Night Sky

九十九光

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The Greatest Show On Earthー7

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「即刻諸外国にこの事を知らせ、兵力の提供を要請するべきです!」

 ナナツが立ち上がって強い語気で言い放つ。

「それは無理です」

 咲がすぐに切り捨てると、「なぜです!」とナナツが食いつく。

「その諸外国にも支部と戦力があると言いましたよね。その状況で兵力の提供をしてくれる国があるとは思えません。仮に日本が諸外国の協力を得て万全な戦力になれば、別の国でテロが起きるだけです」

「……! だったら」

「各国にも支部と戦力があることを伏せて協力を要請すると? それをして何か国際的な問題が起これば、国連での日本の立場は大きく失墜します。以上の理由により、この問題は日本国内だけで解決しなければならないのです」

 そんなことを言われれも、以前横浜で暴れたロイドの強さを聞いただけで充分理解している3人は、どうしろというのだというのが率直な意見だった。

「山羽氏、何か策があるのかね」

 正義が恐る恐る尋ねる。「それは灰色仁氏から一つ提案がありました」と咲は答えた。

「これから半年間、中等部、高等部の訓練生に、より本格的な実地訓練を施し、当日の戦力として動員する、という内容です」

 一言で言えば学徒動員。そう呟いた穂花はタバコのラッキーストライクを咥え、火をつけた。

「私は反対ですよ! 子供たちを戦力に回すなんて! いつの時代の話をしてるんですか! 第一、そんなことしても戦力が足りないじゃないですか!」

 再びナナツが声を荒くする。しかし咲はそれに対しても冷静に返した。

「何もしないよりましという判断です。先ほども言いましたが、これは我が国だけで完結させなければいけない問題です。手段を選んでいる場合ではないのです。それに、侵略戦争のための太平洋戦争時代の学徒動員と、国家防衛のための今回の学徒動員では、意味が大きく変わります。動員するのも、兵士を志している若者だけです」

 冷静な言動で正論をぶつけられ、ナナツは黙らざるを得なかった。

「つきましては各地の詰所にて訓練生の実地訓練を行います。特級兵士の皆さんが管轄する詰所でも行いますので、受け入れ準備を1週間以内に済ませてください」

 相変わらず政府は一方的なお願いしかしない。現場の人間の意見など求めていないらしい。

 穂花はそう思った頃には、タバコは1本吸い終わっていた。
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