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第7話 どこもかしこも戦闘ばかりでござるな!

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 ケモミミ少女から逃れて、森のなかを駆けること数時間。

 ついにキモヲタは馬車のわだちの跡が残る道に出ることができました。

「おぉ、これは人が使っている道ですな! これをたどっていけば街か村に着くこと間違いありませんぞ。フォカヌポー」

 喜び勇んでキモヲタは道に沿って進みはじめます。道はそれなりに広く、往復する馬車がお互いに道を譲る必要もないほどの幅がありました。

 異世界において初めて人間の住む街に辿り着くことができると思うと、キモヲタの胸は高鳴ります。それと同時にキモヲタは、自分がフルチンであることがようやく気になりはじめたのでした。

「ふぬぬ。このままマッパで誰かと遭遇しようものなら、変態などと勘違いされてしまいかねませんな。デュフコポー」
 
 常に前に向って歩むことを是とするキモヲタは、これまで出会ったエルフ女性とケモミミ少女が、自分のことを変態オークだと誤解している可能性については一切思い至ることがありませんでした。

「しかし、どうしたものか……せめて我が聖剣エクスカリバーを隠すくらいの布でも落ちていれば良いのでござるが……」

 周囲をキョロキョロしながら歩き続けるキモヲタですが、彼の目的に叶う落とし物はついぞ見つかりません。

 さらに歩き続けて数時間。

 キモヲタは、道の先に3台の大きな馬車が停まっているのを見つけました。

「おぉ! ついに文明との邂逅でござる!」

 喜び勇んだキモヲタは、馬車の方へドスドスと駆け出しました。

 そしてすぐに足を止めます。

 ガキーン! キーン! キーン!

 馬車の周りでは、騎士らしき一団が多くの魔物を相手に戦っていました。

 キモヲタは木陰に身を潜めて、戦闘の様子をじっと観察します。戦いの方はどうやら騎士たちが、わずかに優勢のように見えました。

「それにしてもこの異世界はアチコチで戦っているようでござるな。戦争でもしておるのでござろうか。デュフコポー」

 キモヲタが推測した通り、彼が降り立ったフィルモサーナ大陸は、魔族と人類との間で大きな戦争が行われている真っただなか。

 さらに、今キモヲタのいる場所は、人類軍の旗頭であるアシハブア王国と、魔族側に属するナヴリエルとルートリア連邦の国境近く。まさに戦いの最前線だったのです。

「ここは森を通って回避一択ですな。デュフコポー」

 そう言って身を潜めたまま、キモヲタは森のなかに入って大きく迂回することにしたのでした。

 ところが、森のなかを歩み続けていたキモヲタは、再び争いの場面に遭遇してしまいます。

 カンッ! ガン! キーン!

 再び木陰からこっそりのぞいてみると、どうやらフルプレートアーマーに身を包んだ騎士たちと巨大なサイクロプスが戦いを繰り広げてる最中のようでした。

 騎士たちはサイクロプスにかなりの痛手を負わせてはいるものの、サイクロプスが繰り出すの巨大な棍棒の一撃はすさまじく、騎士たちが次々と吹き飛ばされ、動かなくなっておりました。

 そしてついに、立っている騎士はただ一人だけとなってしまいます。

(もしこの騎士が倒れて、サイクロプスが自分に向ってくるようなことになったらマズイでござる!)
 
 そう考えたキモヲタは、木陰に身を潜めたまま、サイクロプスに向ってスキル【お尻かゆくなーる】を発動しました。

「ハッ!」

 キモヲタが気合と共にスキルを放つと、サイクロプスは突然棍棒を取り落として、お尻を掻き始めました。

「ぐぬぉおおおおおお!」

 それでは痒みが収まらないのか、サイクロプスは脇目も振らず近くの大木に駆け寄ると、ひたすら大木にお尻を擦りつけはじめました。

 騎士はといえば、突然奇妙な行動に走ったサイクロプスに驚きつつも、この機を逃すつもりはないとばかりに、巨大なクレイモアを構えて突進します。

 グサッ!

 騎士はそのまま勢いに任せて、サイクロプスの心臓にクレイモアを突き刺しました。

「ぐおっ!」

 心臓を刺されたサイクロプスが、苦し紛れに振るった巨大な腕が当たって、騎士は吹き飛ばされてしまいます。そのまま地面に叩きつけられ、動かなくなってしまいました。

 サイクロプスの方もだんだんと動きが鎮まり、その目から光が急速に失われて行きます。

 ズリズリ……。

 サイクロプスは、最後まで木の幹にお尻を擦りつけながら絶命しました。
 
 サイクロプスの死を見届けたキモヲタは、倒れている騎士たちに駆け寄ると、彼らが生きているかどうかを確認して回りました。

 しかし、騎士のもとに足を運ぶたびにキモヲタは溜息をつくばかり。なぜなら、首が折れた者、兜ごと頭を潰された者、鎧ごと胸を潰された者、どの騎士も一目見ただけで生存が絶望的な者ばかりだったからです。

 最後にキモヲタは、サイクロプスに止めを刺した騎士のもとへと駆け寄りました。

 地面に倒れていた騎士は、手足がありえない角度で折れ曲がっていました。その無惨な様子を見たキモヲタは、彼もきっと死んでいるのだろうなとなかば諦めかけていました。

 ところが、キモヲタが騎士の元へと近づくと、兜のなかから激しい呼吸音が聞こえてきたのです。

「い、生きているでござる!」

 騎士の生存を喜ぶのも早々にして、キモヲタは騎士の足元にしゃがみ込むと、そのすね当てを外しました。露わになった足は真っ白で、キモヲタが思っていたよりも華奢な感じがしました。

「今、助けるでござるよ!」

 そう言ってキモヲタは【足ツボ治癒】を発動し、騎士の足裏に親指をグイッと押しこむのでした。 
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