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24話 目覚めと記憶
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2日間、深い眠りに落ちていたとは思えないほどすっきりと晴れ渡った頭でティアルーナは目覚めた。ふと右手に何か違和感を感じて起き上がらずに視線だけそちらに向ければロイスが俯いて、手を握っていた。
「兄様…?」
握られていない方の手で身体を支えて、起き上がりながら寝ているだろうかと思い小声で声をかけるとぱっと弾かれるようにロイスが顔を上げた。ティアルーナからすれば先程ぶりのロイスはなんだか顔色が悪く、少しやつれているような気がした。
「ルーナッ! 目が、覚めた?!」
ベッドの近くに移動された椅子に座っていたロイスは飛び上がるように立ち上がると素っ頓狂な声を上げてティアルーナに抱きついた。
「え? あ…ふふ、兄様。くすぐったいです」
まるで死者が舞い戻ったかのような反応をするロイスに抱きすくめられて、そのくすぐったさからくすくすと笑いを零すとロイスはほんのりと赤くなった目元を抑えながら、からりと笑った。
「ルーナの意識がなくなってから、3日経っているんだ。父上も母上もずっと傍にいたけど、昨日の夜中に執事と侍女に無理やり連れていかれたよ」
「まあ! …3日? 私、何かしました?」
記憶を失う際のことは、なにせあんまりにもぼんやりとしていたものだから薄らとしか分からなかったが、まさか3日も眠り続けていたとは思わずティアルーナは驚きの声を上げる。
「いや、急に意識を失って…酷い熱もあってね。原因は分からないが疲れではないかと医者が言っていたが…」
ロイスはそう話しながらも決してティアルーナの手を離そうとはせず、ティアルーナの顔を心底嬉しそうに眺めている。それに少し気恥ずかしくなりながらも笑い返すとふと夢で思い出した記憶のことに思い至った。
「…あ、そうです。兄様、私記憶が戻った…というと少し違うんですが、記憶を失う前のことを夢で見たんです。私の記憶のはずなのに、なんだか他の人の記憶を見ているような感じだったんですが全て、分かります」
「記憶が…? ちょっと待ってね、医者を呼ぶから」
あまりに不安で、少しの間で良いから2人きりにしてくれと医者も侍女も下げていたロイスは控え室に下がった医者を呼ぶべく、とても名残惜しそうにしながらも手を離すと駆け足で部屋を出ていった。
──────
すぐさま医者と侍女を引き連れて戻ってきたロイスの指示で、昨夜強制的に寝室に連行されたドーラとアルフを呼びに行く為に侍女の1人が走り、ティアルーナはその間に医者に問診と検査を受けていた。
「では、記憶が戻ったということか!」
「お嬢様のお言葉をお借りするならば、記憶を見たというのが正しいようですが、間違いなく失われた記憶はお戻りになっております」
僅かな時間で駆け付けてきたアルフとドーラが医師の報告を聞くとドーラは喜色の笑みを浮かべ、アルフも隠しきれないとでも言うように口の端が持ち上がっていた。
「お身体の方もなんら異常はみられません。ですが、3日間眠ってらしたのでゆっくりと庭園の方をお散歩でもされるのがよろしいかと思います」
朗らかに医師がそう伝えると、それを聞いたロイスがすぐさま立ち上がる。
「なら、僕と一緒に行こう?」
その姿はまるで元気で、3日間寝ていないことなど欠片も感じさせぬものだった。だが、その行動をティアルーナは許さなかった。
「駄目です! ほら、兄様はお早くお休みになってください。3日もお休みになっていないなんて…!」
専属侍女のメアリからロイスが一睡もせず付きっきりであったことを聞かされるとティアルーナは眦を釣りあげて、ネグリジェの上にストールを羽織るとロイスの腕を引いて部屋へ連れていく。大人しく隣にある自室に連れていかれるその顔には満面の笑みが浮かんでおり、余程安心したのかティアルーナの手ずから毛布をかけられた瞬間に眠りに入ったという。
「兄様…?」
握られていない方の手で身体を支えて、起き上がりながら寝ているだろうかと思い小声で声をかけるとぱっと弾かれるようにロイスが顔を上げた。ティアルーナからすれば先程ぶりのロイスはなんだか顔色が悪く、少しやつれているような気がした。
「ルーナッ! 目が、覚めた?!」
ベッドの近くに移動された椅子に座っていたロイスは飛び上がるように立ち上がると素っ頓狂な声を上げてティアルーナに抱きついた。
「え? あ…ふふ、兄様。くすぐったいです」
まるで死者が舞い戻ったかのような反応をするロイスに抱きすくめられて、そのくすぐったさからくすくすと笑いを零すとロイスはほんのりと赤くなった目元を抑えながら、からりと笑った。
「ルーナの意識がなくなってから、3日経っているんだ。父上も母上もずっと傍にいたけど、昨日の夜中に執事と侍女に無理やり連れていかれたよ」
「まあ! …3日? 私、何かしました?」
記憶を失う際のことは、なにせあんまりにもぼんやりとしていたものだから薄らとしか分からなかったが、まさか3日も眠り続けていたとは思わずティアルーナは驚きの声を上げる。
「いや、急に意識を失って…酷い熱もあってね。原因は分からないが疲れではないかと医者が言っていたが…」
ロイスはそう話しながらも決してティアルーナの手を離そうとはせず、ティアルーナの顔を心底嬉しそうに眺めている。それに少し気恥ずかしくなりながらも笑い返すとふと夢で思い出した記憶のことに思い至った。
「…あ、そうです。兄様、私記憶が戻った…というと少し違うんですが、記憶を失う前のことを夢で見たんです。私の記憶のはずなのに、なんだか他の人の記憶を見ているような感じだったんですが全て、分かります」
「記憶が…? ちょっと待ってね、医者を呼ぶから」
あまりに不安で、少しの間で良いから2人きりにしてくれと医者も侍女も下げていたロイスは控え室に下がった医者を呼ぶべく、とても名残惜しそうにしながらも手を離すと駆け足で部屋を出ていった。
──────
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「では、記憶が戻ったということか!」
「お嬢様のお言葉をお借りするならば、記憶を見たというのが正しいようですが、間違いなく失われた記憶はお戻りになっております」
僅かな時間で駆け付けてきたアルフとドーラが医師の報告を聞くとドーラは喜色の笑みを浮かべ、アルフも隠しきれないとでも言うように口の端が持ち上がっていた。
「お身体の方もなんら異常はみられません。ですが、3日間眠ってらしたのでゆっくりと庭園の方をお散歩でもされるのがよろしいかと思います」
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「駄目です! ほら、兄様はお早くお休みになってください。3日もお休みになっていないなんて…!」
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