Night Sky

九十九光

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心が悴む前にー11

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「頭潰すぞ! 降下する!」

 颯天が遊大に指示を出し、ロボットめがけて急降下する。そして開いているロボットの口の中に両手を突っ込んだ。

「いくら外側を固く作ろうと、内側はそうはいかねえだろ!」

 颯天が口の中でミサイルを連発する。夕暮れの横浜の空を、閃光が照らした。



「……! 大丈夫か、遊大!」

 ロボットの頭を粉微塵にし、遊大の翼で安全に道路に着陸した颯天は、ぐったりしている遊大の体を揺する。自分の体も全身痛みやしびれが走っていたが、遊大のユニゾンで無傷だった。

 だが遊大は体のあちこちから出血しており、息をするのも辛そうだった。振りきれなかった小型ロボットにやられた傷だった。

「今すぐてめえのユニゾンでてめえを治せ! 傷は浅いとはいえその出血はヤバい!」

「自分の体は……、時間逆行できないんです……」

 遊大が絞り出すように説明する。

 それを聞いて颯天は寒気がした。自分が怪我を治せないことを承知で、危険な最前線に飛び込んだことになる。そんな判断を10歳がしたことに寒気がしたのだ。

「どこのどいつがやったかと思えば、第一部隊の訓練生かよ」

 上空が男の声がする。颯天が見上げると、背中から白い翼を生やした、二十歳くらいの男が降りてきた。

「てめえがこの事件の発案者か!」

 颯天がしびれる腕を着地した男に向ける。

「そんな怖い顔するなよ。俺はあそこに転がってるロイドの胴体を回収しに来ただけだ。戦闘の意思はない」

 颯天の警戒は解けない。ロイド、今破壊したロボットのことだと察した。

「俺はユニゾン革命隊十二勇士の一人、そのリーダーを任されてる者、ローラン。シャルル総督の右腕だ」

「ペラペラ肩書き並べやがって。それで俺が尻込みすると思ってんのか?」

 颯天は臨戦態勢を解かないが、内心はどうにかなる気はしなかった。自分の体は痛みとしびれでこれ以上戦えるか怪しい。遊大は意識を保つのが精一杯で、花子は今どうなっているか分からない。他の兵士も残った小型の殲滅でこちらに手を回してくれる者がいるとも思えない。
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