Night Sky

九十九光

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僕ら 今、敬礼の合図をとり 三流映画の主役に成り下がったー5

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「何やってんだ、ラストバトル! 乱薔薇と出藻倉先生が」

「コウデモシナイトオ前マデ死ヌトコダッタンダ! 許シテクレ、相棒!」

「……! 土竜! 応答しろ、土竜!」

 煮え切らない思いの人陰は、通信機で雨に訴える。

 外はあちこちに、ミサイルによってできた深さ3メートルほどの穴が空いており、人陰は足場を踏み外さないように小走りした。

 そして見たくなかったものを見てしまった。

 焼き切れている自動小銃の銃身と、雨のものと思わしき腕だった。

『遊大、こっちだ』

 装甲車の後部座席から、空襲を受けた街並みを見ていた遊大の景色が、例の鳥籠の中に変わる。

 遊大の目の前には、1週間前の文活と同じ格好をしている雨がいた。

「土竜さん、まさか……」

『悪い。なんの成果も残せず真っ先に死んじまった』

 雨は頭をかき、申し訳なさそうに言う。

『でもベストは尽くしたつもりだ。無茶はしてないつもりだ。それだけは信じてくれ』

 雨は遊大に弁明するが、ショックが大きい遊大にそんな言葉は届かない。

『これが試練その3だ。これで試練は1/4を終えた。言い換えればまだ3/4の分が残ってる。へこたれてる場合じゃない。目の前の仕事に集中しろ』

 その後雨は、先の2人同様、個人的な話をし始める。

『今思えば、やりたいこと、試したいこと、いろいろあったな。以前は物欲とか向上心とかあんましなくて、そこそこの人生と安定した老後を送れればそれでいいと思ってた。でも向上心の塊みたいなお前が来て、そんなお前と一戦交えて、ちょっと変わった。もっと自分の欲望に忠実になろう。もっとカッコいい戦い方を追求しようって。それができなかったのが悔いかな。……。頑張れよ』

 次の瞬間、遊大の目の前の景色が破壊された街並みに戻った。ガラスに映る自分の髪も、また白い部分が増えていた。

 渋谷区に派遣された颯天、王子、零二、赤目、優磨、隙焼。都心も戦火にさらされ、先発の兵士や警察予備隊が革命隊の戦士たちと激突しており、激しい戦いが起こっていた。
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