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毎日記念日小説(完)
これはラブレター? 5月23日はラブレターの日
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ロッカーを開けると、封筒が一つ入っていた。
「どうしたのそれ?」
横から、田中がのぞき込んできた。
「なんか、ロッカーの中に入ってた」
「ラブレター?」
「なのなか?」
とりあえず、封筒の裏表を調べるように見る。
相変わらず、田中は、横からのぞき込んでいた。
「ここに佐藤君へって書いてあるから、多分お前宛で間違いないね。この字の感じ、たぶん女子からでしょ。ということはラブレターで確定じゃない?」
田中が封筒の裏面を指さして言った。
思わず田中の方を向くと、横からのぞき込んでいる田中とほぼゼロ距離になった。
驚いて、バッと顔をそらしてしまった。
「どうしたの?首ぶんぶん回して。それより、早く開けようよこの封筒!!」
田中のウキウキが伝わってくるようだ。
こいつは、なんで当事者であろう俺よりはしゃいでるんだ?
とりあえず封筒を開いた。
真っ白な封筒の中には1枚の紙が入っていた。
二つ折りにされたその紙は、便せんであろう。
緊張の中、便せんを開いた。
そして、そこに書かれていたことを読み上げる。
「『佐藤君へ、放課後大事な話があるので校舎裏まで来てください』だって」
「これってラブレターってやつ?」
田中に言われて、かぁっと顔が熱くなった。
今まで女子と一度も関わり合いのない人生を送ってきて、初めての女子とのかかわり、正直頭の中がパニックになっている。
「これって、告白されるやつだよな?」
「多分そうなんじゃない?」
「彼女ができちゃう流れな奴だよな?」
「そうだと思うよ」
「まじかぁ」
「佐藤、ちょっと落ち着こうか。顔が近い」
何も考えず、興奮のままに話をしていたら、どうやら俺は、田中の顔の目の前で話をしていたらしい。
田中が若干引いている。
それに、俺の顔が近すぎたのか、ぐいぐいと俺の顔を押して話そうとしている。
どうやら、俺は興奮しすぎていたようだ。
今の俺のふるまいを確認して、冷静になった。
田中とゼロ距離だったところから、一歩下がった。
「俺にも春が来たのかぁ」
俺は、しみじみと言う。
抑えられない興奮が、つい表に出てしまった。
「まぁ、そうと決まったわけじゃないけどね」
幸福とワクワクで満ち溢れていた俺の心に、不安が無理やり入ってきた。
水槽にインクを垂らしたように、一気に不安一色に染められていく。
「カツアゲってこと?何か弱みを握られちゃったのかなぁ?そもそも名前を書いてないってことは、そういうことなのかなぁ…」
俺は、どんどんネガティブになっていく。
「まぁ、まぁ。カツアゲされると決まったわけでも、彼女ができると決まったわけでもないんだから、気楽に行こうよ。ごめんね水を差しちゃって。どっちの可能性もあるなら、良いほうを想像していた方が幸せでしょ?だから、カツアゲされるかもなんて忘れて、彼女ができるかもって浮かれてようよ」
「確かに、不安になっててもしょうがない。とりあえず、放課後に合わせてアラームかけて、それまで忘れてよう」
「じゃあ、ロッカーの前で止まってないで、教室いこう」
田中に手を引かれ、俺は教室に向かった。
昼頃にはすっかり朝のことなど忘れていた。
彼がその後どうなったのかは、彼らのみぞ知る。
「どうしたのそれ?」
横から、田中がのぞき込んできた。
「なんか、ロッカーの中に入ってた」
「ラブレター?」
「なのなか?」
とりあえず、封筒の裏表を調べるように見る。
相変わらず、田中は、横からのぞき込んでいた。
「ここに佐藤君へって書いてあるから、多分お前宛で間違いないね。この字の感じ、たぶん女子からでしょ。ということはラブレターで確定じゃない?」
田中が封筒の裏面を指さして言った。
思わず田中の方を向くと、横からのぞき込んでいる田中とほぼゼロ距離になった。
驚いて、バッと顔をそらしてしまった。
「どうしたの?首ぶんぶん回して。それより、早く開けようよこの封筒!!」
田中のウキウキが伝わってくるようだ。
こいつは、なんで当事者であろう俺よりはしゃいでるんだ?
とりあえず封筒を開いた。
真っ白な封筒の中には1枚の紙が入っていた。
二つ折りにされたその紙は、便せんであろう。
緊張の中、便せんを開いた。
そして、そこに書かれていたことを読み上げる。
「『佐藤君へ、放課後大事な話があるので校舎裏まで来てください』だって」
「これってラブレターってやつ?」
田中に言われて、かぁっと顔が熱くなった。
今まで女子と一度も関わり合いのない人生を送ってきて、初めての女子とのかかわり、正直頭の中がパニックになっている。
「これって、告白されるやつだよな?」
「多分そうなんじゃない?」
「彼女ができちゃう流れな奴だよな?」
「そうだと思うよ」
「まじかぁ」
「佐藤、ちょっと落ち着こうか。顔が近い」
何も考えず、興奮のままに話をしていたら、どうやら俺は、田中の顔の目の前で話をしていたらしい。
田中が若干引いている。
それに、俺の顔が近すぎたのか、ぐいぐいと俺の顔を押して話そうとしている。
どうやら、俺は興奮しすぎていたようだ。
今の俺のふるまいを確認して、冷静になった。
田中とゼロ距離だったところから、一歩下がった。
「俺にも春が来たのかぁ」
俺は、しみじみと言う。
抑えられない興奮が、つい表に出てしまった。
「まぁ、そうと決まったわけじゃないけどね」
幸福とワクワクで満ち溢れていた俺の心に、不安が無理やり入ってきた。
水槽にインクを垂らしたように、一気に不安一色に染められていく。
「カツアゲってこと?何か弱みを握られちゃったのかなぁ?そもそも名前を書いてないってことは、そういうことなのかなぁ…」
俺は、どんどんネガティブになっていく。
「まぁ、まぁ。カツアゲされると決まったわけでも、彼女ができると決まったわけでもないんだから、気楽に行こうよ。ごめんね水を差しちゃって。どっちの可能性もあるなら、良いほうを想像していた方が幸せでしょ?だから、カツアゲされるかもなんて忘れて、彼女ができるかもって浮かれてようよ」
「確かに、不安になっててもしょうがない。とりあえず、放課後に合わせてアラームかけて、それまで忘れてよう」
「じゃあ、ロッカーの前で止まってないで、教室いこう」
田中に手を引かれ、俺は教室に向かった。
昼頃にはすっかり朝のことなど忘れていた。
彼がその後どうなったのかは、彼らのみぞ知る。
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