純愛Lovers

らいねこ

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5日目

5日目 2

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大弛はそんな2人をオロオロと心配そうにみていたが、少し経ってから授業を受けに行った。


天と二人きりだが、外に出ることも出来ない。


何回か、天に『愁の容態だけ聞きに行きたい』、『授業だけ受けたい』と言ったが相手にされなかった。


(なんで、連絡先を交換しなかったんだろう…)


今となっては、悔やまれた。


生徒会室に行けば会えるから、何も考えていなかった。


その度に泣いて、天を困らせているのもわかってはいたが、どうすることも出来ない。


(愁が心配…)


お昼過ぎに大弛が食堂でご飯を持って来たが、咲は朝もお昼も食べれなかった。


天が『食べろ』と言われても、食べ物が喉を通らない。


ただひたすら、テストの為に勉強をしていた。




3時過ぎに突然、ドアをノックする音が聞こえた。


天が警戒してドアを開けると、颯人が立っていた。


「副会長…」


颯人は部屋に入り、咲と天を見た。


颯人は淡々としていた。


「咲に頼みごとがあって来たけど…酷い顔だな」


「あの!愁は?!」


咲は、気になっていたことを聞いた。


颯人は何か言いたそうな顔をしたが、答えてくれた。


「…愁は病院にいるけど、今日帰ってくるよ。傷は少しだけ跡は残るけど、本人は元気だし」


それを聞いて咲は涙が溢れる。


颯人は咲の頭を撫でた。


「良かったっ!」


(愁が無事だった!!)


咲が泣いているのを見るのが辛いのか、天は颯人に言った。


「自分は少し席を外します。2時間位で帰ってくるので、咲をくれぐれも外に出さないで下さい」


「…あぁ、わかった」


天はそう言うと、ドアを静かに閉めて行った。


「…咲、この前の寸法で服を作ったんだけど、仮縫いしたいんだ」


颯人は持ってた袋から、白い柔らかい布を取り出した。


「…はい!」


咲は涙を拭いて、颯人と向き合う様に立ち上がった。



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