和製切り裂きジャック

九十九光

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#15ー6

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ていたのだ。一課の人間たちからは、つい先ほどまで感じていた眠気が吹き飛んでいた。
そこに橋本が話を続けていく。
「先ほどの二つとも、特に高速道路の使用がつぶれた場合は、交通局のデータベースから該当の車両を持っている人物をしらみつぶしに確かめる。すべての軽トラック所持者の自宅と車両を捜査し、犯人につながる証拠を見つけ出す。皆さんにはここまでやる覚悟もしておいてください。
それと山下警部」
 突然名指しされたことで、山下の体が軽くはねた。
「これら捜査の指揮と、情報捜査課と交通局への連携願いをお願いします」
「あ、ああ。分かった」
 山下が壊れたおもちゃのように小刻みに頭を縦に振って返事をした。
 そして橋本は最後に、一課の刑事たち全体に向かってこう言った。
「和製切り裂きジャックは非常に頭の切れる犯罪者です。九件すべての犯行で何一つ証拠を残すことなく、三か月近く犯行を重ねてきました。そしてこういった犯行は、我々が逮捕するか犯人が死亡するまで、永遠に終わりません。敵は過去に例を見ないほど知的で、有力な手掛かりもありません。しかし我々が泣き寝入りするわけにはいきません。常識を疑い、犯人の思考を予想し、必ず次の犯行が起きる前にとらえなければなりません」
 ほかの人間たちの話術が、一発で相手を黙らせるスナイパーライフルだとすれば、今の橋本の話術は、手数と勢いで押しきる機関銃のような話術だった。一度狙いをつけられると話の主導権を取るのは困難だった。
 この演説の後、山下が立ち上がり、ほかの一課のメンバーを名指しして指示を出し始めた。それを受けた捜査員たちは、正気に戻ったように指示に従って動き始める。
 湯浅はこんな捜査一課をはじめて見たと感じた。今までの捜査一課は、起きた事件の捜査と、その捜査とは無関係な見回りや書類作成を並行して行う、身が入っていないやっつけ仕事のような勤め方をする者が大半だった。それが今は、全員が鶴の一声で自分の行動を決め、一つの事件解決のために力を注いでいる。自分の職場がここまで活気づいている様を、湯浅は今まで見たことがなかった。
「どこに行くんだ」
 湯浅は外に出ようとする橋本に声をかける。
「名古屋高速の本部に。監視カメラの映像提供の連絡はしておいたので」
 橋本はいつも通りの口調で返事をした。
「運転してやる」
 湯浅は迷うことなく彼についていった。
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