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第十三章 飛行機の中で
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五月に入り、悠希は今、父と共に飛行機の中に居る。アトランティス大陸まで宝石の買い付けに行く為である。もう二人とも飛行機は慣れたもので、エコノミークラスの狭い座席でそれぞれ適当に時間を潰している。
ふと、ノートパソコンと睨めっこをしていた父が、同じ様にノートパソコンと睨めっこをしている悠希に話しかける。
「そういえば、聖史から話聞いたかな?」
「え? 何の?」
突然出てきた姉の名に、液晶画面から視線を上げ、父を見る。
「いや、この前衆議院が解散して、また選挙することになっただろ」
「あ、うん。ニュースでちょっと見たよ」
「聖史がね、今度立候補するらしいんだよ」
「ええ! お姉ちゃんが?」
大日本帝國では衆議院が解散したら、四十日以内に総選挙をしなくてはならないと言う法律がある。その総選挙に聖史が出馬するというのだ。二人がそんな話をしている間にも、飛行機は着陸態勢に入る。二人は慌ててノートパソコンをしまい、ベルトを装着した。
長時間空を飛んでいた飛行機が無事目的地の空港に着陸し、乗客それぞれが飛行機から降りる準備をする。機体の先頭の方から降りて行き、エコノミークラスの乗客も降り始めた。皆椅子から離れる際に、座席に敷いてあった液体クッションを持って行く。
中に入っている液体は、白く硬い物と、半透明のサラサラした物に分離している。これは一体何かというと、水が貴重なアトランティス大陸に向かう機体では、クッション兼降りた後の水分補給用として牛乳の入ったクッションが乗客全員に渡される。
長時間その上に座っていると、いい具合に水分と栄養分が分離・発酵し、チーズと馬乳酒が出来上がるのだ。馬乳酒は酒と名前は付いている物の、アルコール度数が非常に低い為、アトランティス大陸ではお子様からお年寄りまで、水代わりに飲んでいる。
機内で配布される牛乳は、航空会社によっては山羊乳だったり、羊乳だったりする。
「わーい、いい具合にチーズになってる」
飛行機から降り、旅行鞄が飛行機から降ろされるのを待つ間、悠希が牛乳の発酵具合を見て喜んでいる。悠希はこうやって出来たチーズが好物なのだ。嬉しそうに牛乳クッションを抱える悠希を見て、父が安心したような笑みを浮かべる。
暫く待っていると、ベルトコンベアーの上に乗っかり、悠希達の荷物が運ばれてきた。目の前に着た瞬間を見計らい、大きなトランクをベルトコンベアーから下ろした。父は早速、トランクの蓋を固定していたベルトを外し、トランクを開ける。すると中から鎌谷が凍えながら出てきた。
「ぅ~あ、寒かったぁ~」
身体をぶるっと震わせた鎌谷に、悠希と父が声を掛ける。
「当たり前だよ鎌谷くん。飛行機の貨物部分は氷点下なんだよ!」
「良く生きてたねぇ」
心なしか鎌谷の毛が結露を起こしている気がする。
「使い捨て懐炉持ってて正解だったな」
「懐炉一個で乗り切ったの?」
「ほらほら二人とも。早くホテルまで行くよ。明日早いからね」
急かす父に付いていこうと歩き出すが、鎌谷は凍えてしまって上手く歩けない。
仕方がないので悠希が鎌谷を抱えて歩くことにした。
ふと、ノートパソコンと睨めっこをしていた父が、同じ様にノートパソコンと睨めっこをしている悠希に話しかける。
「そういえば、聖史から話聞いたかな?」
「え? 何の?」
突然出てきた姉の名に、液晶画面から視線を上げ、父を見る。
「いや、この前衆議院が解散して、また選挙することになっただろ」
「あ、うん。ニュースでちょっと見たよ」
「聖史がね、今度立候補するらしいんだよ」
「ええ! お姉ちゃんが?」
大日本帝國では衆議院が解散したら、四十日以内に総選挙をしなくてはならないと言う法律がある。その総選挙に聖史が出馬するというのだ。二人がそんな話をしている間にも、飛行機は着陸態勢に入る。二人は慌ててノートパソコンをしまい、ベルトを装着した。
長時間空を飛んでいた飛行機が無事目的地の空港に着陸し、乗客それぞれが飛行機から降りる準備をする。機体の先頭の方から降りて行き、エコノミークラスの乗客も降り始めた。皆椅子から離れる際に、座席に敷いてあった液体クッションを持って行く。
中に入っている液体は、白く硬い物と、半透明のサラサラした物に分離している。これは一体何かというと、水が貴重なアトランティス大陸に向かう機体では、クッション兼降りた後の水分補給用として牛乳の入ったクッションが乗客全員に渡される。
長時間その上に座っていると、いい具合に水分と栄養分が分離・発酵し、チーズと馬乳酒が出来上がるのだ。馬乳酒は酒と名前は付いている物の、アルコール度数が非常に低い為、アトランティス大陸ではお子様からお年寄りまで、水代わりに飲んでいる。
機内で配布される牛乳は、航空会社によっては山羊乳だったり、羊乳だったりする。
「わーい、いい具合にチーズになってる」
飛行機から降り、旅行鞄が飛行機から降ろされるのを待つ間、悠希が牛乳の発酵具合を見て喜んでいる。悠希はこうやって出来たチーズが好物なのだ。嬉しそうに牛乳クッションを抱える悠希を見て、父が安心したような笑みを浮かべる。
暫く待っていると、ベルトコンベアーの上に乗っかり、悠希達の荷物が運ばれてきた。目の前に着た瞬間を見計らい、大きなトランクをベルトコンベアーから下ろした。父は早速、トランクの蓋を固定していたベルトを外し、トランクを開ける。すると中から鎌谷が凍えながら出てきた。
「ぅ~あ、寒かったぁ~」
身体をぶるっと震わせた鎌谷に、悠希と父が声を掛ける。
「当たり前だよ鎌谷くん。飛行機の貨物部分は氷点下なんだよ!」
「良く生きてたねぇ」
心なしか鎌谷の毛が結露を起こしている気がする。
「使い捨て懐炉持ってて正解だったな」
「懐炉一個で乗り切ったの?」
「ほらほら二人とも。早くホテルまで行くよ。明日早いからね」
急かす父に付いていこうと歩き出すが、鎌谷は凍えてしまって上手く歩けない。
仕方がないので悠希が鎌谷を抱えて歩くことにした。
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