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九十九光

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拉麺が美味いことだけはー2

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「実家がラーメン屋で、私もラーメン大好きだからね。たまにみんなに振る舞うんだ。そうだ!」

 小麦が両手を合わせ、こんな提案をした。

「今夜は遊大君の入隊祝いに、ラーメンパーティーにしようよ! 腕によりをかけて作るよ~。私の生まれ、名古屋名物豚骨ラーメン」

「おいおい、昨日の夜カップ麺食っといて今夜もラーメンって、飽きないのかよ」

 光がツッコミを入れるが、小麦の意思は固い。

「カップ麺と袋麺と手作りは似て非なる物だよ。特に東京じゃ豚骨スープは手に入れるのも一苦労だし、何よりチャーシューを特別分厚くできるのも手作りのいいところ!」

 そこに正面玄関から仁が入ってきた。

「おはよう、みんな。朝から盛り上がってるね」

「あ、灰色先生、ちょっと相談があるんですけど……」

 小麦が事情を仁に説明する。

「というわけで、最寄りのスーパーまでの車での送迎と、外出許可をお願いしたいんです。いいですか?」

「なるほどね。まあ、遊大君もなんだかんだまだ10歳。そういうイベントはほしいよね」

 仁は少し考え、こう結論づけた。

「分かった。運転は僕がしよう。買い物代は年上12人から均等に徴収する形で」

「ああ!? なんでこのデブの独りよがりで俺らの金まで搾り取られるんだ!」

「落ち着いてください、実砂さん。12人で出すんですから、大した金額にはなりませんよ」

 荒れる颯天を糸美がたしなめる。

 こうして小麦と仁は近くのスーパーに買い物に出かけた。豚骨スープは事前に作り置きしていたものがあるため、買うものはラーメンの具材のみ。チャーシュー用の豚肉のブロックに煮卵用の卵、刻みネギ用の長ネギに既製品のメンマ、その他もろもろ。仁を含めた14人分を買うとなると量は相当だった。だが店員も、小麦が定期的にこの量の食材を買うことに慣れているため、特に手間取ることもなくレジに通していく。

 こうして買い物は何事もなく終わり、小麦と仁は寮へと車を走らせた。事件が起きたのはその道中だった。
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