イレブン

九十九光

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♯16ー1

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「……。これで全部」

 内田はそう言って話を切り上げた。

 いまだにアスファルトの上にうずくまったままの彼を見て、私は何もできなかった。ところどころ出てくる稚拙な言葉遣いと、一部始終を濁しながらも負の部分を一切隠すことのなかったこの話は、大人によって語られる体験談なんかよりもずっと生々しいと感じた。

 時刻は手元の時計で午後四時を少し過ぎたところ。私はこの内田の話に、返す言葉が見つからなかった。しばらくの間、何を言い返せばいいのかあれこれ考え、一人無言のまま思案に苦しんだ。

 そこに内田が声をかける。

「……。信じるの? 今の話」

 私がそれに気づいて視線を向けると、彼はこちらに顔を上げていた。両目が真っ赤に充血しており、彼が心の中で抱き続けていた傷の深さを物語る。

 ここにきて私は、内田と事前に約束した条件を思い出した。

「あ……! いや……。そういう……、約束だったじゃん?」

 私はあわてて彼の話を信じる旨の返答をすると、膝を曲げて彼と同じ視線になった。
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