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『クランの町フラッグ』観光 大満足の食事

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 俺は、集合場所のベンチに腰掛けて、屋台に賑わう大樹をぼーっと眺めていた。
 ベンチに腰掛けて数分、こちらに向かってくる人影が見えた。
 ぼーっとしていた頭を起こし、集中してみると、向かってくる人影は、コルドだった。
 俺が、コルドだと認識してすぐ、コルドがこちらに手を振ってきた。
 俺は軽く手を振り返した。
 コルドが、不自然なく会話ができる距離まで近づいてきた。
 俺は、コルドから声をかけられた。

「おっ! 早いな!」

 コルドは、いつもより1割増しぐらいでテンションが高かった。
 多分良いものが買えてテンションが上がっているんだろう。
 俺は、コルドのテンションに合わせて、いつもよりも少し明るく話した。

「良いのが早々に見つかったからな」

「何を買ったんだ?!」

 コルドはそう言いながら、ベンチに腰掛けた。
 ベンチに座ってくれた方が目線が合うから助かる。
 まぁ、このゲームに”上を向きすぎて首が疲れる”というシステムがあるかどうかは微妙なところだが。
 俺は、コルドからの問いをはぐらかした。

「それは、食べるときのお楽しみだ」

 コルドはうんうんと頷きながら言った。

「確かに、そっちの方が面白いよな!」

 コルドが来たということは、後はローズだな。
 集合時間とかをちゃんと決めなかったから、いつ戻ってくるのかわからないな。
 ローズは買い物とかが大好きだから、なかなか戻ってこないかもしれないな。
 よし、じゃあ、ローズがどれぐらいで戻ってくるのかを当てるゲームをしよう。
 俺は、若干ニヤニヤしながら、コルドに聞いた。

「ローズは、どれぐらいで戻ってくると思う?」

「俺は、あと5分ぐらいだと思うぞ!」

 コルドは、5分予想か。
 なかなか攻めた予想だな。
 ローズが、買い物を始めて10分ちょっとで戻って来るのかな?
 そう思ったから、俺はコルドより長めの時間にした。

「じゃあ俺は、15分後と予想しようかな」

「どっちの方が近いかな?!」

 それから、コルドとAPOのことや、学校でのことなど楽しく雑談をしていた。
 しばらく雑談をしていると、突然コルドが言った。

「ローズが来たな?!」

 よく見つけたな。
 俺はまだ見えてないぞ。
 コルドが見つけてから、数秒後、俺もローズを発見できた。
 いつも思うけど、コルドの視力はどうなっているんだろうな?
 何であんなに目が良いんだろうな?
 不思議だな。
 俺は、タイムを確認しながら、コルドの視力を不思議がった。
 メニューからタイムを確認した。

「あれから、12分ってところか」

 コルドは、かなり悔しそうに言った。

「オクツの勝ちだな!」

 コルドというか、コルドとローズの良いところは、こういう何もかかっていないようなゲームで負けたときに全力で悔しがれるところだと思う。
 それだけ全力でやってくれるとこちらとしても、全力を出すかいがあるというものだ。
 俺は大分うれしさを表に出しながら言った。

「うまく予想が当たったみたいだな」

 コルドは、悔しさからか、拳を握りしめていった。

「もうちょっと早く来ると思ってたのに!」

 ローズが、声の聞き取れるぐらいに近づいてきた。
 俺たちは、勝負の話を終わりにして、ローズとの会話に集中する。

「2人とも早いわね」

「まぁ、早々に良いものが見つかったからな!」

「何品も買ったわけではないからな」

 俺は、コルドの時と同じことを言ったら芸がないなと思ったから、同じ問いに違う答えをした。
 ローズは、俺たちが返答している間にベンチに腰掛けた。
 俺たちは、雑談を早々に切り上げて、食事タイムに移った。
 そろそろ我慢の限界だったから。

「じゃあ、食べ始めましょう」

「「はーい」」

 ローズが仕切って話が進んでいく。
 やはり、ローズの食にかける情熱は、俺たちの中で一番だなぁ。
 ローズはかなりやる気を込めて言った。

「買ったものを紹介していきましょう」

 まず俺が名乗りを上げた。
 買い物の時間からして、俺が一番品数が少ないし。

「じゃあ、多分買ったものが少ない俺から紹介するぞ」

 俺は、1つずつストレージから出しながら紹介をする。

「まずは、ファンタジー屋台の定番、焼き串。後は、焼きトウモロコシと、みたらし団子と、あんこの団子もあるぞ。俺が買ってきたのはこの3品だ」

 2人の膝の上も借りて、なんとか広げることができた。

「おいしそうね」

「なかなか良いセンスだな!」

 俺は、1人分ずつ配っていく。

「置く場所もないし、冷めないうちに食べましょう」

 全員のを全部出してから食べるスタイルじゃなくて、1人分ずつ食べるスタイルにするらしい。
 まぁ、全員分をここに並べてたら、多分場所が足らないだろうし。賢明な判断だと思う。
 俺たちは、俺が買ってきた3品を食べ出した。

「これおいしいわね」

「焼き串良いな!」

「焼きトウモロコシ、甘塩っぱくて最高だな」

「団子も良い甘さだわ」

 全員が俺が買ってきた分を食べ終わり、一息ついたところで、コルドが買ってきたものを紹介しだした。

「じゃあ、次は俺が買ってきたものを並べるぞ! まずは、オクツと同じ焼き串! 多分違う屋台のやつだぞ! 次は、焼き団子! 後は、焼きそばと、チャーシューも買ったぞ! さぁ、食べよう!」

 コルドが買ってきたのは、4品か。
 コルドが買ってきたものはどれもかなりおいしそうだ。
 かぶった焼き串も、俺が買ってきたやつとは見た目に差があるな。コルドが買ってきたやつの方が、1つ1つの肉が大きい気がする。
 コルドが買ってきたものが全部配られるのを待ってから、俺たちは食べ始めた。

「うまいな」

「良いもの買ったな!」

「同じ焼き串でも、屋台によってかなり味が違うわね。こっちはこっちでおいしいわ」

「チャーシューすごいぞ!」

「ほんとだ、チャーシューが口の中で溶けるようになくなってく」

「焼き団子もおいしいわね」

「焼きそばも定番感があっていいな!」

 コルドが買ってきたものは、どれもかなりおいしくて、夢中になって食べた。その結果、すぐに食べ終わってしまった。
 ローズの買ってきたものを食べる前に適度に食休みを取った。
 俺たちは、食休みついでに雑談をした。

「こんなに食べたけど、まだまだ食べられそうだな」

「レベルアップで、胃袋も大きくなっているのかもしれないわね」

「現実もそうなっていたら良いのにな!」

 適度に食べたものがおなかになじんできた頃、雑談を切り上げて、ローズが買ってきたものの紹介を始めた。

「じゃあ、トリは私の買ってきたものたちね。私が買ってきたものは、スイーツ中心よ! りんご飴に、イチゴ飴、ごま団子に、きれいなゼリー、チュロスに、キャラメル味のポップコーンよ」

 ローズは楽しそうに、スイーツを並べていった。
 どのスイーツもかなりおいしそうだ。
 焼きそばとか、チャーシューとかを食べて、そろそろメインは良いかなと持っていたところだったから、ちょうどいいな。

「甘いの良いな!」

「ちょうど甘いのが食べたい口になっていたんだよ」

「早速食べましょう」

 俺たちは、がっついたりせず先ほどよりはゆっくり、大事にスイーツを食べ出した。

「このチュロスうまいな!」

「ごま団子も良いぞ」

「りんご飴は最後だったわね」

「ゼリーもうまいな。するする入ってく!」

「ポップコーンも映画館のよりおいしく感じるぞ」

「イチゴ飴は、いつまでも食べられる気がするわね」

 ローズが買ってきたスイーツ類も食べ終わった。
 全体を通してかなりのボリュームがあったけど、苦しい思いはせず、最初から最後までおいしいと思いながら食べきることができた。
 かなりの満足感がある。
 これが毎日あるなんて最高だな。
 しかも、ゲームの中だから、いくら食べても太らないし、最高だな。
 俺たちは、軽くおなかをさすりながら話をする。

「ふぅ、食べたな」

「大満足だ!」

「毎日これがあると思うと楽しみで仕方がないわね!」

 俺はしみじみ言った。

「良い町だな」








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