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第5章 Sleeping Beauty
第46話 全員集合。
しおりを挟む学校に一人の少女がいた。
彼女の名前は天海結愛。
学校一の美少女と名高い、マドンナ的存在である。
頭脳明晰、スポーツ万能。
卓越した才能を持ち、人付き合いも得意ときた。
学校の男子なら誰でもが憧れる存在。
一度でいいから話してみたい。
あわよくば付き合いたいなんて思うのは、思春期の男子高校生ならば当然の発想だった。
ぼくは同じ高校に通う一介のモブ。
小山悠斗。
実はぼくは、とある超能力を持っていた。
放課後、彼女が帰ろうとする時。
グラウンドからフラフラと飛んできた硬式ボールが目に映った。ぼくは外野手の如く手を伸ばして、寸前のところで彼女を助けた。
「あ、危ない……!」
ハリウッドスター顔負けの演技力でボールが当たるのを阻止したぼく。並みのラブコメヒロインならば今ので顔を染めて、惚れていてもおかしくない。
一部の隙も無い完璧な計画。
ぼくの超能力、それは予知夢を見る事だった。
それも悪い未来だけを予知してしまうという不完全な能力だ、しかしその未来を回避できる唯一無二の力でもある。これを使って、大事件を未然に防いだり、誰かが死んでしまう場面を身を挺して守るなんて事をぼくがするはずもない。
全ては一連のラブコメ的展開。
これは計画的ラブコメの始動に過ぎないのである。
「だ、大丈夫……?」
爽やかなイケメンボイスで手を伸ばすぼく。
彼女は不思議そうに目を丸め、ぼくの手を取った。
「ありがとう、ござい、ます……?」
なんて事だ、歯切れの悪い感謝の言葉。
まるで惚れたという様子を見せないではないか!
これではぼくが自作自演をした馬鹿のように見えてしまう。
嗚呼、せめてそれらしい反応が欲しかった……。
そう早くも反省をしていると、
「あの。どこかで以前、お会いしませんでしたか」
彼女はそうぼくに告げた。
今は高校二年生の秋シーズン。そろそろ受験勉強も視野に入れようかという時期に、同じクラスであるぼくと彼女が少女漫画の第一話みたいな会話をしているのには理由があった。
彼女は、一か月以上の休学を経て、記憶喪失ながらも学校に復帰したのだ。皆は温かい視線で彼女を囲み、男子達は関係性がリセットされたはず、と躍起になっていた。
他ならぬぼくも、多少の焦りを感じながら今日こうして行動に移したのだ。
さて、ここでなんて答えるのが正解か。
他人を装うのがいいか。
それは、小説の完結には相応しい展開かもしれないが、かくいうぼくは他人を装って一から関係を紡ぐには難しいと判断。
後から思う。
その判断は実に、正しかったと。
「実は前に、同じ部活に入っていたんですよ」
「同じ部活……なんですかそれは」
「未来研究部。意識高そうな名前でしょう」
結愛はそうして立ち上がる。
ぼくはこほんと咳払いをしてからこう言った。
「我々は貴女を待っていた」
部室へと彼女を連れて行く。
するとそこには麗奈や安藤くんといった面々が待ち構えていた。「遅いぞ」なんて軽口を叩かれながら、各々席へとついた。
彼女が救い、そして作り上げた部活。
これを無かった事にはしたくない。
別に目的がなくってもいいじゃないか。
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さて、最初の議題は……?
「結愛と仲良くなる。これで決まりだ」
結愛の父さんよ。
ちゃんと約束は果たしたぞ。
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おっと、約束はまだ終わっていなかった。
結愛を一生幸せにする。
その為の努力は、未来を見ずとも行っていくつもりさ。
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