2 / 7
第二章 おもちゃの下僕とおやつの下僕
しおりを挟む
今日は下僕が朝からずっと家にいて、外に出て行ってない。
いつもこうやっておうちにいてくれたらいいのに。そう思いながらキャットタワーの上で下僕を監視していると。ピンポーンという音が聞こえてきた。
この音が聞こえたっていうことは、他の人間が来たわね。どんな人間が来るかわからないから、下僕が危ない目に遭わないように、下僕と一緒に玄関まで行く。
「いらっしゃい」
そう言った下僕が入り口を開けると、聴き慣れた声で立っている人間が返事をする。
「久しぶり」
「お久しぶりです」
この声は、おもちゃの下僕とおやつの下僕だ!
このふたりはいつも、わたしのおもちゃやおやつを持ってくる、下僕の次の次にお気に入りの下僕たちだ。このふたりなら下僕になにかしたりしないので安心だ。
おもちゃの下僕とおやつの下僕がおうちの中に入ってソファに座ると、下僕が台所から下僕用のごはんを持ってきた。
「恵も愛も昼飯食ってないだろ。
おみみと遊ぶ前に食べとけ」
そう言った下僕がおもちゃの下僕とおやつの下僕にごはんを渡すと、おやつの下僕がうれしそうに言う。
「いつもありがとうございます。
おみみちゃんと遊べる上に、緑君の手料理が食べられるなんて、なんてうれしいんでしょう」
すると、おもちゃの下僕がじとっとおやつの下僕を見てこう言った。
「愛、おまえそういうところだぞ」
「恵君は緑君の手料理になにか不満があるんですか?」
「別に不満はないが……んん……」
おもちゃの下僕とおやつの下僕がお話してると、下僕がおもちゃの下僕の隣に座ってごはんを食べるやつを見せる。
「まあまあ、恵も愛も不満が無いなら食べてくれよ。ちょっと冷めてるけど」
「そうだな。いただきます」
「いただきます」
下僕が声を掛けると、おもちゃの下僕もおやつの下僕もガツガツとごはんを食べる。
すごい勢いでごはんを食べて、ごはん皿が空になったおもちゃの下僕が台所に行ってから、持ってきてた袋からあのシャカシャカおもちゃを出して動かす。
「おみみちゃん、僕と遊ぼう」
遊ぶわ! おもちゃの下僕が持ってくるおもちゃはいつもおもしろい動きをして、追いかけるのが楽しいの。捕まえたらすぐに逃げるんじゃなくて、ちょっとだけ動かなくなってからぱっといなくなるのもおもしろいのよ。
走ったり跳ねたりして一生懸命おもちゃを追いかけてると、急におもちゃの動きがつまらなくなった。
「おみみちゃん、今度は僕と遊びましょう」
なんでかとおもったら、おもちゃの根元をおやつの下僕が持っていた。
おやつの下僕がおもちゃを持ってると、なんでかしらないけどおもちゃがおもしろくない動き方になるの。だからわたしはそっぽを向いてその場に座り込んだ。
「おみみちゃん……どうして……」
なんだかしょぼんとしてるけど、あなたはおやつを持ってきたんでしょう。よこしなさい。と言うと、下僕がおやつの下僕に話し掛ける。
「おやつが欲しいってさ」
「おやつですか! あげてもいいんですか?」
「いいよ。一本だけな」
すると、おやつの下僕は持ってきてた袋から見覚えのある細長い袋を出す。あれはぺろぺろおやつだ。
「おみみちゃん、今日はマグロ味ですよ」
おやつの下僕がぺろぺろおやつを出してくるので舐めると、とってもおいしい味がした。
わたしがおやつを舐めている間、おやつの下僕がわたしの背中を撫でてるけど、いつもおやつをくれている間は撫でさせてあげるようにしている。
あっという間におやつを食べ終わって顔を洗っていると、急におやつの下僕がわたしのことを抱っこしてきた。
なにをするのよ! びっくりしてわたしはおやつの下僕の顔を何度も何度も思いっきり叩く。ほんとうは引っ掻きたいけど、爪を出しちゃダメって下僕にも前の下僕にも言われてるから、爪は出さない。
すると、おやつの下僕がうれしそうな声を出す。
「ありがとうございます!
ありがとうございます!」
どうしてよろこんでるの! なんだか気味が悪くなっておやつの下僕の腕から抜け出して、キャットタワーの上に登る。
キャットタワーの上から監視していると、おもちゃの下僕がおやつの下僕の顔を覗き込んでいる。
「愛、大丈夫か?」
おもちゃの下僕と同じように、下僕もおやつの下僕の顔を見て言う。
「爪を出さないよう躾けてあるから大丈夫だと思うけど、痛いとこ無い?」
「もっと叩かれたかったです」
「大丈夫そうだな」
下僕の安心した顔を見て、おもちゃの下僕がむすっとする。
「僕もおみみちゃんに叩かれたかった」
なんで? なんでそんなにわたしを怒らせたいの?
わたしが不思議に思っていると、下僕がソファから立ち上がってどこかに行った。
すると、おやつの下僕とおもちゃの下僕が顔を見合わせてからわたしのトイレに近寄って、匂いを嗅ぎはじめた。
なにをしているの? わたしの匂いを覚えてなにかするつもりなの? おもわずしっぽがぶわっとなる。
おやつの下僕とおもちゃの下僕はすぐにトイレから離れてまたソファに座る。すると下僕も戻ってきたので、わたしは急いで下僕に今あったことを話す。
「あれ? おみみがたぬしっぽになってるけどなんかあった?」
「いや、なにもしていないですよ」
「おみみちゃん、急にどうしたんだ?」
おやつの下僕もおもちゃの下僕も素知らぬ顔をしている。
どうして……どうしてトイレを……下僕だってあんなことしないのに……
いつもこうやっておうちにいてくれたらいいのに。そう思いながらキャットタワーの上で下僕を監視していると。ピンポーンという音が聞こえてきた。
この音が聞こえたっていうことは、他の人間が来たわね。どんな人間が来るかわからないから、下僕が危ない目に遭わないように、下僕と一緒に玄関まで行く。
「いらっしゃい」
そう言った下僕が入り口を開けると、聴き慣れた声で立っている人間が返事をする。
「久しぶり」
「お久しぶりです」
この声は、おもちゃの下僕とおやつの下僕だ!
このふたりはいつも、わたしのおもちゃやおやつを持ってくる、下僕の次の次にお気に入りの下僕たちだ。このふたりなら下僕になにかしたりしないので安心だ。
おもちゃの下僕とおやつの下僕がおうちの中に入ってソファに座ると、下僕が台所から下僕用のごはんを持ってきた。
「恵も愛も昼飯食ってないだろ。
おみみと遊ぶ前に食べとけ」
そう言った下僕がおもちゃの下僕とおやつの下僕にごはんを渡すと、おやつの下僕がうれしそうに言う。
「いつもありがとうございます。
おみみちゃんと遊べる上に、緑君の手料理が食べられるなんて、なんてうれしいんでしょう」
すると、おもちゃの下僕がじとっとおやつの下僕を見てこう言った。
「愛、おまえそういうところだぞ」
「恵君は緑君の手料理になにか不満があるんですか?」
「別に不満はないが……んん……」
おもちゃの下僕とおやつの下僕がお話してると、下僕がおもちゃの下僕の隣に座ってごはんを食べるやつを見せる。
「まあまあ、恵も愛も不満が無いなら食べてくれよ。ちょっと冷めてるけど」
「そうだな。いただきます」
「いただきます」
下僕が声を掛けると、おもちゃの下僕もおやつの下僕もガツガツとごはんを食べる。
すごい勢いでごはんを食べて、ごはん皿が空になったおもちゃの下僕が台所に行ってから、持ってきてた袋からあのシャカシャカおもちゃを出して動かす。
「おみみちゃん、僕と遊ぼう」
遊ぶわ! おもちゃの下僕が持ってくるおもちゃはいつもおもしろい動きをして、追いかけるのが楽しいの。捕まえたらすぐに逃げるんじゃなくて、ちょっとだけ動かなくなってからぱっといなくなるのもおもしろいのよ。
走ったり跳ねたりして一生懸命おもちゃを追いかけてると、急におもちゃの動きがつまらなくなった。
「おみみちゃん、今度は僕と遊びましょう」
なんでかとおもったら、おもちゃの根元をおやつの下僕が持っていた。
おやつの下僕がおもちゃを持ってると、なんでかしらないけどおもちゃがおもしろくない動き方になるの。だからわたしはそっぽを向いてその場に座り込んだ。
「おみみちゃん……どうして……」
なんだかしょぼんとしてるけど、あなたはおやつを持ってきたんでしょう。よこしなさい。と言うと、下僕がおやつの下僕に話し掛ける。
「おやつが欲しいってさ」
「おやつですか! あげてもいいんですか?」
「いいよ。一本だけな」
すると、おやつの下僕は持ってきてた袋から見覚えのある細長い袋を出す。あれはぺろぺろおやつだ。
「おみみちゃん、今日はマグロ味ですよ」
おやつの下僕がぺろぺろおやつを出してくるので舐めると、とってもおいしい味がした。
わたしがおやつを舐めている間、おやつの下僕がわたしの背中を撫でてるけど、いつもおやつをくれている間は撫でさせてあげるようにしている。
あっという間におやつを食べ終わって顔を洗っていると、急におやつの下僕がわたしのことを抱っこしてきた。
なにをするのよ! びっくりしてわたしはおやつの下僕の顔を何度も何度も思いっきり叩く。ほんとうは引っ掻きたいけど、爪を出しちゃダメって下僕にも前の下僕にも言われてるから、爪は出さない。
すると、おやつの下僕がうれしそうな声を出す。
「ありがとうございます!
