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第12話 エルフと再会! 誤解が解けてデレが始まるのでござるな! 

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 魔族収容所では、新たに捕虜として連れてこられる魔族もいれば、収容所から消えていく魔族もいます。

 収容所から消えていく捕虜は、取り調べによって凶悪犯罪が判明して処刑される場合だけでなく、別の理由による場合もありました。

 それは、魔族が人間の奴隷になることを受け入れた場合です。奴隷紋による魔法契約を結ぶことで、人間の主人に仕えることになるのでした。

「じゃぁ、キモヲタ……お別れだね。アニメの話、とっても楽しかったよ……」

 オーガ少年のシンクローニが、牢から引き立てられていきました。

「ショタ鬼どのぉおおおお!」

「ショタじゃねーから! なんだったら毛も生えてるから!」

 このツッコミを最後に、一瞬、寂しげな笑顔をキモヲタに見せてから、彼は新しい主人に連れられて収容所を去って行ったのでした。

 がっくりと膝から崩れ落ちるキモヲタ。

 親しくなった魔族との別れが辛かったのだろうと察した狼王ロボが、キモヲタを慰めるために声を掛けようとしました。

「まぁ……その……なんだ……」

「年増ではござったがあんな立派なパイオツ貴婦人に買われていくなんて、シンクローニ氏、うらやま杉でござるよぉおお!」

「マジかよ……」

 獣人族のロボは、人間の美醜には全く関心がなかったものの、キモヲタがキモイことを言っていることだけは分かってしまったのでした。



~ 奴隷市場 ~ 

 人類軍と魔族軍の戦争は、セイジュー神聖帝国の皇帝が倒されたことによって、一気に人類軍有利に傾いていきました。

 元々、セイジュー皇帝の強大な力と強引な支配によって、無理やりまとめられていた魔族側は、皇帝の死によっていっきに崩壊してしまったのです。

 国や部族のなかには、セイジュー皇帝が従える神話級妖異たちを恐れて魔族軍に参加していたものも少なくありません。

 皇帝亡きいま、彼らにはもはや魔族軍に留まる理由もなく、あえて人類軍と敵対する必要もなくなってしまったのです。

 現在、人類軍は破竹の勢いで勝利を重ねており、人間の魔族に対する報復は今後一層激しいものになっていくのは誰の目にも明らか。それを見据えて魔族側の国からも、自ら進んで人類軍に恭順を示そうとする動きさえ出てきています。

 魔族兵のなかには、奴隷にされることを受け入れて、自ら捕虜になる者たちまで増えているほどでした。

「まぁ、俺の場合、仲間の解放を条件に捕虜になったんだけどな。まぁ、奴隷にするっていうならなってもいいさ」

「家族のところへ戻りたいとは思わんでござるか?」

「家族のことは村や解放された仲間が守ってくれるはずだ。心配はしてないよ」

 それはフラグでござる……とキモヲタは思いましたが、狼王ロボの目は家族を想う気持ちと仲間に対する信頼で満ちていたので、口を開くことはありませんでした。

 暫く沈黙が続いた後、突然、周囲に大きな銅鑼の音が響き渡ります。

 続いて、怒鳴るような大声が聞こえてきました。

「奴隷の引き渡し時間が終了しましたので、これから奴隷市場の時間となります! 優良商品は展示会場にどうぞ! それ以外の商品は直接、各檻をご覧ください。ただし、あまり檻には近づき過ぎないように!」

 アナウンスを聞いた狼王ロボは、ハァーとため息をつくと、キモヲタに向って言いました。

「また見世物にされる時間が来たな。こればっかりは好きになれんよ」

「まったくでござる!」

「いや、お前は人間の雌を見て発情してるだろうが。この時間が一番楽しそうに見えるぞ」

 奴隷を買いにくるのは、お金持ちの貴族や大商人たちがほとんどです。そうした買い物客の多くが、御夫人や愛人を伴なっています。そして、そうした女性の胸元は、たいてい見せつけるかのように大きな谷間が開かれているのでした。

「ぬふふ。否定はせんでござるよ! 我輩のお楽しみタイムであることは間違いござらんですからな!」

「発情するのは構わんさ。ただ今日から隣の檻が空くんだ。夜中にマスかく時はそっちを向いて、なるべく端のほうでやってくれよな。臭くてかなわん」

「なななななななっ!? バレてるでござるか!? 昼前に脳内録画した貴婦人パイオツを脳内AV変換再生してナニしているのがバレてござったか!?」

「お前……俺のことを獣人だって忘れてないか。というかシンクローニも気づいてたぞ」

「はわわわわっ!?」

 激しく動揺するキモヲタでしたが、他種族ということもあってか、狼王ロボの方はそれほど気にしてはいない様子でした。

「それよりキモヲタ、退屈しのぎにゆび相撲しようぜ!」

「我輩がマスかいている事実を知っていながら、平気でゆび相撲に誘うとは、兄者は相当に大物でござるな」

「あっ、そういやそうだな。手はちゃんと拭いてくれよ」

「そんな感じでいいのでござるか!? というかゆび相撲は兄者の爪が痛いからもう嫌なのでござるよ!」

 そう言って、キモヲタが狼王ロボの差し伸べる手を払いのけようとした瞬間――

「危ねぇ!」

 いきなり狼王ロボがキモヲタの手を掴み、グイッと手前に引っ張りました。

 ガシッ!

 キンッ! 

「あぼへっ!?」

 キモヲタは豚のような悲鳴を上げて、顔の半分を檻に喰い込ませてしまいました。

「あ、兄者、な、何をするで、ご、ござるか……」

 顔を檻に喰い込ませながら、キモヲタが狼王ロボに抗議します。

「まったくだ! てめぇ、何しやがる!」

 そう答える狼王ロボの視線は、キモヲタではなく檻の外に向けられていました。

 檻の外には息を荒くした女性の姿がありました。

「はぁ……はぁ……。何をする? だと? はぁ……はぁ……その白いオークを……殺すに決まっているだろうがぁ!」
 
 そう絶叫するのはレイピアを檻の中に突き立る女冒険者。その姿にキモヲタは確かに覚えがありました。

 なんと檻の外に立っていたのは、かつてキモヲタが命を救った美しきエルフの冒険者、エルミアナだったのです。

 先程までキモヲタが狼王ロボと話ながら座っていた場所には、エルミアナの細い手から伸びたレイピアが突き刺さっています。

 銀色に輝くレイピアを見て、ようやく自分が殺される寸前だったことに気がついたキモヲタは、ガタガタと激しく震えだしました。

「な、なっ、何事ぉおおおお!?」

 キモヲタの絶叫が収容所一杯に広がっていきました。


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