イレブン

九十九光

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♯18ー6

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来たことにも気づかずに演奏を続けている。

「放課後からずっとこんな感じですか?」

「ええ、まあ……。少しは休めよって言ってるんですけどね」

 天草先生は苦笑いしながらも、無心になって練習に励む彼女を称賛している様子だった。確かにその姿は、とても今年の夏の大会に出る予定があった水泳部員だとは思えない姿だった。そしてあちこちに散らばっている東中の生徒たちも、きっと彼女と同じような気持ちで練習に励んでいるのだろう、というのはオーバーな気もする。

 松田に声をかけるのが難しいと感じた私は、すごすごと音楽室を後にする。するとドラマはすぐに動いた。

 音楽室すぐ横のパソコン室の出入り口に、柔道部主将の小暮進がいた。いかにも部屋の施錠具合を確認し、誰もいないと分かったから引き返すという一歩手前、といった感じで立っていた。

「どうしたの、小暮?」

 私が少し暗い雰囲気のする彼に声をかけると、小暮は自分と仲間たちの中にあったとある要望をこちらに伝えてきた。

 今度の学校祭を平治と一緒に過ごしたい。

 無口なだけで仲間思いな性格の、彼らしい要望だった。

 今回の騒動の中心人物は内田平治である。最初は彼の冷たい態度を気に食わないと考える者が多かったが、結果的に東中生は彼の周囲にいる大人たちのほうが間違っていると結論づけた。その結論があって、今私と彼らは学校に対してケンカを売るような真似を実行している。そう考えると、確かに当日内田平治がいないのはおかしな話に思えてきた。

 私がそんな複雑なことを考えられるほど間を開けたのち、小暮は当日朝、内田を連れ出すために手を貸してくれないかと聞いてきた。私は少し間を開けて、次のように返事を返した。

「……。ああ。構わないよ」

 こうして残りの日時は流れ、九月十八日。東中学校学校祭当日となった。
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