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琉球お爺ぃ小話
臨界天01 滅びゆく世界if、ディストピアな未来?
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22世紀かぁ・・・地球環境が破壊されて、日ノ本の元号は変わらなくなった。
日ノ本が終焉を迎える頃に世界は、戦争と環境破壊によって、地球そのものが崩壊していった。
百歳の施設送りが、法的に設立され、子供を家庭ではなく国が育てる形になったのが、22世紀の流れとなった。俺の祖父は、収容所で最期を迎えるのではなく、白寿の年に眠るように死んでいった。
21世紀の始まりに生きた曾祖父が、家訓として伝えたこと、
“「金持ち父さん」を拒絶し、「貧乏父さん」を目指すことが、自分を律する道”
そんな風に語っていた。
土地バブルの狂乱を、4年間の夏休みと大学に入り、はじけた後に就職して、氷河期とか言う流れとなっていた。
ITバブルでは、自分が儲けながら、
「ITで儲けたい人で、儲かる人は1%、だけど、ITで儲けたい人相手ならば、99%が儲かる。本当に、とっても困った、世の中だったよ」
そう言って、嗤っていた。祖母とは、その頃に知り合って、「貧乏父さん」を目指す爺さんと結婚していた。
当時は、もっと儲けられると言われたが、お爺ぃは、
「ははは、無理無理」
そう笑って、手伝い仕事で、時々、十万くらいの講演を、年に二回するくらいで、辞めていた。高額で儲けず、派手に動かず、「貧乏父さん」を目指して、小遣いを稼ぐ。
祖母は、そんなお爺ぃの話を、楽しそうに笑いながら、話してくれた。昭和に生まれ、平成から令和へ時が流れ、四つ目を知る頃、お爺ぃは亡くなった。
お爺ぃは、自分を米領沖縄出身と呼んで、沖縄から本土に来るときは、パスポートが必要だったと良く笑っていた。大阪の大正に住み、環境破壊の話を聞いたのは、子供の頃で、窓を開けると、目の前に海が広がっていたが、汚物やゴミが浮かび、臭くて開けれない日も多く、夏はきつかったと言っていた。
中学から高校の頃、淀川を浄化するそんな話を訊いて、淀川にイタセンパラという魚を戻すんだと、清流だった淀川を求めていた白衣の先生が居た。
「今の淀川が、まだ綺麗なのは、そんな先人達の努力の結果だ。穢すのは簡単で、戻すには数十年の歳月がかかる」
小学校では暑くなる頃、時折、昼休みの太陽光が強くなると、サイレンが鳴り響いて、校庭で遊んでいた子供達が、一斉に校舎へと帰っていった。
「光化学スモッグ、大気も穢れていたんだ」
そんな世界は、平成の頃には無くなっていて、人は皆、そんな世界があったことを歴史の彼方へと、忘れ去っていった。
お爺ぃは、Intelligence、Wisdom、Judgementを理解することと言っていた。
「Intelligence」
事実を記録として、知っていることに意味はなく、知っていることを活かせる能力が無ければならない。
「Wisdom」
事実を記録として、知っているのではなく、事実と知識を体系化し分析できるように、活かせるようにする能力が無ければならない。
「Judgement」
今、現在、発声している状況に対して、IntelligenceとWisdomを連携させて、現実の対応を決定するコト。
「ただ、お前には、難しいじゃろぅ」
お爺ぃの話は、前提の知識がたくさん必要すぎて、良く解らなかった。お爺ぃには、俺が解ってないことも解っていながら、それでも良く話してくれた。
「俺、良く解らないけど、なんで話してくれるの」
「そうじゃな、今、解らないが、明日も、解らないとは違うからだ」
続けるように、
「明日というのは、時間の話ではなく、これから十年二十年と経過して、という将来の話でもある。理解しようと考え続ければ、少しづつ、自分なりに考え続ければ、理解できるようになる」
そう言って、お爺ぃは、笑っていた。
そんなお爺ぃも、白寿で、死んだ。法律改正で、強制的に施設送りとなる前、毒を食事に入れて、死んでいった。祖母は、学者で研究所に勤めて、教授というのをしていて、忙しそうに世界中を巡っている。数年前までは、お爺ぃと一緒に、世界中を旅していたけれど、今は母さんと、出かけている。生き残った人々は、なんとか、人間という種を守ろうと、様々な活動を始めていた。
臨界を突破して、環境破壊が進んだ世界では、海面が十数メートル上昇し、海上近くの都市は、幾つも水没していった。
お爺ぃは、かつての縄文海進が、22世紀を迎える頃に生まれて、現在の状況と似たような状況だったらしい。巨椋や大和は、嵐が吹き荒れる中で、海岸線近くとなった多くの地域は、毎年のように被害を受けて、都市は海中に没するように、高層ビルが林立する柱となり、海上に浮かぶ墓標のように広がっていった。
淡海乃海で、最期を迎えたお爺ぃは、世界そのものが、大きく変わらざるを得ない時代だとそういっていた。淡海乃海は、世界が環境破壊で、汚染され、大気だけでなく、広大な海がヘドロやゴミにまみれ、幾つもの戦争で大地が荒廃し、幾つもの国と町が滅びていく中で、淡海乃海から諏訪に連なる山岳地帯では、最後の自然をなんとか支えていた。
日ノ本の一億を超えた人口も、半数を切ったが、北半球世界の総人口は、戦争と環境破壊によって、30%を切ろうとしていた。南半球の人口は、北半球ほどに、酷い状況ではなかったが、海の汚染拡大によって、地球規模で環境破壊は進み、10%以上の人口を失っていた。
日ノ本が終焉を迎える頃に世界は、戦争と環境破壊によって、地球そのものが崩壊していった。
百歳の施設送りが、法的に設立され、子供を家庭ではなく国が育てる形になったのが、22世紀の流れとなった。俺の祖父は、収容所で最期を迎えるのではなく、白寿の年に眠るように死んでいった。
21世紀の始まりに生きた曾祖父が、家訓として伝えたこと、
“「金持ち父さん」を拒絶し、「貧乏父さん」を目指すことが、自分を律する道”
そんな風に語っていた。
土地バブルの狂乱を、4年間の夏休みと大学に入り、はじけた後に就職して、氷河期とか言う流れとなっていた。
ITバブルでは、自分が儲けながら、
「ITで儲けたい人で、儲かる人は1%、だけど、ITで儲けたい人相手ならば、99%が儲かる。本当に、とっても困った、世の中だったよ」
そう言って、嗤っていた。祖母とは、その頃に知り合って、「貧乏父さん」を目指す爺さんと結婚していた。
当時は、もっと儲けられると言われたが、お爺ぃは、
「ははは、無理無理」
そう笑って、手伝い仕事で、時々、十万くらいの講演を、年に二回するくらいで、辞めていた。高額で儲けず、派手に動かず、「貧乏父さん」を目指して、小遣いを稼ぐ。
祖母は、そんなお爺ぃの話を、楽しそうに笑いながら、話してくれた。昭和に生まれ、平成から令和へ時が流れ、四つ目を知る頃、お爺ぃは亡くなった。
お爺ぃは、自分を米領沖縄出身と呼んで、沖縄から本土に来るときは、パスポートが必要だったと良く笑っていた。大阪の大正に住み、環境破壊の話を聞いたのは、子供の頃で、窓を開けると、目の前に海が広がっていたが、汚物やゴミが浮かび、臭くて開けれない日も多く、夏はきつかったと言っていた。
中学から高校の頃、淀川を浄化するそんな話を訊いて、淀川にイタセンパラという魚を戻すんだと、清流だった淀川を求めていた白衣の先生が居た。
「今の淀川が、まだ綺麗なのは、そんな先人達の努力の結果だ。穢すのは簡単で、戻すには数十年の歳月がかかる」
小学校では暑くなる頃、時折、昼休みの太陽光が強くなると、サイレンが鳴り響いて、校庭で遊んでいた子供達が、一斉に校舎へと帰っていった。
「光化学スモッグ、大気も穢れていたんだ」
そんな世界は、平成の頃には無くなっていて、人は皆、そんな世界があったことを歴史の彼方へと、忘れ去っていった。
お爺ぃは、Intelligence、Wisdom、Judgementを理解することと言っていた。
「Intelligence」
事実を記録として、知っていることに意味はなく、知っていることを活かせる能力が無ければならない。
「Wisdom」
事実を記録として、知っているのではなく、事実と知識を体系化し分析できるように、活かせるようにする能力が無ければならない。
「Judgement」
今、現在、発声している状況に対して、IntelligenceとWisdomを連携させて、現実の対応を決定するコト。
「ただ、お前には、難しいじゃろぅ」
お爺ぃの話は、前提の知識がたくさん必要すぎて、良く解らなかった。お爺ぃには、俺が解ってないことも解っていながら、それでも良く話してくれた。
「俺、良く解らないけど、なんで話してくれるの」
「そうじゃな、今、解らないが、明日も、解らないとは違うからだ」
続けるように、
「明日というのは、時間の話ではなく、これから十年二十年と経過して、という将来の話でもある。理解しようと考え続ければ、少しづつ、自分なりに考え続ければ、理解できるようになる」
そう言って、お爺ぃは、笑っていた。
そんなお爺ぃも、白寿で、死んだ。法律改正で、強制的に施設送りとなる前、毒を食事に入れて、死んでいった。祖母は、学者で研究所に勤めて、教授というのをしていて、忙しそうに世界中を巡っている。数年前までは、お爺ぃと一緒に、世界中を旅していたけれど、今は母さんと、出かけている。生き残った人々は、なんとか、人間という種を守ろうと、様々な活動を始めていた。
臨界を突破して、環境破壊が進んだ世界では、海面が十数メートル上昇し、海上近くの都市は、幾つも水没していった。
お爺ぃは、かつての縄文海進が、22世紀を迎える頃に生まれて、現在の状況と似たような状況だったらしい。巨椋や大和は、嵐が吹き荒れる中で、海岸線近くとなった多くの地域は、毎年のように被害を受けて、都市は海中に没するように、高層ビルが林立する柱となり、海上に浮かぶ墓標のように広がっていった。
淡海乃海で、最期を迎えたお爺ぃは、世界そのものが、大きく変わらざるを得ない時代だとそういっていた。淡海乃海は、世界が環境破壊で、汚染され、大気だけでなく、広大な海がヘドロやゴミにまみれ、幾つもの戦争で大地が荒廃し、幾つもの国と町が滅びていく中で、淡海乃海から諏訪に連なる山岳地帯では、最後の自然をなんとか支えていた。
日ノ本の一億を超えた人口も、半数を切ったが、北半球世界の総人口は、戦争と環境破壊によって、30%を切ろうとしていた。南半球の人口は、北半球ほどに、酷い状況ではなかったが、海の汚染拡大によって、地球規模で環境破壊は進み、10%以上の人口を失っていた。
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