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♯9ー4
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協力してくれる気がしない。まだ朝の八時台だというのに、気だるさを全身に感じてしまう。
私が引き戸の閉めきられた二組の教室の前に行くと、部屋の中から生徒たちのバカ騒ぎの笑い声が聞こえてくる。とっくに『席に着け』と知らせる予鈴は鳴っているのに、相変わらず落ち着きのない集団だ。
「ほら、全員静かに」
私は引き戸を開けながら事務的な意味全開で注意喚起をしつつ教室内に入った。
そこで何に驚いたかと言えば、椅子と机に足を乗せて立ち、「クラスのみんなには、内緒だよ!」とふざけている山本ではない。伊藤や諸田などと一緒に、今まで皆勤だった原田がいなかったのだ。当然、驚いたということは彼の家から欠席連絡を受けていないという意味にほかならない。あのクラス一番の優等生が無断欠席をしたのである。
「誰か、原田がどうしたか知らない?」
教卓についた私はクラス全体を見渡しながら質問する。石井、松田、内田と、ドラマの中心になってくれそうな生徒は全員揃っていた。
「里穂の次はアンパンマンがズル休みか」
「あのアンパンマン、元気百倍じゃねえのかよー!」
伊達と湯本が理由ではなく、茶化すようなことを口にした。
面長の顔をした原田のあだ名がアンパンマンなのは置いておくとして、このタイミングでの原田の無断欠席は松田の時以上に深刻な問題だ。松田の場合は家の問題だと予想できたので、こちらは全力で問題解決に臨むだけでよかった。だが原田の場合は、今のところこちらで予想できる理由が、山田先生による内田平治との強引な距離の遠ざけ以外、考えようがなかった。つまり、我々教員のせいで不登校にさせた可能性が浮上したのだ。
自分のせいではないにせよ、日本伝統の連帯責任という言葉によって、私も一緒に責任を取らされる可能性は充分にあった。何より原田ほどのよくできた生徒が今の三人二組からいなくなると、このクラス全体の雰囲気の悪化が起きるのでは、という懸念が私の中にはあった(もう充分悪くなっているとは思うが)。とにかくこの問題は早急に解決しなければならないと、この時の私は一人心の中で焦っていた。
ちなみに一時間目開始の五分前に、「頭が痛いそうなので今日は休ませます」という原田母からの電話が職員室からの内線で入ってきた。家のほうで色々バタバタしたらしく、連絡が遅れたとのことだった。
その後、予想通り文化祭のゲスト講演の内容を生徒たちにバカにされ、原稿用紙五枚に及
私が引き戸の閉めきられた二組の教室の前に行くと、部屋の中から生徒たちのバカ騒ぎの笑い声が聞こえてくる。とっくに『席に着け』と知らせる予鈴は鳴っているのに、相変わらず落ち着きのない集団だ。
「ほら、全員静かに」
私は引き戸を開けながら事務的な意味全開で注意喚起をしつつ教室内に入った。
そこで何に驚いたかと言えば、椅子と机に足を乗せて立ち、「クラスのみんなには、内緒だよ!」とふざけている山本ではない。伊藤や諸田などと一緒に、今まで皆勤だった原田がいなかったのだ。当然、驚いたということは彼の家から欠席連絡を受けていないという意味にほかならない。あのクラス一番の優等生が無断欠席をしたのである。
「誰か、原田がどうしたか知らない?」
教卓についた私はクラス全体を見渡しながら質問する。石井、松田、内田と、ドラマの中心になってくれそうな生徒は全員揃っていた。
「里穂の次はアンパンマンがズル休みか」
「あのアンパンマン、元気百倍じゃねえのかよー!」
伊達と湯本が理由ではなく、茶化すようなことを口にした。
面長の顔をした原田のあだ名がアンパンマンなのは置いておくとして、このタイミングでの原田の無断欠席は松田の時以上に深刻な問題だ。松田の場合は家の問題だと予想できたので、こちらは全力で問題解決に臨むだけでよかった。だが原田の場合は、今のところこちらで予想できる理由が、山田先生による内田平治との強引な距離の遠ざけ以外、考えようがなかった。つまり、我々教員のせいで不登校にさせた可能性が浮上したのだ。
自分のせいではないにせよ、日本伝統の連帯責任という言葉によって、私も一緒に責任を取らされる可能性は充分にあった。何より原田ほどのよくできた生徒が今の三人二組からいなくなると、このクラス全体の雰囲気の悪化が起きるのでは、という懸念が私の中にはあった(もう充分悪くなっているとは思うが)。とにかくこの問題は早急に解決しなければならないと、この時の私は一人心の中で焦っていた。
ちなみに一時間目開始の五分前に、「頭が痛いそうなので今日は休ませます」という原田母からの電話が職員室からの内線で入ってきた。家のほうで色々バタバタしたらしく、連絡が遅れたとのことだった。
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