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第四章 突然の別れ
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コンとシュエイインの家に行けなくなってからしばらく経って、下界のようすを見に行っていた黄竜お姉さんが、帰ってきてから私にこう言った。
「シャオロン、もうあのあやかしの家に行ってもいいですよ」
「ほんとに?」
この頃は私も言葉をしゃべれるようになった。そう、鳴くことしかできなかった私が話せるようになるほどの間、あのふたりに会っていなかったのだ。
だから、コンとシュエイインのところに行って良いと言われてうれしかった。
でも、少し気になることがあった。人間があのふたりのところにいる間はあの家に行ってはいけないと言われていたのだけれども、シュエイインのお嫁さんはどうなったのだろう。
私が不思議に思っていると、黄竜お姉さんはこう言った。
「あやかしの所にいた人間は寿命を迎えて土に還りました。だから、もう行って良いですよ」
「寿命……」
それを聞いて、少し残念に思った。シュエイインのお嫁さんとも仲良くなれると思っていたからだ。
でも、寿命を迎えてしまったものはしかたがない。私は気持ちを取り直して、雲の宮を出た。
コンとシュエイインの家に行くと、家の側に前まではなかった大きな石が置かれていた。あれはなんだろうと思いながら、家の中に声を掛ける。
「コン、シュエイイン、ひさしぶり!」
すると、家の中からコンが出て来てにっこりと笑う。
「久しぶり、シャオロン。
しばらく見なかったけどどうしてたんだ?」
「あのね、人間がいる間はここに来ちゃだめってお兄さんとお姉さんに言われたの」
「あー、それもそうか」
納得したようにそう言ったコンが、手招きをして私を家の中に入れる。すると、落ち込んだ顔をしたシュエイインが、食台の側の椅子に座っていた。
「どうしたのシュエイイン、元気ないよ?」
私がそう声を掛けると、シュエイインは私の方を見て寂しそうに笑った。
「お嫁さんがいなくなって、寂しくて」
「そう……」
相手が人間とはいえ、お嫁さんだったのだからやっぱりいなくなると寂しいんだ。
「私も、お嫁さんと仲良くなりたかった」
私がそう言うと、シュエイインは倚子から立ち上がって家の外に向かう。
「それなら、お墓に挨拶していってよ。
きっとよろこんでくれるよ」
それを聞いて私は気づいた。あの家の前にあった大きな石は、お嫁さんのお墓だったんだ。
シュエイインとコンと一緒に、お嫁さんのお墓の前に行く。でも、私はどうしたらいいのかわからなかった。
それから、私はまたコンとシュエイインの家に行くようになった。シュエイインはお嫁さんがいなくなって寂しいってずっと言ってるけれど、私が遊びに行くと、少しだけ楽しそうにした。
ある日のこと、私はシュエイインに訊ねた。
「また、お嫁さんに会いたい?」
すると、シュエイインはすぐに答える。
「もちろん、会いたいよ」
私は知っている。人間は土に還っても、また生まれ変わって来るということを。だから私はシュエイインにこう言った。
「お嫁さんも、きっとまた生まれ変わってくるから。探せばまた会えると思うの」
「……そうだね、探しに行きたいな」
それを聞いたコンが、シュエイインに言う。
「兄ちゃん、また旅に出る気か?」
シュエイインはぽつりと答える。
「わかんない」
その呟きは、すごく悲しそうだった。
それからまたしばらく、私はあのふたりの家に何度も通った。今日もまた、コンのおいしいお菓子を食べるんだと、シュエイインを元気づけるんだと、何度も通った。
そんなある日のこと、ふたりの家に行くと声を掛けても誰も出てこなかった。
悪いかなと思いながらこっそり家の中に入っても誰もいない。どこかに出かけてるのかと思って山の中を探し回ってもどこにもいない。もしかしたら、人間の所に行ってるのかもしれないと、夜になるまで家の前で待った。
でも、あのふたりは帰ってこなかった。
どこに行ってしまったのだろう。もしかして人間に捕まって食べられてしまったのだろうか。泣きそうになりながらぐるぐると山の中を巡っていると、突然花の甘い香りがした。
もしかしたら、コンが花を使ってどこかでお菓子を作ってるのかもしれない。そう思って匂いの方へと向かって行く。
匂いは山の頂上の方から漂ってきていた。そして山の頂上近くまで行くと、橙色の小さな花に埋もれて、コンとシュエイインが池にの中に浸かっていた。
「どうしたの? ふたりともなにをしてるの?」
私がそう訊ねても、コンもシュエイインもなにも言わない。こんなところで眠ってしまったのだろうか。体を悪くしてしまわないだろうかと心配していると、突然後ろから声がした。
「そのふたりは、人間になるためにこれから生まれ変わるの」
「えっ?」
おどろいて振り返ると、そこには時々赤竜お姉さんから話しに聞いていた仙女が立っていた。
私は仙女に訊ねる。
「コンとシュエイインが人間になるって、どういうこと?」
すると仙女はこう答えた。
「そのあやかしは、お嫁さんだった人間と同じ寿命で、同じ輪廻に入って生きることを選んだの。弟君もね」
それを聞いて、涙がぼろぼろとこぼれてきた。
どうして私を置いて人間になんてなってしまうの? なんでわざわざ寿命のあるものになんてなるの?
