Night Sky

ざんざん ぎゃりぎゃり ばるばるーらる だんだん ばばば わいわいだ ぱーりーー15

「しかしスゴいのは風引臣蛇の胆力だ。叩きつけられてもリズムを取ることをやめない」

　相変わらず髪の毛でしょう縛り上げられたテュルパンは、執拗に彼を拘束する臣蛇に驚く。一方打ち所が悪かった小読は正確かつスピーディな玉の操作ができなくなっていた。

　テュルパン後方では文活と大樹が全身を歯車に変えたジラールに悪戦苦闘していた。素早く飛び回る歯車に傷つけられ、退くことも攻めることもできなかった。

　ここを落とすのは時間の問題だな。

　テュルパンがそう思ったその時だった。

　廊下の明かりがついたかと思うと、真っ赤な円形の平べったい何かが迫ってくる。気づいたジラールがそこに歯車で攻撃するが、なんのダメージにもならない。

「忘れたのか。コイツは実体化した時しか攻撃できないんだ」

　自分のそばまで来たそれに対してテュルパンが構える。すると赤いそれから２本の腕に握られた棒が出てきて襲いかかる。テュルパンは舌を伸ばして棒を掴む。

「先ほどの言動。貴様、私のユニゾンを把握しているな」

　赤い何かから、一人の女兵士が上半身を出してくる。教官の眼具姪宮(ガング　メイキュウ)だった。

《眼具姪宮　ユニゾン名：Mr.Lonely……影が赤い。そこに肉体を一体化させることができ、その状態で壁や天井を移動できる。》

　テュルパンは舌の筋力で掴んだ棒をへし折る。姪宮は一旦距離を取り、背中に背負っていたもう一本の棒を構える。

「女教官か！　邪魔すんじゃねえよ！」

　ジラールの歯車が上半身をさらした姪宮を襲う。姪宮は得意の棒術でそれらをすべて打ち落とした。そして全身を影の中に入れ、テュルパンをかわして第二部隊の２人のもとに駆け寄る。

「風引、夢血。引っ張るぞ」

　姪宮は腕だけ出して２人の服を掴むと、急速に引っ張って階段方面へと向かう。

「緑川、早乙女。逃げるぞ。緑川は負傷した２人を担いでくれ」

　戦闘は後回し。優先事項は訓練生の保護。

　そう考えた姪宮は自分を最後尾にし、教官棟に向かって逃走を始めた。

「逃がすかよ！　このクソアマ！」