イレブン

九十九光

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♯17ー3

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 そんな私に言葉をかけてきたのは、以前と変わらない体型の小林先生だった。

「緊張してんの?」

「え、は、はい……」

「大方の方針は決まってて、生徒も自分からやるってのがほとんどだから。私らはそれを見守って、必要に応じてアドバイスして、学校への偽装工作を徹底するだけでいいから」

 いつもと変わらない厳しさがにじみ出ている語感に、私の中の緊張感はより一層増した。それに呼応するように、館内にも気味の悪い静寂が訪れる。こういう時間は、ほんの数秒の話であっても何時間も経ったように感じるものだ。

 その静寂を打ち破ったのは、キイロイトリがプリントされたTシャツを着ている三島先生だった。

「よし! チーム君彦君! 現状の完成具合を樋口先生に見せようか!」

 わざとらしい大声と一発の柏手で、彼女は伊達を中心としたチームに指示を出す。それに合わせて伊達本人も、ほか三名の男子生徒ともに「うっす!」という、体育会系丸出しの返事を返した。

 彼らはギターとベース、ドラムにスタンドマイクを壇上に準備すると、それぞれ所定の位置につき始める(楽器やマイクなどは、東中の音楽室の備品、個人で持っている生徒や教員のもの、佐布里小学校が無償で貸してくれたものの三つがあるという)。伊達は壇上最前線の中心に位置取り、マイクを軽く叩きながら音量調整をしている。あいつが歌う四人組のバンドなのだろうか。

「ほら樋口、特等席行きなって」

 いつの間にか私の後ろに回り込んでいたナイキのシャツの品川が、私の背中を舞台前方に向かって押す。本人に面と向かって質問するまでもなく、彼女と私たちの間の確執はなくなっていたようだ。

 舞台正面で体育座りする私がこの会の現状把握に戸惑っているうちに、舞台上の生徒は演奏の準備を終えていた。伊達は一番目立つ最前列のセンターでスタンドマイクの前に立っており、やはり彼がボーカルをするようだった。

 彼はまさにバンドのリーダーであるかのように、いつも通りのノリのよさを見せつけながら宣言する。

「それじゃあ聴いてくれ! ボーカル俺、ギター川野、ベース志村、ドラム大河内で! 『カサブタ』(作詞、作曲千綿ヒデノリの曲である)!」
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