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#24ー7
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腕を開放した。
「何々? もしかして湯浅ちゃんもヤリ目? このままホテル行っちゃ」
「氷川さんって彼女さんとかいるんですか?」
私は小暮さんの性行為のお誘いを遮って質問をぶつける。
小暮さんは、「なんだ、俺じゃないのか」と言いたげな表情を一瞬したが、少し黙って考えた後で、私の質問に答えてくれた。
「そうだな……。いる、いや、いたかもな」
「いた? 別れたってことですか?」
「いや、詳しいことは知らないけど、あいつの家のリビングに、あいつが男の人と女の子含めた三人で写ってる写真があってよ」
「橋本さんと楓さんですか?」
「そうそう。今思ったんだけど、確か二人ともこのアパートで殺された人だったじゃん」
そう言って小暮さんは目の前にある事件現場のアパートを指差す。
「もしかして、楓さんと氷川さんって……」
「で、俺も気になったから、去年一度、その二人のことを聞いたんだよ。その時あいつ、支援団体でよくサポートしてあげてる子と、そのお兄さんだって言ってよ。楓さんって子とはできてないって言ってたけど、もしかしたらそういう関係だったかもな。それ以外の団体関係の写真、どこにも飾ってなかったし」
私はそれに対して、「はあ……」と、物思いにふけりながら返事をした。
なるほど、確かに団体に関係してそうな写真は、あの家には例のスリーショット一枚きりだった。小暮さんに言われるまで気づかなかった。
さらに小暮さんは言葉を続ける。
「あいつのこと、格ゲーと犬が好きってことくらいしか知らねえけど、もしかしたら和製切り裂きジャックの件は、見た目以上に堪えてると思うぞ。知り合いが殺されたってだけでも充分つらいだろうし、それが彼女だったなんて話だったらなおさらだ」
なるほど、この人はこの人なりに、友人の心の傷を気遣っているところがあったのか。氷川さんとは別の意味でチャラそうな雰囲気のくせしていいところがある。
「だからさ。今あいつに女の子と密接な関係にさせるのはマズいと思うんだよ。だからさ。ここは俺がよくしてあげてもいいよ? 俺、女の子満足させるのだけは得意なんだよ」
前言撤回。やっぱりこいつは財布にコンドームを常駐させるヤリ目男だ。
私の氷川さんへの思いは、私と小暮さんの中に留めておくという形で、この場は収まりを迎えた。その後私は、上着のポケットの入れていたスマホのバイブ音で着信を確認して、急用ができたから帰ると言ってその場から立ち去り、住宅地の道の中に雲隠れした。
これで私が知りたかった情報はすべて知ることができた。
小暮さんは、性格はあまり好きになれないが、結果的にはあの人のおかげで情報収集が
「何々? もしかして湯浅ちゃんもヤリ目? このままホテル行っちゃ」
「氷川さんって彼女さんとかいるんですか?」
私は小暮さんの性行為のお誘いを遮って質問をぶつける。
小暮さんは、「なんだ、俺じゃないのか」と言いたげな表情を一瞬したが、少し黙って考えた後で、私の質問に答えてくれた。
「そうだな……。いる、いや、いたかもな」
「いた? 別れたってことですか?」
「いや、詳しいことは知らないけど、あいつの家のリビングに、あいつが男の人と女の子含めた三人で写ってる写真があってよ」
「橋本さんと楓さんですか?」
「そうそう。今思ったんだけど、確か二人ともこのアパートで殺された人だったじゃん」
そう言って小暮さんは目の前にある事件現場のアパートを指差す。
「もしかして、楓さんと氷川さんって……」
「で、俺も気になったから、去年一度、その二人のことを聞いたんだよ。その時あいつ、支援団体でよくサポートしてあげてる子と、そのお兄さんだって言ってよ。楓さんって子とはできてないって言ってたけど、もしかしたらそういう関係だったかもな。それ以外の団体関係の写真、どこにも飾ってなかったし」
私はそれに対して、「はあ……」と、物思いにふけりながら返事をした。
なるほど、確かに団体に関係してそうな写真は、あの家には例のスリーショット一枚きりだった。小暮さんに言われるまで気づかなかった。
さらに小暮さんは言葉を続ける。
「あいつのこと、格ゲーと犬が好きってことくらいしか知らねえけど、もしかしたら和製切り裂きジャックの件は、見た目以上に堪えてると思うぞ。知り合いが殺されたってだけでも充分つらいだろうし、それが彼女だったなんて話だったらなおさらだ」
なるほど、この人はこの人なりに、友人の心の傷を気遣っているところがあったのか。氷川さんとは別の意味でチャラそうな雰囲気のくせしていいところがある。
「だからさ。今あいつに女の子と密接な関係にさせるのはマズいと思うんだよ。だからさ。ここは俺がよくしてあげてもいいよ? 俺、女の子満足させるのだけは得意なんだよ」
前言撤回。やっぱりこいつは財布にコンドームを常駐させるヤリ目男だ。
私の氷川さんへの思いは、私と小暮さんの中に留めておくという形で、この場は収まりを迎えた。その後私は、上着のポケットの入れていたスマホのバイブ音で着信を確認して、急用ができたから帰ると言ってその場から立ち去り、住宅地の道の中に雲隠れした。
これで私が知りたかった情報はすべて知ることができた。
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