Night Sky

九十九光

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かつては無邪気に笑えた人ー5

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「夜分遅くにすいませんね。我々兵士なんですけど、ちょっとお話を」

 理科雄がそこまで言ったその時だった。

 真横の花壇に植えられた花や常緑の葉が土から抜け、宙を舞った。花びらや葉は細切れになって周囲を舞う。

 信也はそれに対して必要以上に驚き、思わず口を開ける。その開いた口の中に何かの葉っぱが大量に入ってきた。

「ユニゾン解放、バンザーイ!」

 少女は通り全体に聞こえるように叫んだ。

《史跡梨香流(シアト リカル) ユニゾン名:イフ・アイ・クッド・ビカム・サムワンズ・ハート……周辺の植物を地面から引き抜いたり、花びらや葉などで分解したりして、宙に浮かせて操れる。》

「助けて! 今何か飲み込んだ! ニラみたいな葉っぱ!」

 信也が後方の遊大たちに向かって叫ぶ。

 ニラみたいな葉っぱ。こんなところにニラそのものが植わってるわけがない。スイセンか……!

 スイセンの毒性を知っている遊大が、すぐに対処するために信也のもとに駆け寄る。だがその真上に、地面から引き抜かれた街路樹数本が影を落とす。落下してきた街路樹に、遊大は後退を余儀なくされた。

「……! 木を浮かされないように私のユニゾンで対処します! 夜空君たちは犯人の制圧を!」

 理科雄は信也のリードを手放し、地面に落下した街路樹に触れ、自身のユニゾンで地面とくっつけた。その後も残りの街路樹を浮かされないために、周辺の街路樹を徹底的に地面とくっつけに回る。

 木による攻撃を封じられて動揺する梨香流。そこに遊大と太陽が突っ込んでいく。

 梨香流は街路樹から太めの枝を分離させ、2人の背中に突き刺さるように突っ込ませる。すぐにそれに気づいた太陽が、手元に出した槍で枝を爆散させる。

 その間に遊大が飛行の速度を加えた顎への膝蹴りで梨香流の急所をとらえる。強い力で脳を揺らされ、梨香流はその場に倒れ込んだ。

「犯人確保! 丼息さん、すぐに警察に連絡を」

 遊大が信也に指示を飛ばした時だった。彼は信也がどこにもいないことに気がついた。
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