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会話文しか表示されない呪いにかかった世界

当たり屋婆さんのプロローグ

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「おぬしと、おぬしの読者に、会話文しか表示されない呪いをかけてやろう」
「なんなの?急に路地裏から出てきて、そんなこと言ったって信じられないでしょ!!」

「おぬしは気づいていないかもしれぬが、もう読者には伝わっているであろう、この呪いが」
「てか、読者って何?」

「分からぬならそれでいい」
「あんたの恰好っていかにも、アヤシイやつだよね。全身紫色で、顔には半透明の布がかかってて、素顔も見えないし。それに、手に水晶もってるのが一番アヤシイ。移動式の突撃占いでもやってるの?占いの当たり屋?お金なら払わないわよ。テレビのドッキリって言われたほうが信用できるわ」

「そんなにいっぺんに話すでない。聞き取りずらいであろう。」
「儂は占い師であっとる。これはドッキリでも何でもない。ただの私怨じゃ。」
「おぬしの婆さんに昔ひどい目にあわされての。その復讐を孫のお前にしてやろうというわけじゃ」
「あの婆、許さない。こんな不審者の恨み買うとか何やったの?時間ないのに不審者に絡まれるし、最悪。」

「不審者言うでない。儂は、れっきとした占い師じゃ」
「占い師?やっぱりそうなんだ。変態コスプレイヤーか、詐欺占い師かの二択だと思ってたけど、占い師なんだ。占い師とか実質、不審者じゃん」

「失礼な!占い師のどこが不審者なんじゃ?!!」
「全身紫で顔を隠すとか不審者以外の何者でもないでしょ。占い師は、定位置に固定されてるから通報されてないだけで、街中でアグレッシブに移動し始めたら、それは不審者だし、変質者でしょ。占い師に肩入れした見方しても、良くてコスプレイヤーじゃん」

「儂の神聖な衣装をコスプレなんぞと一緒にするな」
「コスプレを馬鹿にすんなよ。コスプレイヤーとしての収入で食っていってる人もいるんだぞ。それはもう立派な職業でしょうが。適当なこと言って詐欺みたいに金を稼いでる占い師とは違って、立派にお金稼いでる人を馬鹿にしないでもらえるかな?」

「占い師のどこが詐欺だというんだ!!」
「儂だって、占い師として飯を食ってきているんだ、プライドがある。訂正しろ!!」
「訂正とかしないし。どうせ、適当なこと言ってるだけでしょ?偶々当たった人から連続して金取っていくってことでしょ?それってほとんど投資詐欺広告と一緒じゃん。それを詐欺師といわずに何て言うの?ペテン師?」

「占い師のことをよく知らないくせして適当なこと言いやがって!!詐欺広告などと一緒にするでないわ!!!」
「占い師のことを詐欺師呼ばわりとは、やはりあやつの孫じゃの。考え方がひねくれとる」
「おぬしくらいの若いのは皆占い好きじゃないんか?」
「『占いだけは信じるな』がうちの家訓だから、周りの子が占いの話をしてても話題に入っていったことは一度もないよ。それに、おばあちゃんの口癖が、『占い師の言ってることの12割は嘘じゃ。あいつら詐欺師じゃ』だったから、占い師の言ってることは基本疑うようにしてるの」

「可愛そうなやつよの。どうせ、同年代の子が楽しく占いの話をしてる時に一人寂しく蚊帳の外であったのであろう。」
「やーいぼっちww」
「さっきからあんたの話方、やけに変な間があるけどどういうことなの?」

「それはのう、読者に今どっちが話してるのか分かりやすくするためなんじゃ。連続してカギカッコが並びすぎると、さすがの読者でも読みずらいだろうから、改行を入れてやってるのじゃ」
「さっきも言ったけど、読者って何?そんな配慮しなきゃいけないような相手なの?」

「分からぬならよいといったはずじゃ」
「それよりおぬしも改行を意識した話し方をするべきじゃ。読者がかわいそうであろう」
「どこの誰かもわからない”読者”とやらに何で配慮しなきゃいけないわけ?あんたと話してると、イライラしてくるんだけど」

「そのうちおのずと意識するようになる。まだ呪いが定着しきっていないだけであろう」
「その、呪いって何なの?何だっけ『私と、私の読者に、会話文しか表示されない呪い』だっけ?それって何か生活に支障をきたすようなものなの?別に呪いを信じてるわけじゃないけど」

「だんだんと、メタな説明台詞を言ってしまうようになるだろう。」
「それくらいしかおぬしには影響はない」
「よかった。具体的にメタ台詞ってどんなのがあるの?」

「お!やっとわしの言葉を信用してきたか。」
「代表的なのはあれだ、『俺の名前は○○ ○○この春から高校に入学した、高校1年生さ』じゃ」
「別に信用してるとかじゃないんだからね!!そんな台詞死んでも言わないわよ!!!それより、もう時間じゃない。今朝は寝坊しちゃったから朝出るのが遅かったのに、こんな不審者に絡まれたせいで、時間ギリギリじゃない」

「おうおう、ちょっとずつ説明台詞感がでとるようじゃの」
「何言ってるの?そんなわけないじゃない!それよりもう時間だわ。急いで走っていかなきゃじゃない。だからもう、あんたの相手なんてしてらんないのよ。それに、あんたと大声で話していたせいで、通りすがりの人たちから注目されちゃってるじゃない。そういうことだから、もう、行かせてもらうわ」

「待つのじゃ。まだ、おぬしの婆さんから受けた、壮絶な苦行の数々の話をしていないのじゃ。それを聞いてからにするのじゃ」
「そんなのきいてたら絶対に学校に遅刻するじゃない。そんなの聞いていられないわ。じゃあね、知らない婆さん」

「なんか、婆さんが『あぁ、あやつ走って行ってしもうた。あの地獄のような日々を、聞かせてやりたかったのに』とか、『あぁ、周りでこそこそこっちを見ていた奴ら、儂は不審者じゃないぞ。だから、通報するでないぞ。それでは、ずらかるとしよう』とか言ってたような気がするけど、気のせいだよね、気のせい」
「さっきのは、ただ不審者に絡まれただけ。現実的に考えて、呪いとかあるはずないし。それに、”読者”とか、意味わからないし。忘れよう、忘れよう」
「私は、さっきアヤシイ婆さんにあってないし、いちゃもんみたいな絡まれ方して、呪いも受けてない。ただ、寝坊して遅刻しそうになってるから走ってるだけ。よし!!これで行こう」

「婆さんが今、小声で『あれ、間違ってあの小娘だけに呪いをかけるつもりが世界全体にかけてしもうた。まぁ、いいか』とか言ってた気がするけど、気のせい気のせい、忘れよう」
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