15 / 49
古代の終焉、中世の日ノ本
日ノ本の中世 第五話 腹八分は、「足るを知ること」
しおりを挟む
フンババを滅ぼしたシュメール文明圏は、結果的にレバノン杉だけでなく、大森林を滅ぼし、広大な荒地を中東に誕生させてしまいました。日ノ本に荒地が誕生しなかったのは、フンババを殺さなかったからです。
勇者が魔王を倒して得られるのが、一次的な栄華と荒涼たる大地ならば、勇者と魔王が契りを交わした世界は、豊穣の大地となります。日ノ本は、山神の血を引いて、海神の姫と契りを交わして、里人の始まりとなって、山神や海神を神域として奉る。これが、海幸彦と山幸彦の話となります。
自然との共棲は、水位変化を利用して葦原を活用するように、人々の生活そのものに、徹底した制約を科することになります。目の前の資源を刈り尽くせば、二度と資源を手にすることはできない。欲望に限界を定めることが、資源を有効に活用できることとなる。
葦原中ツ国から、湖面の水位差を利用した、自然の葦原や水田という、再利用可能な資源を創出したのは、葦原という再生利用可能な建材を栽培し、鯉鮒鯰といった魚の生育環境を整えるという養殖技術を発展させたことにあります。
資源を狩り尽くさないというのは、過ぎたる欲を抑えることから始まります。
魚を全部獲り尽くせば、二度と魚は手に入らない。獲物を狩り尽くせば、二度と獲物は手に入らない。明日のために、今日の空腹をこらえる。
「腹八分目」が先人の言葉として伝わります。
「腹八分目に医者いらず」と言って後世に伝えたのは、過ぎたる欲を抑える意味が、一番大きかったのだとお爺ぃは考えます。
<<<<<>>>>>
農業や漁業分野では、再生可能資源を扱うことで、日ノ本では、爆発的な生産量の拡大を迎えたのが、弥生期からの状況となります。大規模な人員動員が可能となり、用水路の確保や治水事業の拡大といった、大規模土木作業を実行することができるようになり、数万人を土木作業に動員しても、食べさせていけるだけの食料を確保することができたのです。
大規模土木作業を実行した結果、治水事業が完了し、開墾した残土を盛り土として古墳を築き、開墾された水田の水位調整を可能とするために、濠を周囲に巡らせたのです。
後期に大規模な治水工事に伴う、稲作が始まった近江は、初期の畿内の後方地域で在り、近江の食料生産量が増加したことで、大和、摂津、和泉、河内、山城、といった畿内に対する、大規模な治水工事、開墾工事を含めた、公共土木事業が展開されることとなります。
しかしながら、弥生期に始まったのは、銅鐸や銅鏡を含めた、金属器の政策であり、地下資源の採掘となります。地下資源は、資源としては厄介で、埋蔵されている資源は有限で在り、採算が取れる採掘量には限界があります。
現在の日ノ本では、資源が無い国と言われますが、元々は資源豊富な国であったのです。
弥生から金属資源を中心として、様々な地下資源を掘り尽くした結果として、徐々に資源が枯渇する国となったのです。皇朝十二銭が、徐々に質が落ちるのは、日ノ本における、銅の採掘量低下とも関係しています。発行しなければならない通貨量に対して、実際に採掘できた量が足りなければ、通貨量は低下していきます。信用取引として通貨量に合わせた、貨幣価値を付加しようとしても、価値の裏付けが無ければ、破綻することは確実となります。
弥生以降、御山の神域は、人の欲に穢されやすくなり、多くの者達が徐々に、神域へ里人の領域が広がるようになっていったのである。
「常陸国風土記」には、足柄の坂を東に行った八国を征して、統治した場所が常陸であり、代々親王を国司補任とした畿内の拠点であった。常陸には、神域である夜刀神の領域と、箭括麻多智の領域で、境界領域を巡る争いが絶えず起きていたことが記されている。さらに、黒坂命と茨城のモノ達とが戦う様子も描かれている。
新たに新田の開発を畿内が行っていくことで、地方でも神域としての山人の領域が削られていく流れがあったのは間違いない。
日ノ本における戦いは、シュメールのギルガメッシュとフンババのような殲滅戦ではなく、領域を削っては社を建立して祀るといった方法であった。結果として、徐々に生活領域が接することで、コミュニケーションが生まれ、共棲できるようになっていった。
常陸には、多くの山人や海人が、夜刀神や鬼、土蜘蛛といった形で住んでいたと記述されている。
日ノ本では、あやかしという形で、神域に住まうモノ達が住んでいたのは間違いない。
勇者が魔王を倒して得られるのが、一次的な栄華と荒涼たる大地ならば、勇者と魔王が契りを交わした世界は、豊穣の大地となります。日ノ本は、山神の血を引いて、海神の姫と契りを交わして、里人の始まりとなって、山神や海神を神域として奉る。これが、海幸彦と山幸彦の話となります。
自然との共棲は、水位変化を利用して葦原を活用するように、人々の生活そのものに、徹底した制約を科することになります。目の前の資源を刈り尽くせば、二度と資源を手にすることはできない。欲望に限界を定めることが、資源を有効に活用できることとなる。
葦原中ツ国から、湖面の水位差を利用した、自然の葦原や水田という、再利用可能な資源を創出したのは、葦原という再生利用可能な建材を栽培し、鯉鮒鯰といった魚の生育環境を整えるという養殖技術を発展させたことにあります。
資源を狩り尽くさないというのは、過ぎたる欲を抑えることから始まります。
魚を全部獲り尽くせば、二度と魚は手に入らない。獲物を狩り尽くせば、二度と獲物は手に入らない。明日のために、今日の空腹をこらえる。
「腹八分目」が先人の言葉として伝わります。
「腹八分目に医者いらず」と言って後世に伝えたのは、過ぎたる欲を抑える意味が、一番大きかったのだとお爺ぃは考えます。
<<<<<>>>>>
農業や漁業分野では、再生可能資源を扱うことで、日ノ本では、爆発的な生産量の拡大を迎えたのが、弥生期からの状況となります。大規模な人員動員が可能となり、用水路の確保や治水事業の拡大といった、大規模土木作業を実行することができるようになり、数万人を土木作業に動員しても、食べさせていけるだけの食料を確保することができたのです。
大規模土木作業を実行した結果、治水事業が完了し、開墾した残土を盛り土として古墳を築き、開墾された水田の水位調整を可能とするために、濠を周囲に巡らせたのです。
後期に大規模な治水工事に伴う、稲作が始まった近江は、初期の畿内の後方地域で在り、近江の食料生産量が増加したことで、大和、摂津、和泉、河内、山城、といった畿内に対する、大規模な治水工事、開墾工事を含めた、公共土木事業が展開されることとなります。
しかしながら、弥生期に始まったのは、銅鐸や銅鏡を含めた、金属器の政策であり、地下資源の採掘となります。地下資源は、資源としては厄介で、埋蔵されている資源は有限で在り、採算が取れる採掘量には限界があります。
現在の日ノ本では、資源が無い国と言われますが、元々は資源豊富な国であったのです。
弥生から金属資源を中心として、様々な地下資源を掘り尽くした結果として、徐々に資源が枯渇する国となったのです。皇朝十二銭が、徐々に質が落ちるのは、日ノ本における、銅の採掘量低下とも関係しています。発行しなければならない通貨量に対して、実際に採掘できた量が足りなければ、通貨量は低下していきます。信用取引として通貨量に合わせた、貨幣価値を付加しようとしても、価値の裏付けが無ければ、破綻することは確実となります。
弥生以降、御山の神域は、人の欲に穢されやすくなり、多くの者達が徐々に、神域へ里人の領域が広がるようになっていったのである。
「常陸国風土記」には、足柄の坂を東に行った八国を征して、統治した場所が常陸であり、代々親王を国司補任とした畿内の拠点であった。常陸には、神域である夜刀神の領域と、箭括麻多智の領域で、境界領域を巡る争いが絶えず起きていたことが記されている。さらに、黒坂命と茨城のモノ達とが戦う様子も描かれている。
新たに新田の開発を畿内が行っていくことで、地方でも神域としての山人の領域が削られていく流れがあったのは間違いない。
日ノ本における戦いは、シュメールのギルガメッシュとフンババのような殲滅戦ではなく、領域を削っては社を建立して祀るといった方法であった。結果として、徐々に生活領域が接することで、コミュニケーションが生まれ、共棲できるようになっていった。
常陸には、多くの山人や海人が、夜刀神や鬼、土蜘蛛といった形で住んでいたと記述されている。
日ノ本では、あやかしという形で、神域に住まうモノ達が住んでいたのは間違いない。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
戦国三法師伝
kya
歴史・時代
歴史物だけれども、誰にでも見てもらえるような作品にしていこうと思っています。
異世界転生物を見る気分で読んでみてください。
本能寺の変は戦国の覇王織田信長ばかりではなく織田家当主織田信忠をも戦国の世から葬り去り、織田家没落の危機を迎えるはずだったが。
信忠が子、三法師は平成日本の人間が転生した者だった…
鬼が啼く刻
白鷺雨月
歴史・時代
時は終戦直後の日本。渡辺学中尉は戦犯として囚われていた。
彼を救うため、アン・モンゴメリーは占領軍からの依頼をうけろこととなる。
依頼とは不審死を遂げたアメリカ軍将校の不審死の理由を探ることであった。
三國志 on 世説新語
ヘツポツ斎
歴史・時代
三國志のオリジンと言えば「三国志演義」? あるいは正史の「三國志」?
確かに、その辺りが重要です。けど、他の所にもネタが転がっています。
それが「世説新語」。三國志のちょっと後の時代に書かれた人物エピソード集です。当作はそこに載る1130エピソードの中から、三國志に関わる人物(西晋の統一まで)をピックアップ。それらを原文と、その超訳とでお送りします!
※当作はカクヨムさんの「世説新語 on the Web」を起点に、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさん、エブリスタさんにも掲載しています。
大陰史記〜出雲国譲りの真相〜
桜小径
歴史・時代
古事記、日本書紀、各国風土記などに遺された神話と魏志倭人伝などの中国史書の記述をもとに邪馬台国、古代出雲、古代倭(ヤマト)の国譲りを描く。予定。序章からお読みくださいませ
居候同心
紫紺
歴史・時代
臨時廻り同心風見壮真は実家の離れで訳あって居候中。
本日も頭の上がらない、母屋の主、筆頭与力である父親から呼び出された。
実は腕も立ち有能な同心である壮真は、通常の臨時とは違い、重要な案件を上からの密命で動く任務に就いている。
この日もまた、父親からもたらされた案件に、情報屋兼相棒の翔一郎と解決に乗り出した。
※完結しました。
明治仕舞屋顛末記
祐*
歴史・時代
大政奉還から十余年。年号が明治に変わってしばらく過ぎて、人々の移ろいとともに、動乱の傷跡まで忘れられようとしていた。
東京府と名を変えた江戸の片隅に、騒動を求めて動乱に留まる輩の吹き溜まり、寄場長屋が在る。
そこで、『仕舞屋』と呼ばれる裏稼業を営む一人の青年がいた。
彼の名は、手島隆二。またの名を、《鬼手》の隆二。
金払いさえ良ければ、鬼神のごとき強さで何にでも『仕舞』をつけてきた仕舞屋《鬼手》の元に舞い込んだ、やくざ者からの依頼。
破格の報酬に胸躍らせたのも束の間、調べを進めるにしたがって、その背景には旧時代の因縁が絡み合い、出会った志士《影虎》とともに、やがて《鬼手》は、己の過去に向き合いながら、新時代に生きる道を切り開いていく。
*明治初期、史実・実在した歴史上の人物を交えて描かれる 創 作 時代小説です
*登場する実在の人物、出来事などは、筆者の見解や解釈も交えており、フィクションとしてお楽しみください
転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜
紫 和春
歴史・時代
二〇二〇年の現代から、一九三六年の世界に転生した八人の若者たち。彼らはスマートフォンでつながっている。
第二次世界大戦直前の緊張感が高まった世界で、彼ら彼女らはどのように歴史を改変していくのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる