毎日記念日小説

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7月28日 菜っ葉の日

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今日もまた、白い空間に放り出された。
そしてどこからともなくアナウンスが鳴った。
”シチュエーションの設定、人物選択、話題選択が終了しました。
これより雑談を始めます。”
やっぱりアナウンスが止んだ。
やはり、雑談部屋で一番無駄な時間なう。
AIはここを修正しないのだろうか?
再びアナウンスが鳴った。
”雑談所要時間は30分、盛り上がり等により自動で延長や短縮を行います。
シチュエーションは、『近所の誰のか分からない畑』です。
雑談に参加するメンバーは、『田中様』『富田様』『篠原様』『大森様』です。
決まった役職、役割等はございません。ご気軽に参加してください。
それでは雑談を始めさせていただきます。
今回の話題は『菜っ葉』です。
それでは楽しい雑談の時間をお過ごしください。”

アナウンスがやんで、光に包まれた。
菜っ葉かぁ。
ちょっと広めかな?
うまく盛り上がるといいけどなぁ。
まぁ、誰かがなんとかしてくれるはずだ。
光が収まった。
まぁ、どこにでもあるような光景が広がっていた。
地域に一つはあるような畑。
ここだけだと生計立てられないんじゃないかと、素人ながらに勝手に思ってしまう規模の畑のベンチに座っていた。
二日連続で、自然だな。
なんとなく自然のパワーで健康になれそう。
富田が口を開いた。
どうやらもう会話が始まってしまうらしい。
「今日の話題は、『菜っ葉』ですー。皆さん葉物野菜は好きですかー?」
富田を悪く言うつもりはないんだけれど、富田の声で会話が始まるとなんとなく、緩い雰囲気になる。
もしかしたら、畑という場にはこれくらいのテンションが一番合っているのかもしれない。
富田の雰囲気につられたのか、大森がゆったりとしたリズムで話し出した。
「私は、まぁ、嫌いではないですよ、葉物野菜。かといってすごい好きってわけでもないですけど。無関心?ってやつですね」
ゆったり派が二人になったので、俺もその派閥に乗っかって話し始めた。
「俺は、結構好きだぞ。葉物野菜って、俺の中ではなんとなく、野菜食ってるって感じがするからな」
「俺は、葉物野菜は少し苦手ですね。葉物野菜を食べているときに、申し訳ないけど草食ってる感があるから、ちょっと苦手ですね」
俺の話し終わりに被せるくらいで、間髪入れずに篠原が会話に参加してきた。
篠原、焦ってたのかな?
ちょっと早口だったな。
自分が最後に話し始めたから。
三人で話が進んでくんじゃないかって焦っちゃったのかな?
篠原の焦りが、ゆったり空間で少しだけ浮いているが、会話のスタートとしては上出来なんじゃないだろうか。
俺が、評論家ぶって会話の立ち上がりを評価していると、篠原に引っ張られて少しテンポが戻りかけた場の空気を再び富田がゆったりにした。
「私はー、葉物野菜、大好きなんですー。青汁とか、めっちゃ体によさそうな感じがいいですよねー」
「まぁ、青汁はちょっと見た目が濃い緑すぎて私は飲めないかな。すごい苦そうな見た目してるし」
大森が下を出して、苦いというジェスチャーをしながら反応した。
青汁かぁ。
なんかあったかな?
頭の中の青汁についての話のタネを探していると、篠原が先に話し始めた。
「俺も、青汁は飲めないですね。小学生の時に雑草をすりつぶして遊んでいた時の液体の色していて、飲めそうにないですね」
「あぁー。あるあるですねー。なんで小学生とかもっと小さいくらいの時ってなんであんなに草すりつぶして特性ドリンクみたいなのを作ろうとしていたんですかねー?おままごとだったんですかねー?」
え、それ、あるあるだったんだ。
俺はそんなことやったことなかったから、全然共感できない。
俺が心の中で、篠原と富田の話しに反応しているとほとんど同時に大森が反応していた。
「それって、あるあるなの?私の周りでは、まぁ、聞いたことなかったけど。まぁ、私もやったことないし」
どうやら、大森はこっち派らしい。
やっぱりそうだよな。別にそんなことあたりまえじゃないよな。
何か言おうと思ったけど、同じことを俺が繰り返して言うのもあれだから、大森の話しに合わせてとりあえず、うんうんと大きくうなずいておいた。
富田と篠原の話しに驚いた衝撃で、俺の話したかった青汁についての話題を思い出せた。
「青汁って、おばあさんが飲んでたな。通販番組で買ったって言ってたな」
話題が完全に青汁になってしまったところをうまい感じで富田が修正してくれた。
「なんかちょっと脱線してきましたねー。青汁の話しもいいですけどー、菜っ葉の話をしましょー」
「まぁ、今日の話題は『菜っ葉』であって青汁じゃないもんね。菜っ葉って何が好き?ほうれん草?小松菜?」
大森も軌道修正に一役買ってくれた。
修正した方向に軌道に乗せるため、俺はゆったりとしたペースを破り、間髪入れずに話し始めた。
「俺はほうれん草だな。ほうれん草の入った味噌汁がおいしいからだ!」
「ほうれん草もいいですよねー。私は全部好きだから困っちゃうなー。でも、一番は春菊ですかねー。ちょっとした苦みがアクセントになってて、春菊の入った鍋料理とかめちゃくちゃおいしいんですよねー」
進行の流れをがっちりつかんでいる富田は、自分の話をしつつ周りに話を自然と振っていてすごいなー。
俺にはできそうもない。
俺なら絶対、名前読んで確実に話振っちゃうからな。こんなに、雰囲気で次はお前も番だとなんとなく伝えるのってできないな。
てか、これ他にできる人いるのかな?
一人反省会というか、富田を褒める会を脳内で開いていたら、アナウンスが鳴った。
まぁ、これ以上話題を広げるのって難しそうだからな。
やはり、アナウンスさんナイスタイミング。




”29分59秒87が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。



菜っ葉は同じような緑色の葉物野菜のように見えても、一つ一つの種類が味も違えば見た目も違うし、育ち方も違う。人であれ植物であれ、何かを見分ける時に一番大切なのは知ろうとする心です。
授業の内容に対しても、知ろうとする心で、今日の残りの時間も頑張ってください。
それでは教室にお送りいたします。
それでは良い学校生活を”

アナウンスが止んだ。

教室に戻ってきた。
新システムになって、今までで一番30分に近い気がする。
ここまで近いのなら、30分ぴったりにしてくれてもいいんじゃないだろうか?
何か意地でもあるんだろうか?
まぁ、30分ちょうどで話がいい感じに一区切りになるって、相当なタイムキープの天才か、よほどの幸運の持ち主しかできないだろう。
一回くらいジャスト30分を拝んでみたいなぁ。
真面目に生きていた方が運がたまって30分ジャストが見れそうだし、今日の授業も頑張りますか。


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