Night Sky

九十九光

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白黒曖昧な正義のヒーローー1

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「数が減ったからなんだって言うんだ! 俺は俺の仕事をこなすだけよ!」

 フロリマールはバットを構えて臨戦態勢に入る。

 性格から察するに、距離を取る相手やどうしようもない相手にのみ、第2のユニゾンは使うはず。となれば一番の驚異はジャイアントパンダの強靭なパワー。

 信也の思考は冷静だった。今まで本当にどうしようもない修羅場をくぐって来たことを考えれば、むしろこの状況は戦いやすいくらいだった。

「あれだけ強がっといて尻込みか? てめえそれでも漢か? 来いよ! 真っ向から受けてやるぜ!」

 フロリマールがそう煽った次の瞬間だった。

 信也は人間ではあり得ない速度でフロリマールとすれ違い、その間に彼の体を同じく人間ではあり得ないほど深く爪で傷つけた。

 何をした?

 フロリマールは自分の体ののろさを実感しながら、思考を張り巡らす。振り向いて確認しようにも、首を動かす時間も遅くなっていてできない。

 そして30秒経過。フロリマールは信也のいる後方へと吹き飛ばされた。裂かれた部分に強い痛みを感じながら彼は信也を見た。

 足の爪はチーターのように、傷つけるほどの鋭さを持って床に食い込み、手の爪はアリクイのように異常発達していた。

「スロォモォション……! 夜明けの合図(サン・ゴーズ・アップ)……!」



「なるほど……。屋上に来た時、階段から来なかった理由が分かったぜ……」

 傷を庇うことなくフロリマールが立ち上がる。

「爪の形状、硬度、を自在に調整できるようになったのか……! 爪を使って壁をよじ登って屋上に来たんだな……!」

 息を整え終えた信也は、返事の代わりに口角を上げる。そして再び、チーターを真似た瞬発力でフロリマールに襲いかかる。

 今度は金属バットで受け止めたフロリマール。直線的な移動しかできないなら、挙動さえ分かれば受けるのはそう難しくなかった。

 そう思った矢先だった。

 信也は片方の足の爪を牛の蹄のように形状変化させ、それでフロリマールを蹴り飛ばした。

 女児向けおもちゃコーナーに叩きつけられ、肋骨が折れたのを実感したフロリマール。出し惜しみは禁物だと認識した。
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