私のこと、お嫁さんにしてくれるって言ったのに。
「シャオロン、もうあのあやかしの家に行ってもいいですよ」
「ほんとに?」
この頃は私も言葉をしゃべれるようになった。そう、鳴くことしかできなかった私が話せるようになるほどの間、あのふたりに会っていなかったのだ。
だから、コンとシュエイインのところに行って良いと言われてうれしかった。
でも、少し気になることがあった。人間があのふたりのところにいる間はあの家に行ってはいけないと言われていたのだけれども、シュエイインのお嫁さんはどうなったのだろう。
私が不思議に思っていると、黄竜お姉さんはこう言った。
「あやかしの所にいた人間は寿命を迎えて土に還りました。だから、もう行って良いですよ」
「寿命……」
それを聞いて、少し残念に思った。シュエイインのお嫁さんとも仲良くなれると思っていたからだ。
でも、寿命を迎えてしまったものはしかたがない。私は気持ちを取り直して、雲の宮を出た。
コンとシュエイインの家に行くと、家の側に前まではなかった大きな石が置かれていた。あれはなんだろうと思いながら、家の中に声を掛ける。
「コン、シュエイイン、ひさしぶり!」
すると、家の中からコンが出て来てにっこりと笑う。
「久しぶり、シャオロン。
しばらく見なかったけどどうしてたんだ?」
「あのね、人間がいる間はここに来ちゃだめってお兄さんとお姉さんに言われたの」
「あー、それもそうか」
納得したようにそう言ったコンが、手招きをして私を家の中に入れる。すると、落ち込んだ顔をしたシュエイインが、食台の側の椅子に座っていた。
「どうしたのシュエイイン、元気ないよ?」
私がそう声を掛けると、シュエイインは私の方を見て寂しそうに笑った。
「お嫁さんがいなくなって、寂しくて」
「そう……」
相手が人間とはいえ、お嫁さんだったのだからやっぱりいなくなると寂しいんだ。
「私も、お嫁さんと仲良くなりたかった」
私がそう言うと、シュエイインは倚子から立ち上がって家の外に向かう。
「それなら、お墓に挨拶していってよ。
きっとよろこんでくれるよ」
それを聞いて私は気づいた。あの家の前にあった大きな石は、お嫁さんのお墓だったんだ。
シュエイインとコンと一緒に、お嫁さんのお墓の前に行く。でも、私はどうしたらいいのかわからなかった。
それから、私はまたコンとシュエイインの家に行くようになった。シュエイインはお嫁さんがいなくなって寂しいってずっと言ってるけれど、私が遊びに行くと、少しだけ楽しそうにした。
ある日のこと、私はシュエイインに訊ねた。
「また、お嫁さんに会いたい?」
すると、シュエイインはすぐに答える。
「もちろん、会いたいよ」
私は知っている。人間は土に還っても、また生まれ変わって来るということを。だから私はシュエイインにこう言った。
「お嫁さんも、きっとまた生まれ変わってくるから。探せばまた会えると思うの」
「……そうだね、探しに行きたいな」
それを聞いたコンが、シュエイインに言う。
「兄ちゃん、また旅に出る気か?」
シュエイインはぽつりと答える。
「わかんない」
その呟きは、すごく悲しそうだった。
それからまたしばらく、私はあのふたりの家に何度も通った。今日もまた、コンのおいしいお菓子を食べるんだと、シュエイインを元気づけるんだと、何度も通った。
そんなある日のこと、ふたりの家に行くと声を掛けても誰も出てこなかった。
悪いかなと思いながらこっそり家の中に入っても誰もいない。どこかに出かけてるのかと思って山の中を探し回ってもどこにもいない。もしかしたら、人間の所に行ってるのかもしれないと、夜になるまで家の前で待った。
でも、あのふたりは帰ってこなかった。
どこに行ってしまったのだろう。もしかして人間に捕まって食べられてしまったのだろうか。泣きそうになりながらぐるぐると山の中を巡っていると、突然花の甘い香りがした。
もしかしたら、コンが花を使ってどこかでお菓子を作ってるのかもしれない。そう思って匂いの方へと向かって行く。
匂いは山の頂上の方から漂ってきていた。そして山の頂上近くまで行くと、橙色の小さな花に埋もれて、コンとシュエイインが池にの中に浸かっていた。
「どうしたの? ふたりともなにをしてるの?」
私がそう訊ねても、コンもシュエイインもなにも言わない。こんなところで眠ってしまったのだろうか。体を悪くしてしまわないだろうかと心配していると、突然後ろから声がした。
「そのふたりは、人間になるためにこれから生まれ変わるの」
「えっ?」
おどろいて振り返ると、そこには時々赤竜お姉さんから話しに聞いていた仙女が立っていた。
私は仙女に訊ねる。
「コンとシュエイインが人間になるって、どういうこと?」
すると仙女はこう答えた。
「そのあやかしは、お嫁さんだった人間と同じ寿命で、同じ輪廻に入って生きることを選んだの。弟君もね」
それを聞いて、涙がぼろぼろとこぼれてきた。
どうして私を置いて人間になんてなってしまうの? なんでわざわざ寿命のあるものになんてなるの?
私のこと、お嫁さんにしてくれるって言ったのに。
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