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第十九章 あしげく通う掲示板
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日差しは眩しいながらも、秋の風が吹き始めた頃、悠希は全く日に焼ける事も無く、引き篭もり生活をしていた。
この所、悠希はずっとパソコンの前に釘付けでインターネットをやっている。そんな様子が二週間近く続き、今までとは違う悠希のネット中毒気味に、鎌谷は焼酎サーバーで寝かせて置いた芋焼酎を飲みながら考えを馳せた。何度も何度も同じページを見ては、悩んだり照れたり喜んだりしていて、明らかに悠希の様子がおかしい。余りプライベートな事に触れないようにしようと、煙草をふかしたり酒を飲んだりして気にしない様努力をしていたのだが、流石にこの調子がずっと続くと日常生活に支障が出て不味い。
そう思った鎌谷は、悠希に訊ねた。
「おめーここんとこ挙動不審だぞ。何かあったのか?」
すると悠希は照れながら、パソコンの画面を指さして言う。
「最近メンタルヘルス系のサイトで知り合った子と仲良くなって、そこの掲示板で良く話してるんだ」
「ほう、そーか、それは良かったな」
新しい友人が出来たのは良いことだ。けれども鎌谷に、一抹の不安が芽生える。それに気づかず悠希は言葉を続ける。
「その子もアクセサリー作ったりとかしてて、話も合うんだよね。
それで、今度会ってみようかっていう話になったんだ」
「待て、その子と仲良くなってからどれぐらい経つんだ? ネット甘く見てると痛い目見るぞ」
インターネットは便利な反面、相手の顔が見えないため色々な危険を伴う。法律の整備もまだ整っているとは言い難いので、インターネットでのやり取りは、基本的に自己責任に自己防衛だ。警戒心を隠せない鎌谷とは対照的に、悠希は平然と話を続ける。
「実際に掲示板で話をする様になったのはここ一ヶ月位だけど、相手の子の方が前に有った即売会の時、僕の所で買い物していったらしいんだよ。
だから会っても大丈夫かなって……」
悠希の言い分に鎌谷も納得する。
「まあ、会うんだったら万が一に備えて俺も付いてくよ。
お前になんか有ったら、俺、飯食えねーし」
「そうだよね、鎌谷くん自分で犬缶開けられないもんね」
「うるせーよ」
暫く話している内に、ふと悠希が不安そうな表情になった。
「でも、会うのは良いけど、僕何か拙いこと言っちゃったりしないかなぁ……」
「あ? なんでだ?」
「あのね、今度会う予定の子、七海さんって言うんだけど、乖離性同一性障害なんだ。
この症状の人は今まで直接話したこと無いから、タブーとかそう言うの解らなくて……」
乖離性同一性障害と言うのは、一般的に多重人格と呼ばれている症状だ。
「多重人格か、そいつぁー難しいな。俺範疇外でわかんね。でもまあ、今までネット上で会話してて問題なかったんだったら、今まで通りで良いんじゃね?」
「うん……そうだね……」
やはり悠希の心の中に有る不安は拭いきれない様子。余り暗い顔をさせておくのもどうかと思った訳ではなく、単純に気になった事を鎌谷が訊ねる。
「で、何時会うことになってんだ?」
「ああ、今週の土曜日に浅草橋駅の東口で待ち合わせ」
そう答えながら悠希は待ち合わせの時間をメモして、パソコンに張る。
すると突然、鎌谷が万年床の上でのたうち回り始めた。
「どうしたの鎌谷くん!」
「腹減った~。もう限界。もう待てねぇ」
酒臭い息を吐きながら、夕飯の催促をする。
「一体どれだけお酒飲んだの?しらふだと思ってたら完全に酔っぱらってるよ!」
このまま布団に抜け始めた夏毛を擦り付けられては堪らないので、悠希は慌てて犬缶の準備をした。
この所、悠希はずっとパソコンの前に釘付けでインターネットをやっている。そんな様子が二週間近く続き、今までとは違う悠希のネット中毒気味に、鎌谷は焼酎サーバーで寝かせて置いた芋焼酎を飲みながら考えを馳せた。何度も何度も同じページを見ては、悩んだり照れたり喜んだりしていて、明らかに悠希の様子がおかしい。余りプライベートな事に触れないようにしようと、煙草をふかしたり酒を飲んだりして気にしない様努力をしていたのだが、流石にこの調子がずっと続くと日常生活に支障が出て不味い。
そう思った鎌谷は、悠希に訊ねた。
「おめーここんとこ挙動不審だぞ。何かあったのか?」
すると悠希は照れながら、パソコンの画面を指さして言う。
「最近メンタルヘルス系のサイトで知り合った子と仲良くなって、そこの掲示板で良く話してるんだ」
「ほう、そーか、それは良かったな」
新しい友人が出来たのは良いことだ。けれども鎌谷に、一抹の不安が芽生える。それに気づかず悠希は言葉を続ける。
「その子もアクセサリー作ったりとかしてて、話も合うんだよね。
それで、今度会ってみようかっていう話になったんだ」
「待て、その子と仲良くなってからどれぐらい経つんだ? ネット甘く見てると痛い目見るぞ」
インターネットは便利な反面、相手の顔が見えないため色々な危険を伴う。法律の整備もまだ整っているとは言い難いので、インターネットでのやり取りは、基本的に自己責任に自己防衛だ。警戒心を隠せない鎌谷とは対照的に、悠希は平然と話を続ける。
「実際に掲示板で話をする様になったのはここ一ヶ月位だけど、相手の子の方が前に有った即売会の時、僕の所で買い物していったらしいんだよ。
だから会っても大丈夫かなって……」
悠希の言い分に鎌谷も納得する。
「まあ、会うんだったら万が一に備えて俺も付いてくよ。
お前になんか有ったら、俺、飯食えねーし」
「そうだよね、鎌谷くん自分で犬缶開けられないもんね」
「うるせーよ」
暫く話している内に、ふと悠希が不安そうな表情になった。
「でも、会うのは良いけど、僕何か拙いこと言っちゃったりしないかなぁ……」
「あ? なんでだ?」
「あのね、今度会う予定の子、七海さんって言うんだけど、乖離性同一性障害なんだ。
この症状の人は今まで直接話したこと無いから、タブーとかそう言うの解らなくて……」
乖離性同一性障害と言うのは、一般的に多重人格と呼ばれている症状だ。
「多重人格か、そいつぁー難しいな。俺範疇外でわかんね。でもまあ、今までネット上で会話してて問題なかったんだったら、今まで通りで良いんじゃね?」
「うん……そうだね……」
やはり悠希の心の中に有る不安は拭いきれない様子。余り暗い顔をさせておくのもどうかと思った訳ではなく、単純に気になった事を鎌谷が訊ねる。
「で、何時会うことになってんだ?」
「ああ、今週の土曜日に浅草橋駅の東口で待ち合わせ」
そう答えながら悠希は待ち合わせの時間をメモして、パソコンに張る。
すると突然、鎌谷が万年床の上でのたうち回り始めた。
「どうしたの鎌谷くん!」
「腹減った~。もう限界。もう待てねぇ」
酒臭い息を吐きながら、夕飯の催促をする。
「一体どれだけお酒飲んだの?しらふだと思ってたら完全に酔っぱらってるよ!」
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