毎日記念日小説

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9月16日 マッチの日 楽しい雑談プレーンな雑談

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今日はどうなるかな?
楽しめるかな?
楽しむことが一番大事だからなぁ。
楽しめる雑談だといいなぁ。
雑談するために学校に来てるまであるからなぁ。
楽しみたいなぁ。
楽しむことだけ考えよう。
やたら楽しむことを強調していた俺は、『雑談部屋』に入っていった。




今日もまた、白い空間に放り出された。
そしてどこからともなくアナウンスが鳴った。


”シチュエーションの設定、人物選択、話題選択が終了しました。
これより雑談を始めます。”

やっぱりアナウンスが止んだ。
やはり、雑談部屋で一番無駄な時間なう。
AIはここを修正しないのだろうか?
やっぱ、修正しないかぁ。
修正してくれないかなぁ。
毎回同じこと思ってるなぁ。
ある意味、これがルーティーンみたいなところあるしなぁ。
そう考えると、意味があるのかなぁ?
意味、あったのかな…
このルーティーンやめようかな?
どうしよう。
でも、これをやめて、調子崩したら辛いから、続けるかぁ。
再びアナウンスが鳴った。


”雑談所要時間は30分、盛り上がり等により自動で延長や短縮を行います。
シチュエーションは、『マッチ売りの少女がいそうな街頭のベンチ』です。
雑談に参加するメンバーは、『田中様』『関様』『五十嵐様』『小坂様』です。
決まった役職、役割等はございません。ご気軽に参加してください。
それでは雑談を始めさせていただきます。
今回の話題は『マッチ』です。
それでは楽しい雑談の時間をお過ごしください。”

アナウンスがやんで、光に包まれた。
マッチか。
マッチかぁ…
どうだろう。
思い出あるもんなのかな?
小学校で使ったみたいな話しかできないんだよなぁ。
好き嫌いがあるようなもんじゃないだろうし。
大丈夫かなぁ。
まぁ、楽しむだけだからなぁ。
心を決めたタイミングで、光が収まった。

最初に話し出したのは、関だった。
今日もまた、ハイテンポの日だ。関の話し出しを聞いてなんとなく分かった。

「今日の話題は『マッチ』です、はい。皆さんはマッチ好きですか?私は苦手です、はい。手の近くに火があって、手が熱くなる感じが怖いので苦手です、はい」
「じゃあ、ライターとかも苦手なの?」
「苦手です、はい。でも、マッチの方が持っているところが燃えるかもしれないという恐怖がある分、より苦手です、はい」
「へぇー、うちは、マッチは、全然好きだよ。かっこよくマッチ着けたりしてる、昔の動画とか見て、かっけーって全然なってるタイプだよ」
「えっと、あれってかっこいいよね。五十嵐さんは、ああいうかっこいいマッチのつけ方にチャレンジしてみた事とかあるの?」
「全然ないかな。失敗したらと思うと全然やる気にならないんだよね。怖気づいちゃうっていうか」
「そうなんですね。えっと、ちなみに俺は、マッチは苦手です。マッチをつけるやすりで手を擦っちゃったことがあってそれから、苦手意識があります」
「手に火が付いちゃったりとかはしなかったのか?」
「えっと、そういう面白ハプニングはなかったんですけど、手に大きめの擦り傷が出来ちゃって、生活に支障が出たので苦手です」
「そうなのか、俺はマッチは好きかな。マッチが好きかどうかなんて考えたことなかったけど、改めて考えると、嫌いな理由が俺の中にないし、マッチ着けるのは楽しかったから、好きの部類に入ると思う」
「田中君は、マッチをつけるのが得意なタイプだったんですか?、はい」
「そうだな。だいたい一発でうまくできたな。かっこよくつけるとかはできなかったけど、スムーズにはできたぞ」
「すごいですね。私は腰が引けちゃって。ただでさえ苦手なのに、何回もチャレンジする羽目になって、涙目になることが多かったです」
「そうなんだ。うちは、全然下手なタイプだったけど、なんかロシアンルーレットみたいで好きだったよ」
「えっと、俺は、苦手だから一回で終わらせようと思って全力でやって一回で終わらせてた」


案外マッチでも話は盛り上がったな。
使ったことあるものだから、意外とエピソードがあるんだなぁと思った。
みんなマッチに好き嫌いがあるんだな。
俺にとっては、ただの道具ぐらいの気持ちだったから、こんなに盛り上がるとは思ってなかった。
楽しく雑談できてよかったなぁ。
振り返りが終わると、アナウンスが鳴った。




”30分53秒26が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。



経験って大事だよね。
何気ない経験の話を共有するだけでも、会話って盛り上がるものだよね。
経験を積んでいくためにも、今日の残りの時間も頑張ってください。
それでは教室にお送りいたします。
それでは良い学校生活を”

アナウンスが止んだ。

教室に戻ってきた
今日は良かったな。
すごいスタンダードな雑談だった。
テンポは速かったけど、その分いっぱい話せたし、楽しかったなぁ。
明日もいい感じの雑談ができるといいなぁ。
楽しみだなぁ。
ルンルン気分で次の授業の用意を始めた。



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