琉球お爺いの綺談

Ittoh

文字の大きさ
上 下
378 / 511
お爺の一考

私は、義経が嫌いです

しおりを挟む
 どうも、義経嫌いの琉球お爺ぃであります。

 とくに悪いことして、嫌いだぁというわけではありませんが、まぁ、なんとなく義経という武将が嫌いです。
 彼の国が、兵法書に武経七書があります。武経七書を和の国へ伝えたのが、鞍馬の鬼一法眼と呼ばれています。また、鬼一法眼は、京八流の祖とも言われ、八人の鞍馬僧侶に闘法を伝えたと言われます。これが、後の京八流を産んだと伝えられております。

 まぁ、武芸については、戦闘技法であるので、魂の在り様はともかくとして、目的が手段を正当化することに対して、一切の制約を受けないことは正しい。
 されど、彼の国が兵書は、戦における制約を待たせていない。
 こういった、彼の国に馴染まない、和の国における戦の在り様に合わせて書かれた兵書が、「闘戦経」となります。

 まぁ、確かに戦争は冷酷無残なものであり、人が人を殺すという異常事態を、普通の常態として認識するという、極限の論理の中で戦うことが肝要ではあります。戦の本質は、ドライであり、殺伐としてはいるものなのです。されど、殺伐とした論理の果てに、倫理を求め、国際法を築き、人が人を殺すという異常事態に対して、どこかで一線を引くという概念を重視することが必要だと思います。

 源平合戦を調べていくと、戦の節々で、源平双方が、戦の終結を模索していたことが浮かび上がってきます。源平双方とも、戦勝の果てに相手の滅亡があり、滅亡させてしまえば、同じように自分も滅亡の道に突き落とされる不安に苛まされるようになります。負けることが怖い、生き残った子らに、今度は自分が狙われる。
 そんな恐怖が、彼の国の兵書と共に、義経の精神を侵食したように思います。平家に敗れた、源氏の子供である自分が生き残り、平家と戦う力を追い求めた先にあったのが、平家の殲滅であったのでしょう。源氏の子である自分ができたことは、平氏の子にもできるかもしれない。
 こんな極限の思いは、結果的に伝染していきます。
 頼朝が、天下を征覇しながらも、義経を追討し、範頼を断罪し、最終的に自分の死後、血族は滅ぶ結果となる。また、頼朝死後、御家人同士の内紛が高じて、味方であった者同士が互いに疑心暗鬼となり、暗闘や陰謀を繰り返して、結果として北条得宗家独裁を招く。最終的には、元寇という究極のドライな外患によって滅びる。
 こういった世界もまたなんとかしたいと思う者なのであります。

 ドライでなければならないと考え、極論に傾いてしまうことは、同じく極論を呼び出して、すべてに対して神々の黄昏が如くに滅びの道へと進めてしまいます。

 そんな人類史へのアンチテーゼがあっても良いかと思って、ドライな時代でなく、ウェットな時代を追い求めようと人が足掻き苦しむ宵闇世界を描いております。

 「平家日章は沈まず」は、史実で徐々に浸透する殲滅戦の流れに抗い、源平の交わる明日を夢見て描いてみました。
 結果的に、自己の精神的な弱さから、ドライな倫理観を持ち込み滅びた義経には、悪役を担っていただきました。されど、結果的に義経は滅びたりモンゴルに行ったりすることなく、奥州藤原秀衡と兄頼朝による助命嘆願と密約によって、虜囚となって、上州高崎にて隠居させられることとなります。ちなみに範頼は、源氏一門衆筆頭として、生き残ります。
 敵を追い込まず、滅ぼさず、多くを求めず、損切りに妥協する世界、諸子百家は乱立し滅びず。そんな世界を描きたいですねぇ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

戦国異聞序章 鎌倉幕府の支配体制確立と崩壊

Ittoh
歴史・時代
戦国異聞  鎌倉時代は、非常に面白い時代です。複数の権威権力が、既存勢力として複数存在し、錯綜した政治体制を築いていました。  その鎌倉時代が源平合戦異聞によって、源氏三代、頼朝、頼家、実朝で終焉を迎えるのではなく、源氏を武家の統領とする、支配体制が全国へと浸透展開する時代であったとしたらというif歴史物語です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...