百々五十六の小問集合

百々 五十六

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まだまだ童貞、まだ童貞 (未完)

体育館倉庫のムフフ

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体育倉庫でハプニング

 みんな一度は妄想をしたことがあるのではなかろうか?

 俺はある。1度と言わず何度も!!

 そんな待望のシチュエーションを前にしたら、人はどうなると思う?



 答えは、盛大に、テンパる。

 そして、盛大にチキンになるのだ。

 据え膳なんて食えてたら、童貞なんてとっくに卒業しているわ!


 あぁ、戻ってこいあの時よ。

 もう一度来たならば、次こそは卒業してやる。

「数少ないチャンスを無駄にしてしまうから童貞なんだよ」

 どこからか、痛いところを突くような言葉が聞こえてきた気がするけどきっと勘違いであろう。

 公開はこの程度で終わらせて、今日のことを振り返ろうではないか。

 ベッドにダイブし、悶々としながら今日あったことを思い出した。





 6時間目の終わり、体育館倉庫の掃除を友人に押し付けられた俺は、黙々と授業で使ったボールの片付けをしている。

 その横では、クラスの癒しである斎藤瑞希が、可愛らしく「よいしょ。よいしょ」と言いながら用具の片付けをしていた。

「風斗くんそっちはどう?もう終わりそう?ちなみに、私の方はもう終わったよ」

 眩しい笑顔で語りかけてくる。

 意識だけそちらに向けて作業をしていたのだが、意識が持っていかれそうなほどの可愛さであった。

「こっちはもう少しで終わるよ。だから、先に教室に合えって大丈夫だよ」

 若干早口になってしまったかもしれない。俺はもはやそれどころではなかった。

 さっきは、彼女の笑顔が眩しすぎて気づかなかったけれど、俺は、さっき斎藤瑞希に話しかけられていたことをやっと認識した。

 彼女に話しかけられただけで、心臓が先ほどの体育の時間の時よりバクバクとしている。

「じゃあお先にー」

 そう言ってドアノブに手をかける斎藤。

 しかし、一向に外に出ていかなかった。

「あれれ?なんかドアが開かないんだけど」

 静寂の中、ドアノブのガチャガチャという音だけが響いている。

 しばらくして諦めたのか、斎藤はマットに腰掛けた。

 斎藤に意識を向けながらもきちんと作業をしていたため、俺の分担だったボール整理も無事終了した。

 マットの方へ視線を向けると、斎藤と目があってしまった。

 今までで一番の反射神経で顔をそらした。




 斎藤はマットの上で足をブラブラしているのか、時々靴がマットに当たるような音だけが聞こえてくる。

 手持ち無沙汰になったので、俺はひたすら体育館倉庫内にある備品を眺めていた。

 すると、突然背後の斎藤から話しかけられた。

「ねえ、風斗くん仕事終わったんでしょ?誰かが助けに来てくれるまでお話でもしない?」

 とてつもなく魅力的な提案に、首を縦にふることで答える。

 後ろを振り返り、斎藤のいるマットの方へと一歩々々進んでいく。

 右手と右足が同時に出ている自覚はあったが、それを治すような余裕はなかった。

 斉藤さんがいるところから三人分間隔を空けてマットに座る。

「話って何するの?」

 緊張でまともに頭が回らなくて、頭の中の一番上にあったことをそのまま口に出した。

「雑談、雑談そんな緊張しなくてもいいよ。リラックス、リラックス」

 緊張が斎藤にも伝わっていたようで、落ち着いた口調で斎藤がリラックスを促してくる。

 しかし、斎藤が俺のことを気にかけてくれたという事実で、また体をこわばらせる。

「スマホで助けって呼べないの?今、スマホ持ってないの斉藤さん?」

「体育だったから、教室においてきちゃった。風斗くんはスマホある?」

 質問が帰ってきて、先に言っておけばよかったと後悔する。

「今日朝急いでいて、家にスマホ忘れてきちゃったんだよ。ははっ」

 変な間で話してしまい、終いには意味の分からない笑いまでしてしまった。

 どうしよう、引かれないかな?大丈夫かな?

