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Hip hip HOORAYー8
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「まったく気づかなかった……。皆さんそんな素振り一切見せてなかったですし……」
「当たり前だよ。連絡と会議のほとんどは君が持ってないスマホ内で済ませたからね」
雨の説明も遊大はしっかりと聞くことができなかった。
「はいこれ」
小麦が渡したのは、色紙大の大きさの、ラッピングされた箱だった。いわゆる誕生日プレゼントというやつだった。
「開けて見てくれよ! 今ここでよ!」
王子に急かされて遊大は緊張しながら丁寧にラッピングを剥がす。
箱の中には色紙に書かれた12人の寄せ書きと、金色のネックレスが入っていた。寄せ書きには、『これからもよろしく』『高等部でも同じ部隊になれるよう頑張ろう』などと書かれており、ネックレスの飾りは『YUDAI.Y』と印字された金色のプレートだった。
「お気に召しましたか? 何分私たち学生なもので、あまり高価な物は買えなくて……」
オーダーメイドとはいえ、糸美が金メッキのネックレスをどう思うかについて遊大に尋ねる。
遊大は泣いていた。何も言わず、ただただ泣いていた。
「お、おいどうした、夜空!」
文活が思わず遊大に声をかける。
「やっぱ安もんじゃ気に入らねえか。てめえのせいだぞ、ショタコンデブ。ピザもケーキも焼き肉もフライドチキンも寿司もガトーショコラもって、予算の9割くらいを飯代に使ったせいで、こんなもんしか渡せなかったんだからよ」
颯天が小麦を責める中、遊大は「違うんです……」と絞り出すように言った。
「違うって……、何が?」
風雅が聞き返すと、遊大は今まで誕生日もろくに祝ってもらえなかった過去を話す。
「お前もなんだかんだ、いわゆる親ガチャに半分失敗した身だったんだな。そこにイベントなんか微塵も許さない厳しい初等部と来たら、もう誕生日を祝ってくれる人もそういないのも納得だ」
大樹が感想を述べる。
「でもここに来てから、少しずつ変われたんです」
遊大が涙を拭いながら話を続ける。
「当たり前だよ。連絡と会議のほとんどは君が持ってないスマホ内で済ませたからね」
雨の説明も遊大はしっかりと聞くことができなかった。
「はいこれ」
小麦が渡したのは、色紙大の大きさの、ラッピングされた箱だった。いわゆる誕生日プレゼントというやつだった。
「開けて見てくれよ! 今ここでよ!」
王子に急かされて遊大は緊張しながら丁寧にラッピングを剥がす。
箱の中には色紙に書かれた12人の寄せ書きと、金色のネックレスが入っていた。寄せ書きには、『これからもよろしく』『高等部でも同じ部隊になれるよう頑張ろう』などと書かれており、ネックレスの飾りは『YUDAI.Y』と印字された金色のプレートだった。
「お気に召しましたか? 何分私たち学生なもので、あまり高価な物は買えなくて……」
オーダーメイドとはいえ、糸美が金メッキのネックレスをどう思うかについて遊大に尋ねる。
遊大は泣いていた。何も言わず、ただただ泣いていた。
「お、おいどうした、夜空!」
文活が思わず遊大に声をかける。
「やっぱ安もんじゃ気に入らねえか。てめえのせいだぞ、ショタコンデブ。ピザもケーキも焼き肉もフライドチキンも寿司もガトーショコラもって、予算の9割くらいを飯代に使ったせいで、こんなもんしか渡せなかったんだからよ」
颯天が小麦を責める中、遊大は「違うんです……」と絞り出すように言った。
「違うって……、何が?」
風雅が聞き返すと、遊大は今まで誕生日もろくに祝ってもらえなかった過去を話す。
「お前もなんだかんだ、いわゆる親ガチャに半分失敗した身だったんだな。そこにイベントなんか微塵も許さない厳しい初等部と来たら、もう誕生日を祝ってくれる人もそういないのも納得だ」
大樹が感想を述べる。
「でもここに来てから、少しずつ変われたんです」
遊大が涙を拭いながら話を続ける。
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