はストレートだと思いこんじゃうって聞いたけど」
「ああ、向こうが。“お前実はバイだったりする?”って言ってきて」
「……どういう勘してんだアイツ」
というか、それを堂々と尋ねてくるあたり、彼もいい性格をしているような気がする。千愛が何を思っているのかわかったのだろう、凄いですよね、と成都は苦笑いをしてきた。
「あの人は言ったんです。“お前バイだったりする?そうだろ?俺もそうなんだぜ”って。……俺は驚きました。自分のそういうのって、隠すのが当たり前だと思ってたから。隠すこともなく堂々と笑ってカミングアウトできるのが、なんというかちょっとカッコよく見えちゃって。ましてや彼は……俺が持っていないものをたくさん持ってましたからね」
そうして成都は。どういう経緯で惣介と付き合っていたのか、についてを話し始めたのである。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
【R-18】私を乱す彼の指~お隣のイケメンマッサージ師くんに溺愛されています~【完結】
衣草 薫
恋愛
朋美が酔った勢いで注文した吸うタイプのアダルトグッズが、お隣の爽やかイケメン蓮の部屋に誤配されて大ピンチ。
でも蓮はそれを肩こり用のマッサージ器だと誤解して、マッサージ器を落として壊してしまったお詫びに朋美の肩をマッサージしたいと申し出る。
実は蓮は幼少期に朋美に恋して彼女を忘れられず、大人になって朋美を探し出してお隣に引っ越してきたのだった。
マッサージ師である蓮は大好きな朋美の体を施術と称して愛撫し、過去のトラウマから男性恐怖症であった朋美も蓮を相手に恐怖症を克服していくが……。
セックスシーンには※、
ハレンチなシーンには☆をつけています。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
【R18】ドS上司とヤンデレイケメンに毎晩種付けされた結果、泥沼三角関係に堕ちました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向けランキング31位、人気ランキング132位の記録達成※雪村里帆、性欲旺盛なアラサーOL。ブラック企業から転職した先の会社でドS歳下上司の宮野孝司と出会い、彼の事を考えながら毎晩自慰に耽る。ある日、中学時代に里帆に告白してきた同級生のイケメン・桜庭亮が里帆の部署に異動してきて…⁉︎ドキドキハラハラ淫猥不埒な雪村里帆のめまぐるしい二重恋愛生活が始まる…!優柔不断でドMな里帆は、ドS上司とヤンデレイケメンのどちらを選ぶのか…⁉︎
——もしも恋愛ドラマの濡れ場シーンがカット無しで放映されたら?という妄想も込めて執筆しました。長編です。
※連載当時のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる