琉球お爺いの綺談

Ittoh

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環境破壊せし未来

名前の消えた女02 Physical Diving Interface

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 人間が生きるために必要な水だけでなく、空気すらも有料になり、金の無い者は、汚染された空気と水で、生きることしかできなくなり、時々綺麗な空気を買い、ミネラルウォーターを手に入れて、喜ぶ生活となっていた。食料として手に入るのは、代替え合成食品であり、工業製品でもが食べられるのは、金持ちであり。貧富の格差は、生活環境の格差となり、生死を分けるくらいに広がっていた。

 いくつもの事故が起き、検体テスタとなった子供達が、施設から消えていった頃、広告が現れるようになった。

  e-Sportsで、新たな時代が、始まる。

 VR[仮想現実:Virtual Reality]とAR[拡張現実:Augmented Reality]が組み込まれ、e-Sportsが広がっていく。身体を動かす場所すらも、金持ちだけの空間となり、狭空間内に限定されるようになった。つまり、電脳空間でしか、スポーツができなくなったのである。

 Physical Diving Interfaceの施術で、貴方には、新たな世界が広がります。

 仮想空間にDivingすることで、自分自身の感覚が、ヴァーチャル世界に拡張され、視覚と聴覚に触覚が仮想世界に拡大されて、新たなスポーツの時代が始まった。

 私がやっていた課外活動は、格闘技とは言っても、合気道で試合が無く、演武という形で表現されていた。演武では、拡張された感覚を認識し、身体機能をVRに適応させることが、要求されていた。人の身体が、どのように動くかを仮想空間内の感覚で認識し、仮想空間内の自分を動かす。
 情報を受け取る感覚器官や動かす身体は、仮想空間内にあって、リアルの自分じゃない、そんな状況に慣れることが要求される。仮想空間内で走っていても、リアルな自分は走っていない。しかしながら、走っているように身体が動いたようにシミュレートされ、水分は消費され、筋肉が疲労する。仮想空間内では、疲労が認識し難く、無理をしてしまって、結果的に事故に繋がる。何人ものクラスメートが、施設から消えていった結果、私が認識できたのは、身体に埋め込まれた機能、<Physical Diving Interface>を把握することだった。

<PDI:Physical Diving Interface>
 約1000万個の疑似脳細胞ナノ・ニューロンで構築された核を脊髄に埋め込み、既存のコンピュータネットワークと接続する、仮想空間内の自分自身となる。VRやARで説明を受けて、Physical Diving Interfaceの大きさは、数ミリ程の粘体であり、脊椎に埋め込まれている。108個の電極を脊髄に装着することで、既存ネットワークとの通信が可能となり、仮想空間内にDivingすることができるようになる。

 課外活動に、麻将マージャンを選んだので、よく施設の子達と課外活動で、楽しんでいた。麻雀と呼ばれることもあるが、健康に留意する競技として、麻将マージャンという考え方が定着し、現在に至っているらしい。スズメを知らない、私には、よく判らない話だ。施設の代表で、大会にでて、勝つことができたのは嬉しかった。海外用のルールもあって、試合によってレギュレーションが変わり、ルールが多いのは結構面倒だが、レギュレーションごとの対応を研究するのは楽しいものだった。

 事故に会うこともなく、活動を続けることができて、施設だけでなく、オンライン上で友達が増えていった。この頃の私は、楽しさが多くて、色々な遊びに興じていた。事故への恐怖はあったけど、慎重な性格であったためか、無事に過ごすことができた。

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