「そうなんだ。一日スマホないって大変じゃないの?」

 斎藤の心配した顔を見て、先ほどまでの自分が考えていたことが、酷くあさましく感じた。

 やっぱり、斎藤は優しいな。

 馬鹿だな俺。斎藤がそんな、人に引くとかないだろ。クラスの癒しだぞ。

「割と大丈夫だよ。学校でスマホって、ゲーム以外あまりやることなくない?」

「確かに、ゲーム以外ってやることないね!!」

 驚いた顔をする斎藤。

 本当に斎藤は表情が豊かだと感心する。

「話を戻すけど、誰かが様子を見に来るまではこのままってこと?」

「そう。だから時間もあるだろうから、今まであまり話したこともなかったし、お話しようと思ったの!!どう?緊張取れてきた?表情がさっきよりだいぶ柔らかくなったよ」

「斉藤さんのお陰で、緊張がほぐれたよ。ありがとう」

 斎藤は、大げさに首を横に振り答えた。

「ぜんぜん大丈夫だよ。そんな、私のおかげだなんてそんなことはないよ。風斗くんが話題をくれたおかげだよ、それは」

 謙遜がすぎるんじゃないだろうか?

「風斗くんって何部なの?」

「話題、飛んだね。俺は、メディア文芸部だよ」

「メディア文芸部なんだー。メディア文芸部って、光輝がいるとこだよね?」

「そうだよ。部長は上条先輩だよ。上条先輩を知ってるの?」

 意外な名前が出てきたから、思わず質問を返す。

「光輝はね、従兄弟なんだよね」

「へー。従兄弟なんだ。上条先輩から聞いたことがなかった」

 意外な情報に素直に感心する。

「光輝からね、面白い後輩がいる、って聞いてるんだけど、もしかして風斗くんだったりする?」

「自己申告で面白い、ってだいぶハードルの高い質問だけど、多分それ俺だわ。だって、メディア文芸部って、俺と上条先輩しかいないから」

 その後、本当に他愛もない話を小一時間ほどし続けた。

 手が触れ合ったり、見つめ合って沈黙が続いたりなど様々なことがあった。

 話していくうちに、段々と斎藤が俺の方によってきた。寄ってきた分だけ更にずれると、今度はその二倍詰めてきたので、早々に離れるのは諦めた。

 肩が触れるような距離に斎藤がいるとか、心臓に悪くて仕方ない。





 突然、斎藤がぶっ込んだ質問をしてきた。

「風斗くんって、誰か好きな人いないの?」

 突然のことで、パニックになってしまった。

「あー、そういえば、俺まだドア開けるの試してないわ。もしかしたら、俺がやったら開くかもだからやってみよう!!あ、ははっ」

 そう言っておもむろに立ち上がり、急に立ったから少しふらついた足取りでドアまで行き、ドアノブに手をかけた。

 ガチャッ。


 想像の数倍軽くドアが開いた。



「えっ?」

 思わず口からこぼれた?

 今の俺の困惑をすべて詰め込んだように、口から出ていった。

 それと同時に、斎藤に疑念の目を向ける為振り返る。

「私には好きな人がいるの。



       君     」




「えっ??!!」

 困惑に驚きが乗り更に大きく口から漏れた。

 脳が情報の処理を全くせずにショートしてしまった。

「ねえ、私は、君と話すためにこんな嘘をついちゃうような女だけれど、それでも君が好きなの。だから、私といいことしない?体育館倉庫のマットの上。一度は妄想したことあるんじゃない?」

 艶のある声で、蠱惑的な表情で、斎藤がこちらを見つめてくる。

 少し体操服の首元を引っ張り、斎藤の癒やしの部分が顔を出そうとしている。

 反射で顔をそらした。



 長い沈黙の末、正気を取り戻した脳が誤作動した。




 俺はドアへ全力ダッシュをしていた。


「今は遠慮しまーーーーーす。告白はちょっと考えさせて~~~~~~~~~」

 叫びながら体育館倉庫から俺は出ていった。

 一度だけ振り返り斎藤の顔を見ると、耳まで真っ赤であった。

 そんなに恥ずかしいなら無理しなきゃいいのに。






 このことはもう、悔やんでも悔やみきれない。

 あぁ、明日どんな顔で斎藤と顔をあわせればいいのかな?

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