和製切り裂きジャック

九十九光

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#4-4

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さ対策のコートを羽織ると、路面の濡れている真っ暗な引山の住宅地に出ていった。
 そこからバスと電車を乗り継いで私が向かったのは、一社の事件現場だ。途中で梅酒風味のジュースを自販機で買っていき、その後は地下鉄一社駅から住宅地の坂道を北へと上って、事件現場の公園へと歩いて行った。ネットや新聞には『地下鉄一社駅近くの公園』としか記されていなかったが、『一社 公園』でマップ検索して、出てきた公園の画像と新聞に載っていた現場の写真を照らし合わせることで、正確な現場を把握することができた。
 問題の事件現場には、家を出て大体四十分ほどでたどりついた。
 南から北へ上る斜面状になっている場所にできた公園で、『一社西部第一公園』と彫られた横長の石碑が、最も幅の広い西出入り口横に設置されている。滑り台とネットがかかった砂場と青いうんていが設置されているだけで、平和公園のような無駄に広い公共施設ではなかった。正確な遺棄現場の椿の植え込みは、南側の道路と面した側にあった。剪定の作業が面倒くさそうな急斜面になっており、死体があったと思わしき場所からはきれいに椿の木が撤去されていた。その不自然な空間ができている真下の道路、その側溝のふたの上には、お供えの花やジュースや菓子類が、横一メートルくらいの範囲になかなかの数並んでいる。こういうのは事件が風化した頃やお供え物が腐ってきた頃に近隣住民が片づけると聞いたことがある。これを不法投棄と変わらない行為だと切り捨てる無神論者もいれば、亡くなった方の極楽浄土につながると言うお坊さんもいると聞いたことがある。
 そんな論争のどちらサイドにもつく気のない私は、買ってきた梅酒風味のジュースをお供えの中に陳列させ、その場で腰を落として手を合わせた。さらにその後、三十分ほどこのプチお葬式会場の近くをウロウロし、誰か来ないか待ってみた。
 言っておくが、私は今回の被害者と面識があったわけではない。お供えを持ってくる被害者の関係者や遺族を自然な形で待っているだけなのだ。
 今回の私の作戦を説明すると、話を聞きたい被害者の知り合いが来ることを願って、できるだけ自然な形で三十分待ってみる。その日の三十分で出会えなかった場合は、翌日ここに来る時間を三十分遅らせてまたここに来て、同じように三十分待つ。これをひたすら誰かと出会えるまで繰り返すというものだ。四六時中張り込むのは両親に怒られるし、近所の住人から不審者扱いされかねない。人から話を聞き出す時に、相手を怒らせたり不安にさせたりするのは厳禁だ。大した人づき合いはしてこなかった私だが、このくらいの話術は持ち合わせているつもりでいる。それに自宅から一社までは学生定期だけで行けるため、必要な資金は毎日のお供え代の百円強で済む。効率はともかく、たぶんこれが誰からも憎まれずに事件の真相に近づける方法だったと、私は今でも思っている。
 そんな年明けの寒さと眠気と戦う日々が、一日一日と過ぎ去っていく。事件の影響で暗い時間帯に歩きたくない人が増えたせいなのか、人とすれ違うことさえできなかった。とうとう三日目には、「そういう悪趣味なことやめたら?」とママに説得されるようになり始めた。三日でつらいと感じるなんて甘くないかと思うかもしれないが、往復だけで九十分
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