イレブン

九十九光

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♯14ー5

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「今回、お宅の生徒さんでいらっしゃる内田平治さんとそのご家族、お宅が担当している別の生徒さんのお母様である石井清美さんへのインタビューが正式に決まりまして。学校関係者ということであなたにも出演していただきたく、お電話をさせていただきました」

 私はこの説明でようやく、石井母に自分の携帯電話の番号を教えていたことを思い出した。すると次に気になるのは、学校側がこれを把握しているかどうかである。私がその旨を長谷川さんに尋ねると、彼はその低い声でこう答えた。

「ええ。学校内での取材とほかの生徒、保護者への取材はNGということでしたが、先生方は承諾があれば自由にしていいと、佐久間学校長のほうから言われております」

 なんて身勝手で裏のある話なのだろう。こういう話があったということを事前に知らせてくれないところにも憤りを隠せないが、何より学校そのものへの取材はダメというのが引っかかる。事情を知っている者としては、校内での問題を外へと出さないようにするためだというのが筒抜けだ。

「それで……、取材の日時は……」

 そんな東中の裏事情を語ることはしないで、私は話の掘り下げを行った。

 校内での研修などと重なっていない限り、私はこの取材に応じようと考えていた。あの内田がカメラの前で、『お父さんが死んでしまって悲しいけど、東中の仲間や先生たちが温かく迎え入れてくれて嬉しいです』などと言ってくれるとは、とてもじゃないが信じられなかった。あからさまなお涙頂戴ものとして批判を受けることのあるこの特番の意向に沿わないことを言って、使い物にならない映像だけを残す結果が目に見えていた。そこにこの間の、生徒のために学校に謀反を起こそうというほかの先生たちの話が鮮明に残っているとなれば、この話を黙って見ていようとは思えなかった。

 何か行動を起こすわけではないが、ここで起きる真相くらいは知っておきたい。

 私はその直感だけで、自分の行動を決めていた。

「八月三日の午後三時半から、勤労文化会館のロビーで行います。色々と準備がありますので、当日午後二時には現地集合となります」

 長谷川さんのその説明に、私は迷うことなく承諾の返事をした。

 そしてこの取材の話と一切関係ない私の日常シーンを丸ごとカットして、取材当日。

 勤労文化会館は、東中のある知多市東側でなく、伊勢湾沿いの西側にある市民ホールのような場所だ。近くには警察署に市役所、市民プールに各種会社の工場や発電所、特急電車の停まる名鉄朝倉駅に、片側三車線の広い道路にトラックの往来の激しい産業道路と、東側に
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