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九十九光

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仇花すっかり舞い散る季節ー8

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「しっかし、マジで攻略の糸口が見つからねえな……。ユニゾンをむやみやたらに使うなとかの社会の基本ルールなんて、俺の地元の幼稚園じゃみんなすぐに呑み込んだぜ」

 すでに諦めムードの王子が、子供たちに好きなようにされながら呟く。他の関東支部の面々も、されるがままだった。

「そりゃそうですよ」

 そこに話しかけてきたのは、先ほどから騒動を遠目で見ていた金髪の男の子だった。

「僕たちは生まれながらにして選ばれた人間。政治、軍事、経済、その他諸々。将来の日本、いや世界に影響を及ぼせる人間。あなたたち一般家庭から生まれた人間たちとは、生きる次元が違うんですよ。次元が」

 到底幼稚園児の言葉選びじゃないと感じて臆する遊大。だが王子は引き下がらなかった。

「お前……! それが人をいじめたり乱暴したりしていい理由になるってのかよ!」

「そんなに言うなら、薄っぺらい言葉じゃなくて、合理的な行動で示してくださいよ。もっとも、あなたたちにユニゾンを使って制圧や反撃をする権利はありませんけどね」

 金髪の男の子は勝ち誇った顔で王子に言い放つ。ユニゾンを使えないのが事実な以上、王子を含め、誰もそれ以上言えなかった。

 一同、すっかり弱気になっていた。

「ダメです! その子に弱みを見せたら!」

 園長が叫ぶがもう遅かった。遊大たちは金髪の男の子のユニゾンの術中にはまってしまったのだ。

 強力なユニゾンを持つ園児たちが、一斉に遊大たちを見る。その視線は、獲物を見つけた肉食動物のそれだった。

「さあ、みんな! テレビの向こうの人たちに見せつけてやりましょう! 僕たちのほうがその辺の庶民よりずっと完成された人間だって!」

 金髪の男の子、嗤顔和紋(ワライガオ ワモン)が園児たちに指示を出す。それと同時に、園児たちはユニゾンを使って一斉に遊大たちに襲いかかった。

《嗤顔和紋 ユニゾン名:コックローチ・テイスト……周囲の人間に、自分より格下だと確信した人間に、物理的、精神的に攻撃するよう精神干渉する。》
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