10 / 11
10
しおりを挟む遊歩道の木々に、
ブルーのイルミネーションが
輝いている。
キレイだな。
さっきも見てたんだけど不思議。
同じ景色なのに
勇磨がいると違って見える。
勇磨越しの世界は最強だ!
抱きしめられて体がどんどん温まる。
「ナナ、あったかくなってきた。
不安だと体が冷えるの、何で?
指先もキンキンになってさ、やめて欲しいんだけど。」
冗談っぽく、でも真剣な眼差しで言う。
「え、いや、それはみんなそうなんじゃ?」
首を傾げる勇磨。
「他の奴の事は知らない。
だけど、男はさ、目の前で女の子が冷たーくなってたら温めたくなるの!
だから、ナナはダメ。」
冷たーくって!
何だよ、それ。
勇磨だけでしょ。
というか、さー。
勇磨から離れて、ニヤけてる顔を睨んだ。
「じゃあ、勇磨も、私以外の子がキンキンに冷えてたら温めるわけ?
それを男だからって理由にされたら、納得いかないんだけど!」
私の反論にケラケラと笑う。
「確かに!でも、断言できんな。
雪山で遭難して、死にそうな子とかなら、
話は別だけど。
でも俺はナナだけだな。
ぎゅっとして温めるのはナナだけ。
魔性的な魅力のお姉さんとか?
立ち居振る舞いが素敵な大人の女性とか?」
そこまで言って、片眉を上げて私を見る。
煽ってるんだな、って分かった。
「女子大生とか?先生とか?
俺にメリットがある人だとしても、俺は騙されない。
友好的を装っても心まで持って行かれない。
ナナを超える子なんていない。絶対。」
絶対って。
何故、言い切れる?
ツバサくんみたい。
「ツバサの事は忘れろ!全く。
ナナは俺にとって、最強なんだ。
ナナはさ、俺しかないって、好きって言ってって、俺を腑抜けにするのに、すぐに他の男に持ってかれるし、俺の目の前で他の奴と絡むし、露出の多い服着るしな。
怒る俺をエロイ奴みたいに言う。
なのに頭の中は俺でいっぱいなんだろ。
で、勝手に悩んで別れようとする。
それでいて、こっそり好きでいるんだよね。
もう、俺はさ、そういうのに全部、持ってかれんだよ。
目が離せないの、マジで。
ムカツクんだけど、心配でかわいくて、意地悪したくなって、泣かしたくて、でも笑わせたくて、たまんないんだよ。」
なんだよ、もう。
何の話?
なんか、さっきから、バカップル。
「まぁ、そうだな。
今日の俺たちは、完全に痴話喧嘩を
ダラダラとしてるだけだな。
ドラマなら、え?これ、いる?って回。
でも、ダラダラとイチャイチャしてさ、
どれだけ大切か、好きかって伝え合わないと、俺達また間違えちゃうからさ。」
まぁ、確かに。
私もどんどん、勇磨が好きになる。
昨日より今日。
今日より明日。
もう右肩上がりだ。
いいや、もう、深く考えない。
勇磨の事は勇磨しか分からない。
勝手に想像しない。
そう決めたんだ。
山下先生が必要か決めるのは勇磨。
合宿が必要か決めるのも勇磨。
行って欲しくないと思うのは私。
私のために諦めて欲しくないと思うのも私。
だけど、相手が本当にどう思ってるかは
聞かないと分からない。
勝手に決めつけたらダメなんだ。
私が、勇磨を好き、それだけだ。
それだけが私の真実だ。
「何?またツバサ?」
ふっ。
「ハズレ!」
「じゃあ何?」
目の前のイルミネーションがぼやける。
幸せ過ぎてぼやける。
「なんで、イルミネーションって、冬だけなのかなって。
いつも見たいなぁってさ」
ベンチに深く座り直し、
大きく足を開く勇磨。
優しく笑って両手を広げた。
「ほら、おいで」
ドキドキしたまま、勇磨の前に立つ。
そのまま手を引かれ、
クルッと体勢を変えられる。
勇磨の足の間に入り、
後ろから抱きしめられる形で着地した。
肩を包むように私の前で腕を交差して
自分も私の首元あたりに顔を埋める。
勇磨に包まれる。
密着が、ヤバイってー。
なんだっけ、コレ。
あー、バックハグってヤツ!
でも、暖かい。
ふわふわする。
「こうやって見るものだからだよ。
寒い中、こうやってぎゅっとして見るものなの、知らなかった?」
喋らないでよ、息がかかる!
唇が首にあたるんだよ、バカ!
もう、ドキドキが最高潮で、心臓がどうにかなりそう。
「あれ、ナナちゃん、緊張してんの?
固まってる。かわいい」
ワザと唇があたるように話してる!
バカにした!
もう、普通、こんなの、緊張するじゃん!
なんで、勇磨ってこうなの!
「あれ、今度は怒ってるんだ。忙しいね」
うー。
もう、バカ!
「もう、やだ!離して、バカ!」
「だめ」
バカ!
「そんな理由なら、どんな季節だっていいじゃん、バカ!」
喋んな、バカ勇磨!
うー。
「バカはそっちだな。
夏にこんな事したら、これじゃあ済まなくなる。」
「は?なんで、何?」
またぎゅっとして、そのまま首筋にゆっくりキスをした。
体が硬直する。
何、今の?
「じゃあ夏になったら、またこうして検証してみるか。
お子ちゃまなナナにも分かるよ。」
そう言ってケラケラ笑う。
絶対、悪い事だ!
「だってナナは、コートの上から触るのは嫌なんだもんね。
手袋だって、嫌だろ?
直接、俺に触られたいって、さっき言ってたよね?」
違っ、そんな事言ってないし、
そんな意味じゃないの!
「まぁ、いいじゃん。
ナナは俺しかない。
俺もナナしかない。
だけど、お互いがいたら、最強になる。
それで、いいじゃん。」
確かに、そうだね。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる