琉球お爺いの綺談

日ノ本が危機

日ノ本が危機 モノづくり現場の終焉に向かって

NEWSWEEK　2017/12/19号　読後感想文？　その２

　日ノ本が危機は、アッ〇ルの大旦那ジョ〇スのiPh〇n日本侵攻によって結果的には、壊滅的な打撃を受けたとも言える。亡くなった京都のカルタ屋社長が、「敵は、iPh〇nのみ」と言ったのは、厳然たる事実確認であり、日ノ本が製造業そのものを憂う言葉でもあった。
　様々な形で製造業を含めた業界での軋轢を持っていたために、敵を多く造り過ぎた京都のカルタ屋であったが、社長の死後、ポケモ〇ゴーなどを、スマートフォンのアプリとして産み出すことで、使用者を危険に晒すような悲劇を産み出した京都のカルタ屋は、電子機器を玩具メーカーとして販売してきた玩具メーカーとしての立場は、終焉を迎えてしまったように思える。

　自社工場を持たず、製造現場そのものをリスクとして捉えたことは、シアトルという海外拠点を本店として切り離してしまえば、会社としては京都のカルタ屋へ還ることもできるのであろう。それはそれで、リスクアセスメントとしては、間違った判断ではないかもしれない。
　そういった意味では、面白いマネージメントをする会社であった。プロジェクトには、始まりがあれば終わりがある。だから、プロジェクトマネージメントには、必ず終わりを想定しなければならない。

　京都のカルタ屋から依頼を受けて、ファミ〇ンを製造業として担当した会社には、それがなかったのかも知れない。昭和４０年から液晶の製品化を進め、世界を席巻しながらも、中小企業である自覚に欠けた展開は、非常に悲しい結末を迎えてしまった。

　日ノ本の製造業が持つリスク管理能力は、誠実さを維持できる製造現場が支えていたのだと言える。
　走る戦車を造っていると言われた、某自動車メーカーは、日ノ本のどこのメーカーよりも車体が重かった。重い車体を支えるタイヤの支柱も太かった。だから、軽くすれば燃費が向上するという競争の中で、少しづつ車体が軽くなり、鉄板が薄くなり、アルミが使われるようになると、走る戦車は何時の間にか走るゼロ戦となっていった。
　経営者は、成功しか見ない、成功しか求めない。結果として、現場では、失敗が認められない。
　走る戦車を支えた、タイヤの支柱が、細くなった結果、実験結果はゴミ箱に消え、タイヤを支えた支柱は折れて、タイヤは空を飛んだ。

　第二次世界大戦末期に、品質が劣悪となったのは、材料の確保するための海上輸送ルートが壊滅し、生産現場が壊滅的な爆撃を受けたためである。日ノ本の製造業で現時点で生じているのは、海外へ売るためのルートに、粗悪品が混入して「悪貨が良貨を駆逐し」、生産現場における劣悪な労働環境、成功体験だけを夢見る経営者の「お花畑で花が咲く」脳味噌が、生産現場を壊滅的な爆撃を行って、工場の海外移転や外部委託による一時凌ぎを常態化していったことで、製造業そのモノを空洞化した自爆行為にある。
　この背景には、良いモノを安く求める消費者意識の暴走があった。良いモノを見合った値段で買うのではなく、一円でも安く買おうとする消費者意識の暴走は、結果的には、ダイエ〇の破綻に代表されるような結果を招き、小売り業の二極化を招いた。
　安さには、限界が生じる。外食産業の低価格化競争の激化と破綻、百円ショップと定価販売のコンビニ。背取りすら儲からなくなる、絶版書籍と電子化の流れ、リサイクルショップの限界。そして、低品質を実感した消費者は、或る程度の品質で「良いんじゃねぇ」という考え方を産み出し、アジア品質と呼ばれる低品質化を加速させ、高品質の付加価値は急速に下落していった。

　品質が高いから売れるは、高品質を必要とする買い手が存在しなければ、なんの意味も持たない。
　確かに、使い方によっては、高品質を要求せざる得ないけれど、高品質が要求される製品は、そんなに多いわけでは無いし、テキトー品質であっても、どうにかなることを消費者が自覚してしまった。そして、品質が倍なら、倍の儲けが出るという流れは、歴史から消滅したのである。