Night Sky

九十九光

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仇花すっかり舞い散る季節ー4

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「コイツ、テレビで見た兵士だぞー!」

「なんだよ、一発でやられるとかクソザコじゃーん!」

「それでどうやって飛び級したんだよー!」

「金か? 金の力で飛び級したのか?」

 無様な姿をさらした遊大に、園児たちが口々に罵声を浴びせる。そんな彼に保育士が駆け寄り、鼻血を出した遊大の顔をハンカチで拭いた。

「すいません。すいません。この子たち、みんな利かん坊なんです」

 遊大は「大丈夫です」と言いながら、強く打ってフラフラする頭で周囲を見渡す。そこには数は少ないとはいえ、数人の児童がいた。教室の隅で何かに怯えているようにしている子、逆に遊大を見てヒソヒソ何かを話し合っている子、そんな状況を達観した様子で眺めている金髪の子。

「この年の子なら、わんぱくなのは当たり前ですよ。ガラス割るのはどうかと思いますけど」

 遊大が保育士をフォローすると、保育士は「それだけじゃ済まないんです」と、半泣きでこう返した。

「この子たち、いじめもひどいんです。弱いユニゾン持ちの子やそもそもユニゾンを持ってない子を標的に、強力なユニゾン持ちの子の集団がいじめをするんです。そこに親から学んだプライドの高さが合わさって、私たちでも手がつけられない状態で。いじめられる側の親御さんは状況の改善をいじめる側の親御さんに求めるんですが、いじめる側の親御さんは、そんな弱い子供を通わせるほうが悪いって言って、話し合いにならなくて……。それで今日は、皆さんのお力で少しでもこの子たちの精神的な問題を改善してほしくて……」

 この年のわんぱくさに、プライドの高さとユニゾン共生社会が生む差別。この幼稚園が非常に複雑な問題を抱えていることを遊大は理解した。

「まずは外に出る窓を開けないと。廊下でこれ以上もみくちゃになったら大変だ」

 遊大が再び翼を広げ、窓の解放に挑もうとした、その時だった。

 廊下にいる園長が手元のリモコンのスイッチを押すと、窓が機械音を出しながら自動で開いていった。

「みんなー! 訓練生の皆さんとお外で遊びましょー!」

 そういうことができるなら、もっと早くやってほしかった。

 遊大は心の中で叫んだ。
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