Night Sky

醜い劣等感が 汚い嫉妬が 僕にー５

「今日誰かの誕生日なんですか？」

　遊大が尋ねるが、全員が「いいや」と答えた。

「甘いな、遊大君」

　人陰はこう続ける。

「今日も世界のどこかの誰かのバースデー！　それを祝うことになんの問題があるんだい？」

　その言葉を聞いて一同は思った。

　これは陽キャを越えたパリピを越えた痛い人だ、と。

「ところで遊大君、雨君。あとでちょっと頼まれてくれるかい？」

　名指しされた２人は嫌な予感しかしなかった。

　そして翌朝。寮に顔を出した花子に、小麦と糸美がインスタグラムに投稿された１本の動画を見せた。

　動画は支部内にある池を映し、そこに住むアカミミガメをバックに『KAME RAP』というオシャレさをできるだけ意識した手書きのタイトルが出てきた。動画の内容はノリノリの人陰と気恥ずかしい様子の遊大がラップをする動画だった。カメラワークは地面や壁の中を自在に動ける雨が担当し、かなり凝ったものになっていた。歌詞は以下の通りだった。
人陰「YO　そこの道行く兄ちゃん♪　姉ちゃん♪」

遊大「この時代突き進むスタイル確立　独立♪」

人陰「時代の反響♪　一人の絶叫♪」

遊大「この亀社会に生まれたオレ達若者♪　それでも耐え抜くオレのスピリットデメリット♪」

人陰「これって友情？　愛情？　亀参上♪　ＥＹＡ－♪」

遊大「この矛盾の中で生きている僕たちの苛立ち♪」

人陰「許せなく　やるせなく　亀助け人生♪」

遊大「さあ　立ち上がるなら今♪　道進むなら今♪」

人陰「これって純情？　正常？　亀参上♪　ＥＹＡ－♪」

遊大「理不尽な　貴婦人な　キャベジンな状態全開♪」

二人「Year！」

　まだ眠気が取れない朝っぱらからこんな意味不明な動画を見せられた花子の感想は、「なんで亀ラップなの？」だった。

「昨晩帰ってきてから、西後さんがおかしくなったんです。夜空君と土竜さんを巻き込んでこんな動画を出して」

「関東支部の第一部隊の人がおかしなことしてるって話題になって、YouTubeにも転載されてるんです。どっちも感想は遊大君がかわいいということばっかですけど」

　糸美と小麦の説明を受けて、花子は人陰の様子を見る。