ありがとうございます!」
どうしてよろこんでるの! なんだか気味が悪くなっておやつの下僕の腕から抜け出して、キャットタワーの上に登る。
キャットタワーの上から監視していると、おもちゃの下僕がおやつの下僕の顔を覗き込んでいる。
「愛、大丈夫か?」
おもちゃの下僕と同じように、下僕もおやつの下僕の顔を見て言う。
「爪を出さないよう躾けてあるから大丈夫だと思うけど、痛いとこ無い?」
「もっと叩かれたかったです」
「大丈夫そうだな」
下僕の安心した顔を見て、おもちゃの下僕がむすっとする。
「僕もおみみちゃんに叩かれたかった」
なんで? なんでそんなにわたしを怒らせたいの?
わたしが不思議に思っていると、下僕がソファから立ち上がってどこかに行った。
すると、おやつの下僕とおもちゃの下僕が顔を見合わせてからわたしのトイレに近寄って、匂いを嗅ぎはじめた。
なにをしているの? わたしの匂いを覚えてなにかするつもりなの? おもわずしっぽがぶわっとなる。
おやつの下僕とおもちゃの下僕はすぐにトイレから離れてまたソファに座る。すると下僕も戻ってきたので、わたしは急いで下僕に今あったことを話す。
「あれ? おみみがたぬしっぽになってるけどなんかあった?」
「いや、なにもしていないですよ」
「おみみちゃん、急にどうしたんだ?」
おやつの下僕もおもちゃの下僕も素知らぬ顔をしている。
どうして……どうしてトイレを……下僕だってあんなことしないのに……
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
クラゲの魔女
しろねこ。
児童書・童話
クラゲの魔女が現れるのは決まって雨の日。
不思議な薬を携えて、色々な街をわたり歩く。
しゃっくりを止める薬、、猫の言葉がわかる薬食べ物が甘く感じる薬、――でもこれらはクラゲの魔女の特別製。飲めるのは三つまで。
とある少女に頼まれたのは、「意中の彼が振り向いてくれる」という薬。
「あい♪」
返事と共に渡された薬を少女は喜んで飲んだ。
果たしてその効果は?
いつもとテイストが違うものが書きたくて書きました(n*´ω`*n)
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中です!
月神山の不気味な洋館
ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?!
満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。
話は昼間にさかのぼる。
両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。
その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
人形サクラッチに変身した少女サクラのお話
燦一郎
児童書・童話
サクラはアヤちゃんとケンカして学校に行けなくなった。一日中部屋でじっとしている。
「いっそジェニファーのような人形になってしまいたい」
するとジェニファーが声を出した。
「人形の精、マリークリスティーン様ならあなたを人形に変えられるのよ」
サクラは人形に変身し、デパートのショーケースに並べられた。
でも大変なことになった。あのアヤちゃんがやってきて、誕生日のプレゼントにと人形サクラを買ってもらったのだ。
「この人形、サクラちゃんにそっくり」
万事休す。
「まさかアヤちゃんに買われるなんて」
アヤちゃんはその人形に「サクラッチ」と名付けた。
人形は人の心を読む力があり、サクラッチは今まで見えなかったアヤちゃんの気持ちを知った。
それは意外なものだった。
「人間に戻りたい……」
さてサクラッチはどうなるのか。
魔王の飼い方説明書
ASOBIVA
児童書・童話
恋愛小説を書く予定でしたが
魔界では魔王様と恐れられていたが
ひょんな事から地球に異世界転生して女子高生に拾われてしまうお話を書いています。
短めのクスッと笑えるドタバタこめでぃ。
実際にあるサービスをもじった名称や、魔法なども滑り倒す覚悟でふざけていますがお許しを。
是非空き時間にどうぞ(*^_^*)
あなたも魔王を飼ってみませんか?
魔王様と女子高生の365日後もお楽しみに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる